大人 (アダルト)

東京事変のアルバム

大人(アダルト)』(英題:ADULT)は、2006年1月25日東芝EMI(当時)より発売された日本バンド東京事変の2枚目のスタジオ・アルバム

『大人(アダルト)』
東京事変スタジオ・アルバム
リリース
録音 2005年
ジャンル J-POPロックジャズソウルファンクボサノヴァラウンジ歌謡曲[1][2]
時間
レーベル 東芝EMIVirgin Music
プロデュース
専門評論家によるレビュー
Allmusic 星4 / 5 link
チャート最高順位
  • 週間1位オリコン
  • 2006年度年間44位(オリコン)
ゴールドディスク
  • プラチナ(日本レコード協会
  • 東京事変 アルバム 年表
    教育
    (2004年)
    大人
    (アダルト)

    (2006年)
    娯楽
    (バラエティ)

    (2007年)
    『大人(アダルト)』収録のシングル
    1. 修羅場
      リリース: 2005年11月2日
    テンプレートを表示

    初回盤のHOMME仕様(CD+DVD 品番:TOCT-25884)と、通常盤のFEMME仕様(CDのみ 品番:TOCT-25885)の2形態での発売[3]。HOMME仕様はデジトレー付ワンピースボックスとなっており、ジャケット写真香水の瓶もHOMME仕様とFEMME仕様の2種それぞれで異なる。

    2021年09月29日には Vinyl (2枚組 / UPJH-20018) が生産限定盤で発売される。

    概要

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    本作は1枚目のアルバム『教育』からおよそ1年2ヶ月ぶりの発売となる通算2作目のオリジナル・アルバムで、シングルとアルバムを通じてバンドとしては初のオリコンチャート1位を獲得している[4]。先行シングルの表題曲「修羅場」のアルバムバージョンを含む全11曲を収録[3]

    新メンバーに伊澤一葉浮雲の2人を迎えた、第二期の体制になって最初のアルバム。第一期でやっていたことはバンドメンバーを固定しただけでソロのときとあまり変わらないスタイルだったため、椎名林檎は「『教育』はプリ盤で、第二期の5人になって作った『大人』が事変のファーストアルバム」と語っている[5]

    前作『教育』のコンセプト教育番組であったが、今作は「大人」、つまり専門チャンネルのアダルトチャンネルをコンセプトに製作された[注 1][1][6]。しかしコンセプトが“大人(アダルト)”であるということ自体は変わらないものの、メンバーの入れ替えによる新メンバーの特質などの作用であらかじめ考えていたものとは大幅に解釈が異なるものに仕上がったとのこと[6]

    歌詞を手掛けた椎名が「女性が生活していていろいろな弊害があるなか、いかにポジティヴに進むかという様子を綴りたかった」と語っているように、特別なシチュエーションではなく日常生活の中での女性の姿が綴られている[7]。前半は享楽的な方向へと進みがちなまだ子供のいない一人で生きる女性の、後半は子供を持った女性の心理を描いているが、子供を持っていても一人だけの自分に戻ることもあるので、繰り返して聴いてもらえたらという願いを込めたと語っている[8]

    サウンドについては、ロックジャズソウルファンクボサノヴァ歌謡曲という椎名のルーツ音楽を明らかにしながらもそれらを2006年仕様にアップデートした、前作以上に緻密に編み上げられたバンド・アンサンブルとなっている[1]

    制作の背景

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    制作期間は椎名の自宅スタジオでの伊澤とのプリプロダクションに2か月、リハーサルも含むレコーディングに2カ月の計4か月[8][9]。以前は3日間スタジオを借りたらその日に3曲ずつ録ってあとはエンジニア井上雨迩に委ねるというやり方を取っていたが、今回は何度も立ち返って曲を再考したので時間がかかってしまった[6]。しかし、まず曲があってアレンジする期間があってという具合に、レコーディングの工程はしっかりしていた[10]

    レコーディングに入る2か月前の5月から伊澤が1人だけ先にスタジオに入り、あらかじめ曲のアレンジを組み立てていた[9][10]。曲の解析を行ってアレンジし、メンバーの演奏にはドラムのパターンやベースのフレーズひとつひとつまで全員分指定した[注 2] デモを、全曲に対して何パターンも作った[11][12]

    7月のリハーサルからは椎名刄田も参加し、音合わせとアレンジを開始。音合わせは伊澤に自分のパートと同時にベースラインも弾いてもらいながらその3人で行い、アレンジは伊澤と椎名の2人で詰めていった[9][10]。もし時間があれば5人でスタジオに入って作っていってもよかったが、亀田は多忙でほとんど参加できず[注 3]、浮雲にいたっては加入が決まったのはレコーディングのわずか数日前だったため、本作では椎名が作ったデモやそれに駄目出しをして伊澤が自分の機材で一から打ち込み直したもの[注 4] に歌を乗せて曲を仕上げていった[9]

    浮雲がバンドに参加した時にはすでに収録曲もリズムのパターンも決まっていたため、レコーディングでは、椎名曰く「そこに上もの[注 5] をのせるというスタジオ・ミュージシャンのような仕事をしてくれた」という[10]。また伊澤は初めてメンバー全員が揃う日の前日に腱鞘炎が悪化したためレコーディングに参加出来ず、1人だけ1か月遅れで録音した[10]。そのときにはすでに他のメンバーは全て録り終わったあとだったので曲にどうアプローチをすればいいかかなり悩まされたが、おかげで緻密で濃密な詰まったアレンジになったと語っている[10][13]

    収録内容

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    1. 秘密(A Secret)
      • ライブツアー「東京事変 live tour 2005“dynamite!”」で新曲としてすでに披露されていた曲。その時よりキーが半音下げられ、ダイナミックなバンド・サウンドから一転してピアノスウィングする洗練されたアレンジとなっている[1]。編曲は伊澤が単独で行っている。
      • 教育』製作時点でメンバーの間では次のアルバムの1曲目は本楽曲にしようとあらかじめ決めていたという。
      • 別バージョンの「秘密 for DJ」が配信限定リリースされた[注 6]。このバージョンでは浮雲のギターソロ前に彼がラップ詞も担当した自身のギターについてのラップが挿入されている。
      • ミュージック・ビデオが製作され、DVDADULT VIDEO』に収録されている。
    2. 喧嘩上等(Active Fighting)
      • ミュージック・ビデオが製作され、DVD『ADULT VIDEO』に収録されている。
    3. 化粧直し(Powder up my mind)
    4. スーパースター(Super Star)
      • ライブツアー「東京事変 live tour 2005“dynamite!”」で新曲として披露された曲で、椎名は野球選手イチローをイメージして作詞したという[注 7]
    5. 修羅場 adult ver.(The Rat's-nest)
    6. 雪国(Niigata)
    7. 歌舞伎(The Kabuki)
      • メンバー紹介の曲で、冒頭は各メンバーの担当楽器の見せ場となっている。
      • ミュージック・ビデオが製作され、DVD『ADULT VIDEO』に収録されている。
    8. ブラックアウト(Black Out)
      • この楽曲はその後、椎名のソロ公演でも何度か披露された。
    9. 黄昏泣き(Don't cry my child)
      • 別バージョンの「黄昏泣き for mother」が配信限定リリースされた[注 6]
      • ミュージック・ビデオが製作され、DVD『ADULT VIDEO』に収録されている。
    10. 透明人間(Invisible Man)
      • ライブツアー「東京事変 live tour 2005“dynamite!”」で新曲として披露された曲。作曲者の亀田は自分の息子をイメージして作詞担当の椎名に渡すデモテープに彼の名前のイニシャルを書いておいたのでそれだけで察して歌詞を書いてくれたと思っていたが、椎名の方は単にストック曲の通し番号か何かだと思っていた[14]
      • 2012年2月29日に日本武道館で行われた解散ライブにおける最終演奏曲目である[15]
      • 2018年3月よりライオン『NONIO』CMソングとして使用されている。
    11. 手紙(A Mail)
      • 伊澤があっぱ結成前に組んでいたバンド「NAM」の楽曲「umareku」に椎名が歌詞を付け、リメイク・セルフカバーした曲。編曲は椎名が単独で行っており、本作では唯一ストリングスが参加している。
      • ある時期まで、椎名はこの曲ではなく「落日」(シングル「修羅場」のカップリング曲)でアルバムを締めくくるつもりだった[9]。しかし伊澤との作業が充実し、彼にこの曲をもらったことで「もっと笑っている状態で終われるはずだしそちらの方がいい」と思うようになり、アルバムのラストは彼の曲にして「落日」はシングルに収録することにした[9]

    ※初回盤HOMME仕様のみ

    1. 秘密 - 「東京事変 live tour 2005“dynamite!”」2月9日名古屋センチュリーホール公演より
      • ライブ映像集『Dynamite out』ではカットされ未収録となっていたもの。
      • 演奏は東京事変第一期のメンバーで、バンドの新旧の違いを比較するために収録された。

    楽曲クレジット

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    全作詞: 椎名林檎。
    #タイトル作詞作曲編曲時間
    1.「秘密」椎名林檎椎名林檎伊澤一葉
    2.「喧嘩上等」椎名林檎椎名林檎東京事変
    3.「化粧直し」椎名林檎椎名林檎東京事変
    4.「スーパースター」椎名林檎亀田誠治東京事変
    5.「修羅場 adult ver.」椎名林檎椎名林檎東京事変
    6.「雪国」椎名林檎椎名林檎東京事変
    7.「歌舞伎」椎名林檎椎名林檎東京事変
    8.「ブラックアウト」椎名林檎椎名林檎東京事変
    9.「黄昏泣き」椎名林檎椎名林檎東京事変
    10.「透明人間」椎名林檎亀田誠治東京事変
    11.「手紙」椎名林檎伊澤一葉椎名林檎
    合計時間:

    演奏

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    東京事変
    その他

    脚注

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    注釈

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    1. ^ 先行シングル修羅場』のアートワークなどでも示唆されており、アルバムタイトルにも「アダルト」とルビが振られている。
    2. ^ 絶対そうしなければ駄目だというわけではないが、伊澤としてはまずはその設計図通りやってみたいという事だった。
    3. ^ 亀田不在の時はEMIの担当ディレクター山口一樹が代わりを務めることもあった[5]
    4. ^ 曲によっては6パターンほどのアレンジがあった。
    5. ^ ドラムやベースやリズムギターなどにのせる歌やリードギターなどのこと。
    6. ^ a b アナログ盤アルバム「ADULT VIDEO ORIGINAL SOUND TRACK」やCDボックスセット『Hard Disk』に収録された。
    7. ^ テレビ番組の対談内で感想を聞かれたイチローは「嬉しかったですね。朝からジーンときてしまいました」と答えている。イチローは万人のスーパースターになることはできないという考えを持っているためこの曲の印象が初めは良くなかったと対談内で明かしたが、歌詞の内容に触れ「ひとりだけのスーパースター」にはなりたいと望んでいるので、それに気付いてからは印象が変わったという旨の発言をした。

    出典

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    1. ^ a b c d 東京事変『第二期東京事変、遂にアルバムをリリース!』”. ORICON STYLE (2006年1月25日). 2017年12月30日閲覧。
    2. ^ 娯楽(バラエティ) アルバム解説”. レコチョク. 2018年6月20日閲覧。
    3. ^ a b 東京事変、2ndアルバム決定! タイトルは……”. BARKS (2005年11月2日). 2017年12月30日閲覧。
    4. ^ オリコン (2006年1月30日). “東京事変、シングル、アルバム通じて初の№1獲得!”. 2007年6月1日閲覧。
    5. ^ a b 「特集:東京事変ビューティフル・ディスカバリー(前編) 椎名林檎 瞬間を生きるために」『SWITCH』第29巻第6号、スイッチ・パブリッシング、2011年6月、28-34頁、2018年6月14日閲覧 
    6. ^ a b c 東京事変(インタビュアー:MTV Japan)「『椎名林檎 独占インタビュー』PART1」『MTVジャパン』。オリジナルの2006年2月18日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20060218211844/http://www.mtvjapan.com:80/music/interview_detail.html/data_id=91/page_no=12018年6月22日閲覧 
    7. ^ 東京事変、アルバムは「女性のポジティヴに進む様子」を表現”. BARKS (2006年1月26日). 2017年12月30日閲覧。
    8. ^ a b 東京事変(インタビュアー:MTV Japan)「『椎名林檎 独占インタビュー』PART2」『MTVジャパン』。オリジナルの2006年3月26日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20060326060254/http://www.mtvjapan.com/music/interview_detail.html/data_id=91/curr_page=22016年8月7日閲覧 
    9. ^ a b c d e f 東京事変(インタビュー)「オフィシャルインタビュー 1/2」『東芝EMI』。オリジナルの2005年11月25日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20051125205041/http://www.toshiba-emi.co.jp/tokyojihen/pop/index2_j.htm2016年8月1日閲覧 
    10. ^ a b c d e f 東京事変(インタビュアー:小野田雄)「ニューシングル「OSCA」インタビュー」『EMIミュージック・ジャパン』、2007年7月10日。オリジナルの2014年6月18日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20140618144946/http://www.tokyojihen.com/vmc/artist/domestic/tokyojihen/interview.php2018年6月20日閲覧 
    11. ^ 東京事変(インタビュアー:小野田雄)「2007.9.26 3rd ALBUM『娯楽(バラエティ)』オフィシャル・インタビュー」『EMIミュージック・ジャパン』、2007年9月26日。オリジナルの2014年6月18日時点におけるアーカイブhttps://archive.li/BnPkO2018年6月22日閲覧 
    12. ^ 「東京事変」『ロッキング・オン・ジャパン』第24巻第3号、ロッキング・オン、2010年3月、45-65頁、2018年6月22日閲覧 
    13. ^ 東京事変(インタビュアー:小野田雄)「2007.8.22New Single『キラーチューン』スペシャル・インタビュー」『EMIミュージック・ジャパン』、2007年9月10日http://www.tokyojihen.com/vmc/artist/domestic/tokyojihen/interview_070821.php2016年8月7日閲覧 
    14. ^ 東京事変(インタビュアー:小野田雄)「「閃光少女」インタビュー」『EMIミュージック・ジャパンhttp://www.tokyojihen.com/vmc/artist/domestic/tokyojihen/interview_071121.php2016年8月7日閲覧 
    15. ^ 「本当にありがとう」東京事変、武道館で有終の美飾り解散”. 音楽ナタリー (2012年3月5日). 2013年9月29日閲覧。