可逆チューリングマシン
可逆チューリングマシン(英: Reversible Turing machine) は、その可能な動作の全てが可逆な動作であるチューリングマシンである。結果としてそれが行う計算は、可逆な計算となる。
構成法について説明する。通常の場合の多くの議論で対象とされているチューリングマシンは決定的である。すなわち(チューリングマシン#決定的と非決定的を参照)状態 q と、テープ上のヘッドの位置にある記号(以下、単に「記号」とする) s の組 (q, s) に対して、その時にすべき動作が唯一である。この時、動作した直後の状態と記号だけを見て、どのような動作をした直後かが決定できるなら、そのチューリングマシンは逆に動くことができるわけである。つまり「逆方向にも決定的」であるのが、可逆チューリングマシンである。
もう少し形式的には(チューリングマシンの形式的な記述には、普通は5ツ組を使うが、ここでは便宜上4ツ組に修正したものを使う)、
- 状態 q で任意の記号の時は、状態 q' に遷移し記号を書き換えずに方向 d に動く、という規則を [q, /, d, q'] とする。
- 状態 q 記号 s の時は、状態 q' に遷移し動かずに記号を s' に書き換える、という規則を [q, s, s', q'] とする。
このチューリングマシンの全ての規則のうちから任意の同じでない 2 個の規則 [q1, b1, c1, q'1] と [q2, b2, c2, q'2] を選んだ時に、
- q1=q2 かつ ( b1=b2 または b1=/ または b2=/ ) が成立することがないチューリングマシンは決定的である。
- さらに q'1=q'2 かつ ( c1=c2 または b1=/ または b2=/ ) が成立することもないチューリングマシンは可逆である。
参考文献
編集- 森田憲一「計算における可逆性 : 可逆チューリング機械と可逆論理回路」 『情報処理』Vol. 35, No. 4, pp. 306~314, (1994), 情報処理学会