右手系
右手系(みぎてけい、英: right-handed system)または正系(せいけい、positive-oriented system)は、線型代数学における座標系で、右手の法則(right-hand rule)に従うものを指し、左手系と区別される。多くの分野では右手系が標準とされるが、測量の分野では左手系が標準である。
右手系・左手系という性質は、直交座標系とは限らない座標系に対しても考えられる。より抽象的には、順序付けられた基底に対して定義される。また、3次元に限らず、2次元以上の任意の次元のユークリッド空間に対しても定義される。
定義
編集n ≥ 2 とする。n 次元ユークリッド空間 Rn において、j 番目の座標が 1 でその他が 0 であるベクトルを、ej と表すこととする。<e1, …, en> は、Rn の標準的な基底である。任意に2通りの基底 A := <a1, …, an> と B := <b1, …, bn> を取ったとき、その間の変換行列は正則行列となる。その行列式が正であるときに A と B は同値であるとして同値関係を定義すると、基底全体の集合はちょうど2つの同値類に類別される。標準的な基底と同値である基底は右手系であるといい、同値でない基底は左手系であるという。
性質
編集一般のベクトル空間
編集V を R 上の n 次元ベクトル空間とする。Rn の場合と同様に、V の基底全体の集合も、2つの同値類に類別される。そのどちらの元を右手系と呼び、どちらの元を左手系と呼ぶべきかは自然には定まらない。同型写像 φ Rn → V をひとつ定めたならば、<φ(e1), …, φ(en)> と同値である基底を右手系と呼ぶことはできる。
測量・測地学における左手系
編集測量、航海術、地理学、測地学などの分野では、左手系の使用が標準的であり、北基準式で、x 軸が北方向(緯度の正方向であり方位角の基準方向)、y 軸が東方向となる[1](→平面直角座標系)。
関連項目
編集脚注
編集- ^ わかりやすい平面直角座標系 各平面直角座標系の区域の備考欄、「2.座標系のX軸は、座標系原点において子午線に一致する軸とし、真北に向う値を正とし、座標系のY軸は、座標系原点において座標系のX軸に直交する軸とし、真東に向う値を正とする。」、地理院ホーム>基本測量>地球の形をはかる>日本の測地系>わかりやすい平面直角座標系、国土地理院
参考文献
編集- 『数学入門辞典』岩波書店、2005年、ISBN 978-4000802093
- 齋藤正彦『線型代数入門』東京大学出版会、1995年、ISBN 978-4130620017