原発性アメーバ性髄膜脳炎
原発性アメーバ性髄膜脳炎(Primary Amoebic Meningoencephalitis, PAM)は、フォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)と呼ばれるアメーバが原因となり、髄膜と脳組織に炎症を引き起こす、希少で重篤な感染症である。また、ほとんどの患者は健常な小児または若年成人である。
感染経路
編集フォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)は、汚染された水が鼻腔に入ることで感染する。通常、湖、川、水泳やダイビング時に起こる。鼻腔から嗅神経を通じて脳に移動し、脳組織に感染する。脳組織に侵入すると、激しい炎症を引き起こし、髄膜脳炎(meningoencephalitis)を引き起こす。
症状
編集初期症状は、発症後1~9日以内に高熱、激しい頭痛、吐き気、嘔吐、首のこり、ときに嗅覚および味覚の変化が現れるとされている。症状が進行すると、行動異常、幻覚、痙攣、失語症、運動障害が現れるようになる。終末期には、脳圧の上昇に伴い、脳ヘルニアが発生し、呼吸不全や昏睡状態に至る。適切な治療が行われない場合、通常は発症から7〜10日以内に死亡する。
診断
編集脳脊髄液(CSF)を採取し、顕微鏡検査でアメーバを確認。特に湿性固定標本での直接観察や、染色(例:トリパンブルー染色)による観察が行われる。脳脊髄液検査や特定の検査は、他の原因を除外するために必要であるが、特異性が低いため、診断を確定するのは難しい場合がある。
治療
編集抗リーシュマニア薬であるミルテホシン(miltefosine)を組み込むことが推奨されている。この薬剤は他の薬剤と併用することで、原発性アメーバ性髄膜脳炎の治療に成功している。さらに、ミルテホシン(miltefosine)はバラムチア(Balamuthia)およびアカントアメーバ(Acanthamoeba)による脳炎の治療にも利用され、その治療効果が確認されている。
以下は、他の抗微生物薬としてaegleria属原虫に対する併用治療レジメンに使用されるものである。
痙攣発作および脳浮腫を管理するために、抗てんかん薬やデキサメタゾンが必要になることがある。[1]
治療は非常に難しく、早期診断と治療が重要であるが、それでも死亡率は依然として高いとされている。
予後
編集治療を受けても多くの患者が数日から二週間以内に死亡する。治療が成功するケースは非常に稀である。
稀な生存例では、早期発見と迅速な治療が鍵となる。成功したケースでは、複数の抗アメーバ薬の併用と積極的な対症療法がおこなわれている。
脚注
編集- ^ “原発性アメーバ性髄膜脳炎 - 13. 感染性疾患”. MSDマニュアル プロフェッショナル版. 2024年6月11日閲覧。
参考文献
編集- “原発性アメーバ性髄膜脳炎 - 13. 感染性疾患”. MSDマニュアル プロフェッショナル版. 2024年6月11日閲覧。