大栗博司
大栗 博司(おおぐり ひろし、1962年 - )は、日本の物理学者。専門は素粒子論。学位は、理学博士(東京大学・1989年)。カリフォルニア工科大学フレッド・カブリ冠教授およびウォルター・バーク理論物理学研究所所長。東京大学特別教授。アスペン物理学研究所理事長。
生誕 |
1962年 日本 岐阜県岐阜市 |
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国籍 | 日本 |
研究分野 | 素粒子論 |
研究機関 |
カリフォルニア工科大学 東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構 |
出身校 | 京都大学 |
主な受賞歴 |
紫綬褒章 アメリカ芸術科学アカデミー会員 アイゼンバッド賞 サイモンズ賞 グッゲンハイム・フェロー フンボルト賞 ハンブルク賞 仁科記念賞 講談社科学出版賞 中日文化賞 |
プロジェクト:人物伝 |
概要
編集大栗は、場の量子論や超弦理論の深い数学的構造を発見し、これらの理論を素粒子物理学や宇宙物理学・宇宙論の基礎的問題に応用するための新しい理論的手法を開発している。特にトポロジカルな弦理論を発展させ、これによってブラックホールの量子力学的性質を解明した。また、2次元の共形場の理論、カラビ-ヤウ多様体上のDブレーン、AdS/CFT対応、超対称性を持つ場の量子論の性質と超弦理論との関係などについても基礎的な貢献をしている[1]。
米国の大学で教鞭を執っているが、日本からこれまでに10名程度の大学院生やポストドクトラル・フェローを受け入れ指導をし、その後その全員が大学教員や研究者として活動している。
学歴
編集- 1980年:岐阜県立岐阜高等学校卒業
- 1984年:京都大学理学部卒業
- 1986年:京都大学大学院理学研究科修士課程修了
- 1989年:学位論文「Superconformal Symmetry and Geometry of Ricci-Flat Kahler Manifold(超共形対称性とリッチ平坦なケーラー多様体の幾何学)」で東京大学より理学博士の学位を取得
職歴
編集- 1986年:東京大学物理学教室助手
- 1988年:プリンストン高等研究所研究員
- 1989年:シカゴ大学物理学教室助教授
- 1990年:京都大学数理解析研究所助教授
- 1994年:カリフォルニア大学バークレー校物理学教室教授[2]
- 1996年:ローレンス・バークレイ国立研究所上級研究員を併任。
- 2000年:カリフォルニア工科大学理論物理学教授
- 2007年:カリフォルニア工科大学フレッド・カブリ冠教授[3]
- 2014年:カリフォルニア工科大学ウォルター・バーク理論物理学研究所所長
- 2019年:アスペン物理学センター総裁
- 2018年:東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構機構長兼任[4]
- 2021年:アスペン物理学研究所理事長[5]
- 2024年:東京大学特別教授
ハーバード大学 (1992-1993年、2016年、2024年)で客員研究員。
パリ第6大学 (1994年)、東京大学 (2007年)、プリンストン高等研究所(2015年)で客員教授。
受賞歴
編集- 2008年:アイゼンバッド賞(アメリカ数学会) - 『ブラックホールの量子状態とグロモフ=ウイッテン不変量の関係の発見』に対して[6]。
- 2008年:高木レクチャー(日本数学会唯一の冠レクチャー)[7]。
- 2009年:フンボルト賞(アレクサンダー・フォン・フンボルト財団)。
- 2009年:仁科記念賞(仁科記念財団) - 『トポロジカルな弦理論の研究』に対して[8]
- 2012年:サイモンズ研究賞[9]
- 2012年:アメリカ数学会フェロー
- 2014年:講談社科学出版賞-ブルーバックス『大栗先生の超弦理論入門』に対して
- 2016年:中日文化賞
- 2016年:国際プラネタリウム協会 最優秀教育作品賞 ー 監修をした3次元映像作品『9次元からきた男』に対して
- 2016年:アメリカ芸術科学アカデミー会員
- 2018年:ハンブルク賞
- 2021年:ベンジャミン・リー栄誉教授賞
- 2023年:グッゲンハイム・フェロー
叙位・叙勲
編集学外における役職
編集- アスペン物理学研究所会員 (2003年より)、理事(2011年-2016年)、所長(2016年ー2019年)、理事長(2021年より)。
- カリフォルニア大学サンタバーバラ校諮問委員 (2005年-2008年)。
- ベルギー王国、ソルベー国際研究所諮問委員 (2008年より)。
- インド、タタ研究所、韓国高等研究所の外部評価委員(2018年)
- 学術雑誌編集委員:Nuclear Physics B (1998年ー2013年)、Physical Review D (2006年ー2009年)、Journal of High Energy Physics (1997年より2006年まで)、Advances in Theoretical and Mathematical Physics (1997年より)、Communications in Mathematical Physics(2014年ー2015年)。
著書
編集- 『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』幻冬舎〈幻冬舎新書〉、2012年。ISBN 978-4-344-98261-1。
- 『素粒子論のランドスケープ1』数学書房、2012年。ISBN 978-4-903342-67-2。
- 『強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く』幻冬舎〈幻冬舎新書〉、2013年。ISBN 978-4-344-98293-2。
- 『大栗先生の超弦理論入門 九次元世界にあった究極の理論』講談社〈ブルーバックス〉、2013年。ISBN 978-4-06-257827-1。
- 『数学の言葉で世界を見たら 父から娘に贈る数学』幻冬舎、2015年。ISBN 978-4-344-02740-4。
- 『真理の探究 仏教と宇宙物理学の対話』幻冬舎〈幻冬舎新書〉、2016年。ISBN 978-4-344-98439-4。 佐々木閑と共著
- 『素粒子のランドスケープ2』数学書房、2018年。ISBN 978-4-903342-87-0。
- 『探究する精神 職業としての基礎科学』幻冬舎〈幻冬舎新書〉、2021年。ISBN 978-4-344-98614-5。
関連項目
編集脚注
編集- ^ INSPIREの文献リスト:http://inspirehep.net/search?p=exactauthor%3AH.Ooguri.1&sf=earliestdate
- ^ カリフォルニア大学学内誌の紹介記事:http://www.berkeley.edu/news/berkeleyan/1995/0215/profile.html
- ^ カブリ財団のニュースレターの紹介記事:http://www.kavlifoundation.org/kavli-news/dr-hirosi-ooguri-appointed-fred-kavli-professor-theoretical-physics
- ^ “宇宙研究機構長に大栗氏 「世界の研究者集まる環境を」 | 全国のニュース | 福井新聞ONLINE”. 福井新聞ONLINE. (2018年10月15日). 2018-10-15 2018年10月19日閲覧。
- ^ “大栗博司機構長、アスペン物理学研究所の理事長に選出”. カブリ数物連携宇宙研究機構 (2021年7月19日). 2022年4月2日閲覧。
- ^ アメリカ数学会誌記事:http://www.ams.org/notices/200804/tx080400505p.pdf
- ^ 高木レクチャー:http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~toshi/jjm/JJMJ/JJM_JHP/contents/jjm-takagi_jp.htm
- ^ 仁科記念財団:http://www.nishina-mf.or.jp/prize.html
- ^ 大栗博司Kavli IPMU主任研究員、 サイモンズ研究賞の初代受賞者に選ばれる
- ^ “大栗博司 Kavli IPMU 機構長が紫綬褒章を受章”. 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (2019-11-02-). 2019年11月2日閲覧。
- ^ 秋の褒章に754人25団体産経ニュース2019年11月2日(2019年11月2日閲覧)
- ^ 『官報』号外第151号、2019年11月3日
外部リンク
編集- 大栗博司ホームページ
- 大栗博司のブログ
- 大栗博司 (@PlanckScale) - X(旧Twitter)
- カリフォルニア工科大学
- カブリ数物連携宇宙研究機構
- カブリ財団ニュースレター