富幕山
富幕山(とんまくやま)は、静岡県浜松市浜名区[注釈 2] と愛知県新城市[注釈 3] とにまたがる弓張山地の標高563.5 mの山[2][3][4]。山域は浜名湖県立自然公園及び奥浜名自然休養林の指定を受けている[5]。
概要
編集三ヶ日地区(旧引佐郡三ケ日町)の最高峰[6]。遠州灘に面した温暖な地にあり、冬でも積雪のほとんどない山である[7]。南西山腹の浜松市浜名区三ヶ日町只木には875年(貞観17年)に開創したと伝えられる幡教寺跡があり、三ヶ日町福長にある大福寺の前身とされている[6]。北西山腹にある『黄柳野ツゲ自生地(つげのツゲじせいち)』が、1944年(昭和19年)3月7日に国の天然記念物の指定を受けた[注釈 4][8][9]。新城市黄柳野字新谷甚古山の標高200-300 mにかけての40 haの地域に、ウバメガシ、サカキなどの暖地性植物とともにツゲが自生している[9]。東側の中腹の浜松市浜名区引佐町奥山堂の上には、観光植物園の『花の奥山高原』がある[10]。山頂には一等三角点(標高563.49、点名「富巻山」)[1]、休憩所、日時計が設置されている[3]。芝生の山頂公園となっていて、浜松市の街並みや浜名湖、遠州灘を見渡すことができる[7][11]。山頂には無線中継所があり、遠くから見てこの山の目印となっている[3]。山上ではササユリ、ハルリンドウ[11]、マツムシソウなどの野草が見られる[7]。南側の下部の山域は三ケ日みかんなどのミカン畑として利用されている[12]。静岡百山研究会により、「静岡の百山」のひとつに選定されている[13]。
登山
編集日帰り登山やハイキングの対象となる山[14]。静岡県側には、奥浜名自然歩道として3コースが整備されている[3]。代表的な奥山バス停から富幕山、風越峠、尉ヶ峰を経て浜名湖佐久米駅に至る縦走コースは、静岡県版「山のグレーディング」検討会により、無雪期・天候良好時の技術的難易度が「ランクA/(A-E)」(低い-中程度)、体力度が「3/1-10」(低程度、日帰りが可能)とされている[14]。主な登頂コースを以下に示す[7]。
- 細江コース(奥浜名自然歩道): 国民宿舎奥浜名湖 - 二三月峠 - 尉ヶ峰 - 風越峠 - 富幕山
- 奥山コース(奥浜名自然歩道): 奥山バス停 - 奥山高原 - 展望台 - 富幕山
- 只木コース(奥浜名自然歩道): 只木バス停 - 鳳来山幡教寺跡 - 富幕山
- 陣座峠からのコース: 陣座峠 - 富幕山
- 瓶割峠からのコース: 瓶割峠 - 扇山 - 扇山林道分岐 - 富幕山[11]
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富幕山の山頂の休憩所と展望台
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奥浜名自然歩道、只木コースと細江コースとの分岐点
地理
編集静岡県と愛知県境の弓張山地上にあり[4]、浜名湖の北岸の北7 kmに位置する[2]。
周辺の山
編集山頂の西2 kmにあるピークは扇山(標高478.30 m、四等三角点、点名「瓶割峠」[1])と呼ばれている[11]。周辺の主要な山を下表に示す[2]。
山容 | 山名 | 標高(m) [注釈 5][1][2] |
三角点等級 基準点名[1] |
富幕山からの 方角と距離(km) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
三岳山 | 467.21 | 二等 「三岳村」 |
東 9.5 | 三岳城跡 | |
富幕山 | 563.49 | 一等 「富巻山」 |
0 | ||
尉ヶ峰 | 433 | 三等 「嬢ケ峠」(424.24) |
南南東 3.6 | ||
金山 | 423.59 | 三等 「福長村」 |
西 3.7 |
源流の河川
編集周辺の峠
編集- 陣座峠 - 標高約290 m。山頂から北東に延びる県境尾根上にある浅間山(標高519 m)との鞍部。山頂の北北東1.4 kmに位置し、愛知県道392号・静岡県道303号新城引佐線が通る。
- 風越峠 - 標高261 m。山頂から南側に延びる尾根上にある尉ケ峰との鞍部。山頂の南2.0 kmに位置し、静岡県道68号浜北三ケ日線と奥浜名自然歩道が通る。
- 瓶割峠 - 標高235 m。山頂から東側に延びる県境尾根上にある金山との鞍部。山頂の西3.0 kmに位置し、愛知県道445号・静岡県道308号鳳来三ヶ日線が通る。
交通・アクセス
編集南山麓に静岡県道68号浜北三ケ日線、北山麓に愛知県道392号・静岡県道303号新城引佐線、西山麓に愛知県道445号・静岡県道308号鳳来三ヶ日線が通る[2]。山域の南部を新東名高速道路引佐連絡路の富幕山トンネルが通り、山域の東部を奥山トンネルが貫通している[2]。山域の多くは植林地として利用されていて、瓶割峠から扇山の南域に扇山林道[11]、陣座峠から東山腹に富幕林道などの林道が敷設されている[2]。林道が山頂部にある電波通信施設へ通じる[2]。
富幕山の風景
編集-
南側の尉ヶ峰方面から望む富幕山
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南西側の富士見岩から望む富幕山
富幕山からの眺望
編集奥山コースの展望台や細江コースの風越峠へ下る稜線上などからは富士山を望むことができる[12]。2018年に山頂の休憩所の屋上に新たに展望台が設置された。 ウィキメディア・コモンズには、富幕山から眺望に関するカテゴリがあります。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c d e “基準点成果等閲覧サービス”. 国土地理院. 2018年1月24日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l “地理院地図(電子国土Web)・「富幕山」”. 国土地理院. 2018年1月24日閲覧。
- ^ a b c d 日本山岳会 (2005)、1095頁
- ^ a b c 徳久 (1992)、375頁
- ^ “浜名湖県立自然公園の区域”. 静岡県. 2018年2月13日閲覧。
- ^ a b “ふじのくに文化資源データベース「幡教寺跡」”. 静岡県文化・観光部文化政策課. 2018年2月12日閲覧。
- ^ a b c d あつた勤労者山岳会 (1999)、206-207頁
- ^ “黄柳野ツゲ自生地”. 文化遺産オンライン. 2018年2月12日閲覧。
- ^ a b “黄柳野ツゲ自生地”. 新城市. 2018年2月12日閲覧。
- ^ “花の奥山高原”. 奥山高原. 2018年2月12日閲覧。
- ^ a b c d e 日本山岳会東海支部 (2010)、80-81頁
- ^ a b 与呉 (2010)、152-153頁
- ^ 静岡百山研究会 (1991)
- ^ a b 静岡県版「山のグレーディング」検討会 (2015年5月15日). “静岡県 山のグレーディング~無雪期・天候良好の「登山ルート別 難易度評価」~” (PDF). 静岡県. pp. 1. 2018年2月12日閲覧。
- ^ “遠鉄バスの全体路線図” (JPEG). 遠鉄バス. 2018年2月12日閲覧。
参考文献
編集- 徳久球雄(編集) 編『コンサイス日本山名辞典』(修訂版)三省堂、1992年10月。ISBN 4-385-15403-1。
- あつた勤労者山岳会(編) 編『こんなに楽しい愛知の130山』風媒社、1999年10月8日。ISBN 4833100770。
- 静岡百山研究会 編『静岡の百山』明文出版社、1991年11月。ISBN 4943976174。
- 日本山岳会 編『新日本山岳誌』ナカニシヤ出版、2005年11月。ISBN 4-779-50000-1。
- 日本山岳会東海支部『改訂版 愛知県の山』山と溪谷社〈新・分県登山ガイド 改訂版〉、2010年2月22日。ISBN 978-4635023726。
- 与呉日出夫『改訂新版 名古屋周辺の山』山と溪谷社〈週末登山コースの百科事典〉、2010年7月。ISBN 9784635180177。