塩化タングステン(VI)
塩化タングステン(VI)(Tungsten hexachloride)は、タングステンと塩素からなる化合物で、化学式はWCl6である。濃紫青色で、標準状態では揮発性固体として存在する。タングステンの化合物の合成の際の重要な出発物質である[1]。電荷を持たない六塩化物のその他の例には、塩化レニウム(VI)や塩化モリブデン(VI)がある。非常に揮発性の高いフッ化タングステン(VI)も知られている。
塩化タングステン(VI) | |
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Tungsten hexachloride | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 13283-01-7 |
PubChem | 83301 |
UNII | L32HZV95ZE |
EC番号 | 236-293-9 |
RTECS番号 | YO7710000 |
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特性 | |
化学式 | WCl6 |
モル質量 | 396.61 g/mol |
外観 | 濃青色結晶、湿気に敏感 |
密度 | 3.52 g/cm3 |
融点 |
275 °C, 548 K, 527 °F |
沸点 |
346.7 °C, 620 K, 656 °F |
水への溶解度 | 加水分解 |
塩化炭素への溶解度 | 可溶 |
磁化率 | −71.0・10-6 cm3/mol |
構造 | |
結晶構造 | α:菱面体, β: 六面体 |
配位構造 | 八面体形 |
双極子モーメント | 0 D |
危険性 | |
主な危険性 | 酸化剤; 加水分解されて塩化水素を発生 |
関連する物質 | |
その他の陰イオン | フッ化タングステン(VI) 臭化タングステン(VI) |
その他の陽イオン | 塩化モリブデン(V) 塩化クロム |
関連物質 | 塩化タングステン(IV) 塩化タングステン(V) |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
d0イオンとして、塩化タングステン(VI)は反磁性誘導体を形成する。六塩化物は八面体形分子構造で等価なW-Ci間の距離は、2.24-2.26 Aである[2]。
合成
編集金属タングステンを、密閉チューブ内で600℃に加熱し、塩素化することで得られる[3]。
- W + 3 Cl2 → WCl6
性質と反応
編集室温では、青黒色の固体である。より低温では、ワインレッド色になる。赤色の相は、その蒸気を急速濃縮することで得られ、徐々に加熱することで青黒色の相に戻る。加水分解されやすく、湿った空気とさえ反応して、橙色の酸塩化物である塩化酸化タングステン(IV)WOCl4や二塩化二酸化タングステンWO2Cl2を与える。二硫化炭素、四塩化炭素、塩化ホスホリルに可溶である[3]。
トリメチルアルミニウムによるメチル化で、ヘキサメチルタングステンとなる。
- WCl6 +3 Al2(CH3)6 → W(CH3)6 + 3 Al2(CH3)4Cl2
ブチルリチウムで処理することで、エポキシドの脱酸素に必要な試薬を得られる[4]。
塩化物リガンドは、Br-、NCS-、RO-(Rはアルキルまたはアリル)等の多くの陰イオンリガンドに置き換えることができる。
還元すると、段階的に塩化タングステン(V)、塩化タングステン(IV)を与える。
安全性
編集出典
編集- ^ J. W. Herndon; M. E. Jung (2007). "Tungsten(VI) Chloride". Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis. Wiley. doi:10.1002/9780470842898.rt430.pub2. ISBN 978-0471936237。.
- ^ J. C. Taylor, P. W. Wilson (1974). “The Structure of β-Tungsten Hexachloride by Powder Neutron and X-ray Diffraction”. Acta Crystallographica B30 (5): 1216-1220. doi:10.1107/S0567740874004572..
- ^ a b M. H. Lietzke; M. L. Holt (1950). Tungsten(VI) Chloride (Tungsten Hexachloride). Inorganic Syntheses. 3. p. 163. doi:10.1002/9780470132340.ch4
- ^ M. A. Umbreit, K. B. Sharpless (1990). "Deoxygenation of Epoxides with Lower Valent Tungsten Halides: trans-Cyclododecene". Organic Syntheses (英語).; Collective Volume, vol. 7, p. 121
- ^ "LoginWiz"11 August 2019 Tungsten