唐鳳

中華民国の政治家・プログラマ

唐 鳳(とう ほう、タン・フォン、オードリー・タン、: Audrey Tang1981年民国70年〉4月18日 - )は、中華民国台湾)の政治家(無任所大使[1])、プログラマー。旧名・唐 宗漢(とう そうかん、タン・ツォンハン、オートリジュス・タン、: Autrijus Tang)。

唐 鳳
Audrey Tang
数位発展部より公表された肖像(2016年)
生年月日 (1981-04-18) 1981年4月18日(43歳)
出生地 中華民国の旗 中華民国 台北市
出身校 国民中学中退
所属政党 無所属
サイン

内閣 第2次蘇貞昌内閣
陳建仁内閣
在任期間 2022年8月27日 - 2024年5月20日
総統 蔡英文

内閣 林全内閣
頼清徳内閣
第2次蘇貞昌内閣
在任期間 2016年10月1日 - 2022年8月26日
総統 蔡英文
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唐 鳳
各種表記
繁体字 唐 鳳
簡体字 唐 凤
拼音 Táng Fèng
和名表記: とう ほう
発音転記: タン・フォン
英語名 Audrey Tang
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唐 宗漢
各種表記
繁体字 唐 宗漢
簡体字 唐 宗汉
拼音 Táng Zōnghàn
和名表記: とう そうかん
発音転記: タン・ツォンハン
英語名 Autrijus Tang
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2005年、Perl 6(現Raku)のHaskellによる実装のPugsを開発したことで知られ[注釈 1]、「台湾のコンピューター界における偉大な10人の中の1人」とも言われている[3]

2016年10月に蔡英文政権において35歳で行政院に入閣し無任所閣僚の政務委員(デジタル担当)を務めた[4][注釈 2]後、2022年8月27日に新たに設置された数位発展部の初代部長に就任し、任期満了の2024年5月20日まで務めた。2024年10月7日、頼清徳総統により無任所大使(無給の名誉職)に任命された[1]

経歴

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唐光華・李雅卿中国語版夫妻の子供として生まれる[6]。幼い頃からコンピューターに興味を示し、12歳のときにPerlを学び始めた[7]。2年後の14歳のとき、学校生活に馴染めなかったため中学を中退した[8]。19歳のときに、シリコンバレーでソフトウェア会社を起業した[7]

2005年、外見と自己意識を一致させるために、名前を変更するなどの女性への性別移行を始めた[9]。英語の名前は、男女どちらにも使えてニュートラルという理由で、オードリーに変更した。その後、日本の友人より鳳は日本語で「おおとり」と読み、オードリーの日本語発音と似てると教えてくれたこと、また中国語でも使われている文字であることから、漢字名を鳳に変更した[10]。性別移行を開始した後、唐はブログで「私の脳は私が女性であると認識しているのに、社会的にはそうでないことが要求されるので、私は長年に亘って現実世界を遮断し、ネット上で生活をしてきました」と述べている[9]東森電視のニュースチャンネルは、唐のIQが180以上であると報じた[3]。2019年1月、アメリカの外交専門誌『フォーリン・ポリシー』の2019年のグローバル思想家100人に選出された[5]。唐は独学[11]個人主義的無政府主義[7]の支持者である。

フリーソフトウェアへの貢献

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唐鳳は、HaskellコミュニティーとPerlコミュニティーから、RakuPerl 6)処理系を実装するプロジェクトであるPugsの創始者兼主要開発者として知られている[12]。また、唐はSVK[注釈 3]Request Tracker英語版Slash英語版を含む幾つかのフリーソフトウェアの国際化と地域化に対する貢献や、オープンソースに関連する様々な書籍の繁体字中国語への翻訳も行っている[3][7]

CPAN上において、唐は2001年6月から2006年7月までの間にPerl 5向けのクロスプラットフォームパッケージングデプロイツールであるPerl Archive Toolkit英語版 (PAR) を含む100以上のプロジェクトを開始した[13]。また、唐はCPANのスモークテスト英語版の設定とデジタル署名システムのメンテナーでもある[14]。2005年10月には、オライリーメディアアムステルダムで開催したカンファレンス (European Open Source Convention) でPugsについて講演を行った[15]

政治経歴

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2016年8月、唐鳳は林全内閣の政務委員に任命された。10月1日にデジタル担当の政務委員に就任し、35歳での閣僚就任は台湾史上最年少となった[8]

唐は「デジタル技術とシステムによって政府の問題解決を補佐し、民間と政府のコミュニケーションの促進と強化を行う。自分の役割は特定の団体の利益のために動くことでも、政府のために政策の広報を行うことでもなく、より多くのアイデアと力を結合させる『パイプ』となることだ」と述べ[16][8][17]、政務委員としてこれに取り組み、若年層と高齢層のジェネレーションギャップを埋め[18]パブリック・アクセスのためのフリーソフトウェアを開発し、台湾の新たな共有経済が実際に機能することを示した[6]

また、唐は、中華人民共和国と台湾は地理的には近くても正反対の価値観を持つとし、中国が社会信用システムインターネットを民衆の監視および制御に利用しているのに対し、台湾はインターネットに政府を監督する役割を求める開かれた社会を築いているとして、台湾の民主主義を損なうフェイクニュースを防止する技術開発などに取り組んでいる[19][20]

さらに、理念としては「徹底的な透明性」(radical transparency) と呼ばれるものを挙げており、公開できる、あらゆる情報がインターネット上にあることで、政府の官僚や大臣が何をやっているのか、何を考えているのかを全部知ることができ、人々が「国家の主人」になれるというビジョンを掲げている[4]

2022年8月5日、数位発展部の初代部長(大臣)に任命された[21]。蔡英文政権の任期満了に合わせて退任[22]

日本語書籍

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  • 『自由への手紙オードリー・タン』 クーリエ・ジャポン編集チーム編 講談社 2020年
  • 『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』 プレジデント社 2020年
  • 『天才IT大臣オードリー・タンが初めて明かす問題解決の4ステップと15キーワード』 黄亞琪共著、牧高光里訳 文響社 2021年
  • 『オードリー・タンが語るデジタル民主主義』 大野和基編 NHK出版 2022年
  • 『まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう』 近藤弥生子編 SBクリエイティブ 2022年
  • 『何もない空間が価値を生む』 アイリス・チュウ共著 文藝春秋 2022年
  • 『オードリー・タン Thinking skills 私はこう思考する』 楊倩蓉取材・執筆、藤原由希訳 かんき出版 2024年

脚注

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注釈

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  1. ^ 日本にも講演に来ている[2]
  2. ^ これは、トランスジェンダーの人物が閣僚に任命された世界で最初の事例である[5]
  3. ^ プログラムのコードの大部分が唐によって書かれている。

出典

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  1. ^ a b 林興盟 (2024年10月7日). “戴資穎、唐鳳等任無任所大使 賴總統致送聘書”. 中央通訊社. 2024年10月7日閲覧。
  2. ^ Audrey Tang (2006年3月30日). “Learning Haskell”. YAPC::Asia 2006 Tokyo. 2020年10月21日閲覧。
  3. ^ a b c 江志男 (2006年2月8日). “別叫我「先生」! 電腦怪傑唐宗漢變性 改名唐鳳”. ETtoday. 2008年3月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月14日閲覧。
  4. ^ a b 「大臣だけど、聞きたいことある?」台湾の異色閣僚の「超」情報公開
  5. ^ a b 江今葉; 顧セン (2019年1月24日). “「世界唯一トランスジェンダー閣僚」唐鳳氏、米誌思想家100人に選出/台湾”. 中央通訊社. 2019年9月14日閲覧。
  6. ^ a b Jake Chung (2016年8月28日). “PROFILE: Audrey Tang: 100% made in Taiwan”. Taipei Times. 2019年9月14日閲覧。
  7. ^ a b c d 企業應用 : 專題報導 : 尋找台灣自由軟體力量”. Taiwan.CNET.com. 2006年8月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月14日閲覧。
  8. ^ a b c 戴雅真 (2016年8月27日). “ネットの神童、中学中退、性転換… 異色の経歴誇る唐鳳氏、入閣へ/台湾”. 中央通訊社. 2019年9月14日閲覧。
  9. ^ a b Audrey Tang (2005年12月25日). “Runtime Typecasting.”. 2019年9月14日閲覧。
  10. ^ 台湾の“IQが高すぎるIT担当大臣”にインタビュー:オードリー・タン(唐鳳)が見つめる社会”. ハースト婦人画報社 (2020年6月15日). 2024年3月9日閲覧。
  11. ^ 陳柏年. “平淡中見絢爤”. 台灣大紀元時報. 2004年11月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月14日閲覧。
  12. ^ chromatic (2005年3月5日). “A Plan for Pugs”. Perl.com. 2019年9月14日閲覧。
  13. ^ ☺唐鳳☻ (AUTRIJUS)”. metacpan.org. 2019年9月14日閲覧。
  14. ^ Audrey Tang (2002年4月30日). “Becoming a CPAN Tester with CPANPLUS”. Perl.com. 2019年9月14日閲覧。
  15. ^ Edd Dumbill (2005年9月8日). “Perl Internationalization and Haskell: An Interview with Autrijus Tang”. Perl.com. 2019年9月14日閲覧。
  16. ^ 楊虔豪; 福田恵介 (2016年9月1日). “中卒で性転換者、台湾「異例の新閣僚」の正体”. 東洋経済. 2019年9月14日閲覧。
  17. ^ Cabinet to appoint minister to steer open gov't initiative”. The China Post (2016年8月26日). 2017年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月14日閲覧。
  18. ^ 王景弘 (2016年11月5日). “Generation gap a factor for blue and green camps”. Taipei Times. 2019年9月14日閲覧。
  19. ^ 台北で人権に関する国際会議 「台湾の民主を誇りに思う」=唐政務委員”. 中央通訊社 (2019年9月13日). 2019年9月19日閲覧。
  20. ^ 唐鳳華府行 酸大陸用網路監控大眾”. 聯合新聞網 (2019年4月24日). 2019年9月19日閲覧。
  21. ^ 唐鳳出任數位發展部長 政務次長為闕河鳴李懷仁” (中国語). 中央通訊社. 2022年8月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月18日閲覧。
  22. ^ “台湾 オードリー・タン前デジタル担当相 単独インタビュー「誰ひとり取り残さない」”. テレ朝news. (2024年5月23日). https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/900003343.html 2024年5月24日閲覧。 

関連項目

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外部リンク

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公職
先代
(創設)
  中華民国数位発展部部長
初代:2022 - 2024
次代
黄彦男英語版
  1. ^ 福田恵介 (2020年7月24日). “台湾デジタル大臣「唐鳳」を育てた教えと環境”. 東洋経済education×ICT. 2020年10月21日閲覧。