四大奇書

中国で元代から明代にかけ、俗語体で書かれた4つの長編小説の総称

四大奇書(しだいきしょ)とは、中国代から代にかけ、俗語体で書かれた4つの長編小説の総称。「奇書」とは「世に稀なほど卓越した書物」という意味である。「四大奇書」は代前期の書店が販売促進用につけたキャッチフレーズであり[1]、その名は清中期の乾隆年間(1736年 - 1795年)に芥子園刊本において確立した[2]

「四大奇書」に挙げられているのは『三国志演義』、『水滸伝』、『西遊記』、『金瓶梅』の4作品である[3]。しかし、本場中国では清中期になってから『金瓶梅』の代わりに『紅楼夢』を加えたものを「四大名著(中国語版)」と呼ぶようになり[注 1]、「四大奇書」よりこちらの方が一般的である[注 2]

日本の推理小説における「四大奇書」

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日本では、推理小説における小栗虫太郎著『黒死館殺人事件』、夢野久作著『ドグラ・マグラ』、塔晶夫(中井英夫)著『虚無への供物』の3作品を「三大奇書」と呼んでいたが、これに竹本健治著『匣の中の失楽』(三大奇書の項にて言及されているように異論もあるようであるが)を加えたもののことを指す[注 3]

台湾においては、『脳髄地獄』(ドグラ・マグラ)、『黑死館殺人事件』(黒死館殺人事件)、『獻給虛無的供物』(虚無への供物)、『匣中的失樂』(匣の中の失楽)が「日本推理四大奇書」として刊行されている[要出典]

脚注

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注釈

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  1. ^ 中国文学者井波律子は、講演体で設立順に論じている[4][5]
  2. ^ なお、「四大名著」の記載によれば「四大名著」に『金瓶梅』を加えて「五大名著五大奇書)」、さらに『儒林外史』を加えて「六大名著六大奇書)」と呼ぶ場合があるが、出典は不明である。
  3. ^ ここで注意を要するのは、日本における三大奇書、四大奇書は誰が提唱したかが不明であること。さらに、これから先この奇書と呼ばれる作品が今の四つより増えて、五大奇書、六大奇書に拡張されていかないとは言い切れない。

出典

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  1. ^ 小松謙『「四大奇書」の研究』汲古書院(2010年、ISBN 9784762928857)序。
  2. ^ 浦安迪著・沈亨寿訳『明代小説四大奇書』中国和平出版社(1993年、ISBN 7800372618)第一章「文人小説的歴史背景」。
  3. ^ 川越泰博編『中国名数辞典』国書刊行会、1980年、p. 51。
  4. ^ 井波律子『中国の五大小説(上)三国志演義・西遊記』岩波書店岩波新書〉(2008年、ISBN 9784004311270
  5. ^ 井波律子『中国の五大小説(下)水滸伝・金瓶梅・紅楼夢』岩波書店〈岩波新書〉(2009年、ISBN 9784004311287

関連項目

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