弁慶堀の河太郎(べんけいぼりのかわたろう)は、江戸城の外堀である弁慶堀に住んでいたといわれる河童松浦静山の『甲子夜話』に記述があるもので、名称は妖怪漫画家・水木しげるの著書によるもの[1]

河童が住んでいたという弁慶堀の現在

概要

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その昔のこと。江戸のとある侍に仕える従者が、帰り道に弁慶堀のそばを通っていた。

既に夜も更け、周囲には灯りもなくまったくの闇であった。ふと、堀の中から従者を呼ぶ声が聞こえた。見ると、堀の中で小さな子供が手招きをしていた。

従者は、さては子供が水に落ちたかと思い、助けるために手を差し伸べた。しかしその子供は、まるで岩か何かのようにまったく動かず、それどころか従者の方がどんどん堀の中へ引き込まれてゆく。従者は必死の思いで手を振りほどき、家へ逃げ帰った。

家に帰りついた従者を家人たちが迎えると、従者は放心状態の上、全身がずぶ濡れでひどい悪臭が漂っていた。家人たちは水をかけて洗ってやったが、臭いはどうしてもとれなかった。

翌日になると従者は正気に戻ったが、異様な疲労感に満ちていた。やがて4~5日が過ぎると、疲労感は抜け、全身の悪臭もようやく消え失せた。

一連の出来事を知った人々は、弁慶堀に住む河太郎(河童)の仕業だろうと噂したということである。

脚注

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  1. ^ 水木しげる『図説 日本妖怪大全』講談社〈講談社+α文庫〉、1994年、424頁。ISBN 978-4-06-256049-8 

参考文献

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