建築音響工学(けんちくおんきょうこうがく、: Architectural acoustics)とは、音響工学のうち、建築に主眼を置いたもの。建築工学の一分野でもある。建築物の雑音騒音対策などを主とする。

概要

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建築音響工学が体系づけられたのは、古典的に建築音響について考えられたものを除けば、20世紀初頭からである[1]

建築音響工学は、建物内、および建物外の間での、音の伝播について取り扱う。具体的には、雑音・振動を抑える構造材・壁・床・天井の材質の選択方法や、内装に反射板や吸音板・サウンドトラップなどを用い、音場(音の響き方など)の制御を行うことが含まれる。

なお、電気音響工学の手法も、音場の電気的制御などに用いられることがある。

原理

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防音技術には遮音・吸音の2種類があり、その技術はまったく異なるものである。

吸音

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吸音とは、音を反射しないようにする技術である。必ずしも、吸音する材料で音を外部に通さなくするものではない。むしろ、穴の開いた素材が用いられることもある[2]ため、外部に音を通してしまうことも多い。

遮音

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遮音とは、音を通しにくい物質でさえぎる技術である。基本的には、壁の質量を増やすことで遮音効果を上げるが、それには限界がある。そこで、壁・床・天井を二重にすることで大きな効果をもたらすようにしている。また、浮き床構造にすることで、振動を他に伝えにくくすることも行われる。なお、少しでも音を通しやすいところがあると、遮音効果は格段に低下する[3]

範囲

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現在、建築音響工学は様々な分野で応用されている。

舞台音響

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コンサートホールや劇場、映画館などの設計にも応用されている。

その他

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工事現場や、高速道路などには騒音を遮音するために、遮音壁などの建築物が設置される。

また、逆に外部からの音を遮音する為に、スタジオから一般的な建物まで、防音効果の高い壁が用いられる。

脚注

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  1. ^ 前川純一・森本政之・阪上公博『建築・環境音響学』第2版 第3刷,序文
  2. ^ 前川純一・森本政之・阪上公博『建築・環境音響学』第2版 第3刷,共立出版,pp72~73
  3. ^ 木村翔『建築音響と騒音防止計画』第3版,彰国社,p90

参考文献・URL

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  • 前川純一・森本政之・阪上公博『建築・環境音響学』第2版 第3刷,共立出版,2003年(第1刷は2000年発行),ISBN 4-320-07655-9
  • 木村翔『建築音響と騒音防止計画』第3版,彰国社,1999年,ISBN 4-395-17129-X

関連項目

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