今治タオル工業組合
今治タオル工業組合(いまばりタオルこうぎょうくみあい)は、愛媛県内のタオルメーカーによる業界団体である。主に愛媛県今治市・西条市・松山市のタオルメーカーが加盟している。
本部があるテクスポート今治 | |
種類 | 事業協同組合 |
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本社所在地 |
日本 〒794-0033 愛媛県今治市東門町5丁目14-3 |
設立 | 1952年11月1日 |
法人番号 | 4500005004933 |
事業内容 |
・タオル製造業に関する指導及び教育 ・タオル製造業に関する情報又は資料の収集及び提供 ・タオル製造業に関する調査研究 ・組合員のために行う組合ブランド推進事業 ・共同購買事業、共同金融事業他 |
代表者 | 代表理事 井上裕基(井上タオル株式会社社長) |
資本金 | 120,466千円 |
売上高 | 年間総収入:751百万円(平成27年度) |
従業員数 | 9名(員外理事1人含む) |
外部リンク | http://www.itia.or.jp/index.html |
沿革
編集- 1952年11月 - 中四国タオル調整組合を設立。
- 1958年6月 - 「四国タオル工業組合」に改組。
- 1964年8月 - 出資組合に移行。
- 1968年 - 愛媛県今治市旭町にタオル会館を建設し、事務所移転[1]。
- 1990年 - 株式会社今治繊維リソースセンターを設立。
- 1991年3月 - テクスポート今治が完成し、事務所移転。
- 2001年5月 - 今治商店街にアンテナショップ「タオルショップSTIA」オープン[2](2004年3月営業終了)。
- 2003年4月 - 今治市と姉妹都市提携を結ぶ群馬県太田市にタオルショップ「タオルファクトリーいまばり」オープン(2006年8月閉店)[3]。
- 2006年 - 「今治タオルプロジェクト」開始。
- 2011年5月 - 今治タオル今治国際ホテル店オープン。
- 2012年
- 3月 - 今治タオル本店リニューアルオープン。
- 6月 - 今治タオル南青山店オープン。
- 2016年3月 - 今治タオル松山エアポートストア(松山空港内)オープン。
- 2017年1月 - 「今治タオル工業組合」に改組。
- 2022年4月 - タオル業界の製造技術者を育成する今治タオルアカデミー開講[4]。
- 2023年7月 - タオル縫製士を育成するタオル縫製士養成所を開所[5]。
組合員数
編集1976年のピーク時には500社のタオルメーカーが加盟していた。しかし、1990年代から2000年代にかけて安価な中国・ベトナム産タオルの輸入が急増しタオルメーカーの倒産・撤退が相次ぎ、2016年で110社[6]、2019年で104社、2022年4月では95社まで減少している。
主な加盟企業
編集主な取り組み
編集セーフガード発動の申請
編集中国の安価なタオルが輸入する中で、少しでも輸入に歯止めをかけるために輸入によって産地が窮地に追い込まれる事を告知する目的に2000年7月に決起大会を開催し、さらに同じタオル産地である泉州と足並みをそろえて同時デモを決行した[7]。
2001年2月には日本タオル工業組合の要望として、中国とベトナムから輸入されるタオル製品に対するセーフガードの発動を経済産業省に申請したが、セーフガードの発動は4度の決定見送りを経て、2004年4月に調査が打ち切られた[8]。
今治タオルプロジェクト
編集安価な海外製品の流入などにより産地としての存続が危ぶまれる中、2006年より「今治タオルプロジェクト」が進められている。中小企業庁、日本商工会議所、全国商工会連合会の3団体の共同運営による「JAPANブランド育成支援事業」として2006年から3年間(実際には1年延長され、4年間となった)支援を受け、今治タオルブランド構築を通して、地場産業振興を目指すというものであった[9]。2010年以降は自主展開による拡大期としてブランド維持を目指している[9]。クリエイティブ・ディレクターの佐藤可士和が総合プロデューサーを務めている。
組合で基準を設け基準をクリアした製品に対し「今治タオル」のブランドマーク&ロゴを付与している。なお、「今治タオル」は組合の商標登録である。また、2007年より今治商工会議所と共同でタオルに関する知識などを問うタオルソムリエ資格試験の実施や国内外の見本市への出展など様々な取り組みが行われている。
また、タオル製造の人材育成のための取り組みとして、今治タオル工業組合社内技能検定が実施されている[10]。
- プロジェクトの経過
- 2006年6月 - 今治タオルプロジェクトが「JAPANブランド育成支援事業」に採択される。
- 2007年
- 2008年10月 - 第1回タオルマイスター叙任式を実施し、4名を叙任[13]。
- 2009年9月 - フィンランドの見本市「ハビターレ09」に出展。
- 2010年10月 - 今治タオルブランドマニュアルを作成。
- 2011年
- 2012年6月 - 今治タオル南青山店がオープン[14]。
- 2013年11月 - 台湾のスイーツイベントに出展(台湾でのイベント出展は初)[15]。
ブランディングの効果によって1991年から減少し続けていた今治のタオル生産量は2009年の9,381トンを底に増加に転じ、2016年には12,036トンと2009年から約28%増加した[16]。また四国経済産業局および今治タオル工業組合の調査では、今治タオルの認知度はプロジェクト開始前の2004年の36.6%から、2012年には71%へと上昇した[17]。
ベトナム人技能実習生の過酷労働問題への対応
編集2019年6月24日、NHKのドキュメンタリー番組「ノーナレ」にて、今治市のタオル工場におけるベトナム人技能実習生の過酷な労働環境の実態が伝えられた。番組では該当工場で働いていたベトナム人女性が、過度な長時間労働や残業代未払い、劣悪な住環境などの人権侵害を告発した[18]。この放送を受け、twitterでは批判が高まり抗議運動として「#今治タオル不買」のハッシュタグが作成・拡散された[19]。
この事態に今治タオル工業組合が6月26日、ホームページ上に声明を出し[20]、NHKで放送された工場は組合に加盟している企業ではないとしたものの、組合等の下請け企業の工場であったことを認め、社会的・道義的責任を重く受け止めた上で、技能実習生の労働環境の改善と法令遵守等の徹底の強化を図るとした。組合ではその後、コンプライアンス体制の確立と強化を図るための組織として「今治タオルコンプライアンス委員会」を立ち上げた他、コンプライアンスの徹底を確実なものにするため『今治タオルブランド商品認定事業規約』並びに『商標「今治タオル」の使用規程』を改正を行うなどの対策を行っている[21]。
一方で、NHKの番組では問題の工場の具体的な企業名が放送されなかったため、一部映像を根拠にSNSでは問題の企業が今治タオル工業組合に加盟する「森清タオル・オルネット」ではないかとの誤った憶測が拡散され中傷が相次いだ[22]。オルネットは「当社ではない」「技能実習生の雇用はしていない」と否定する声明を出し、問題の工場は2016年から別の企業に賃貸で貸している物件であるが、その企業との事業での関与は一切ないと説明した[23]。また、公的機関の適切な調査があれば協力するとした上で、現在の対応として「賃貸契約者に事実確認をとっておりますが、NHKの放送内容と主張が相違している箇所がある」とも主張し、番組を放送したNHKに対しては「放送内容のいくつかは作り込まれたものであると発覚」したとし、BPOに抗議すると発表した[24]。
脚注
編集- ^ 『愛媛新聞』1994年11月4日朝刊「[PS]四国タオル生産100周年 沿革」
- ^ 『愛媛新聞』2001年5月6日朝刊「タオル情報ここから アンテナショップきょう開店 安さ・品ぞろえ抜群」
- ^ 『愛媛新聞』2006年8月11日朝刊「今治タオル良さ伝え3年 群馬・太田市のアンテナショップ 惜しまれつつ20日閉店」
- ^ 『愛媛新聞』2022年4月16日朝刊「タオル産地担う人材に 今治 組合がアカデミー開講 5人 技術や知識習得へ」
- ^ 『愛媛新聞』2023年7月13日朝刊「タオル縫製士養成新拠点 高度な仕上げ技術伝授」
- ^ タオルデータ - 今治タオル工業組合
- ^ 佐藤可士和・四国タオル工業組合(2014)『今治タオル 奇跡の復活 起死回生のブランド戦略』、朝日新聞出版、103頁
- ^ 佐藤可士和・四国タオル工業組合(2014)『今治タオル 奇跡の復活 起死回生のブランド戦略』、朝日新聞出版、104頁・108頁
- ^ a b 平川すみ子、2005年、「今治タオルに学ぶブランディング戦略と地域再生」、岐阜市立女子短期大学研究紀要第64輯(平成27年3月)
- ^ “社内検定認定制度”. 厚生労働省. 2017年12月21日閲覧。
- ^ 佐藤可士和・四国タオル工業組合(2014)『今治タオル 奇跡の復活 起死回生のブランド戦略』、朝日新聞出版、136頁
- ^ ブランド認定事業・商標 - 今治タオル工業組合、2021年5月2日閲覧。
- ^ 佐藤可士和・四国タオル工業組合(2014)『今治タオル 奇跡の復活 起死回生のブランド戦略』、朝日新聞出版、154頁
- ^ 今治タオル 東京で攻勢 工業組合、初の直営店 - 日本経済新聞(2012年6月15日)、2021年5月2日閲覧。
- ^ 台湾に今治タオル初出展 四国タオル工業組合 - 日本経済新聞(2013年11月7日)、2021年5月2日閲覧。
- ^ 企業数、織機台数、革新織機台数、従業員数、綿糸引渡数量、生産量、輸出・輸入数量の推移(pdf) - 今治タオル工業組合
- ^ 今治タオル産業集積 その8:達人に訊け! - 中日新聞WEB(2017年11月28日)、2021年5月2日閲覧。
- ^ ““Made in Japan”の知られざる真実……NHK『ノーナレ』タオル工場で働く技能実習生が過酷労働を告発!”. 日刊サイゾー (2019年6月25日). 2019年7月1日閲覧。
- ^ Hatachi, Kota (2019年6月26日). “今治タオル組合、NHK「実習生ブラック工場」が下請け企業であることを明らかに「責任を重く受け止め」”. BuzzFeed. 2019年7月1日閲覧。
- ^ “NHK「ノーナレ」報道についてのご報告 | 今治タオル公式総合案内サイト|お知らせ|お問い合わせ” (2019年6月26日). 2019年7月1日閲覧。
- ^ 「今治タオル」のコンプライアンスへの取組みについて(第3報) - 今治タオル工業組合、2021年5月4日閲覧。
- ^ Hatachi, Kota (2019年6月26日). “「ネットで誤情報が拡散」今治タオル企業が法的措置も検討、NHKドキュメンタリーで中傷殺到”. BuzzFeed. 2019年7月1日閲覧。
- ^ “【追記】NHKの今治タオルに関する一部報道について | 株式会社ORUNET(オルネット)” (2019年6月26日). 2019年7月1日閲覧。
- ^ “NHKの今治タオル報道に関するウェブ上での疑惑について | 株式会社ORUNET(オルネット)” (2019年6月29日). 2019年7月1日閲覧。
参考文献
編集- 今治タオルプロジェクト(pdf) - 四国タオル工業組合(2011年5月18日)