区裁判所

戦前の日本の裁判所

区裁判所(くさいばんしょ、英語: Local Court)は、戦前の日本内地において、軽微な民事刑事事件の第一審を行った裁判所。当初は1881年太政官布告に基づいて設置され治安裁判所と称した。1890年裁判所構成法により区裁判所に改称された。

概要

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裁判官1人で行う単独審であった。また、現在は法務局の所管である登記事務も行っていた。現在の簡易裁判所と似ているが、簡易裁判所は区裁判所の後身ではなく、戦後新設された裁判所とされる。

管轄

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次の事項について第一審としての裁判権を有していた。

民事

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  • 訴訟物の価額が一定額以下の民事訴訟(裁判所構成法第14条第1号)
裁判所構成法の制定当時は100円以下であった。その後の経済の発達・産業取引の進歩に伴って[1]順次裁判所構成法が改正され、200円以下(明治38年法律第67号[2])、500円以下(大正2年法律第6号[3])、1000円以下(大正14年法律第5号[4])と引き上げられた。第二次世界大戦中は、裁判所構成法戦時特例により2000円以下にまで引き上げられ、終戦後も元の額に戻されず、裁判所法の制定による区裁判所の廃止まで変更されなかった。
  • 訴訟物の価額と関係なく次に掲げる事項(裁判所構成法第14条第2号)
    1. 不動産の明渡等の請求・賃貸借に関する訴訟(イ)
    2. 不動産の境界のみに関する訴訟(ロ)
    3. 占有のみに関する訴訟(ハ)
    4. 雇用者使用者間の雇用期限が1年以下の契約に関する訴訟(ニ)
    5. 旅人と旅店、飮食店等の主人・水陸運送人との間に起こった次の事項に関する訴訟(ホ)
      • 賄料・宿料・運送料・手荷物の運送料
      • 旅人が保護のために預けた手荷物・金銭・有価物
  • 破産事件(裁判所構成法第14条の2)
裁判所構成法の制定当時は地方裁判所の管轄であったが(制定当時の裁判所構成法第28条)、1922年(大正11年)の裁判所構成法改正により区裁判所の管轄に移された(大正11年法律第53号[5])。

刑事

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  • 短期1年以上の懲役禁錮を規定していない罪で、予審を経ていない刑事訴訟。(法第16条)

 なお、この規定は度々改正されており、上記は大正11年法律第53号による改正後の規定である。

一覧

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区裁判所の一覧(昭和16年法律第69号による改正後)[6]
控訴院 地方裁判所 区裁判所
東京 東京民事
東京刑事
東京・八王子
横浜 横浜・横須賀・小田原
浦和 浦和・越ヶ谷・川越・熊谷・秩父
千葉 千葉・佐倉・一宮本郷・松戸・木更津・北条・八日市場・佐原
水戸 水戸・太田・土浦・龍ヶ崎・麻生・下妻
宇都宮 宇都宮・芳賀・大田原・栃木・足利
前橋 前橋・沼田・新田・高崎・中之條・北甘楽
静岡 静岡・沼津・吉原・下田・浜松・掛川
甲府 甲府・鰍沢・谷村
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大阪 京都 京都・園部・宮津・峯山・舞鶴・福知山
大阪 大阪・堺・岸和田
神戸 神戸・伊丹・明石・篠山・柏原・姫路・社・龍野・豊岡・洲本
奈良 奈良・葛城・宇陀・五條
大津 大津・水口・彦根・長浜
和歌山 和歌山・妙寺・田邊・御坊・新宮
徳島 徳島・豊岡・脇町・川島
高松 高松・丸亀・観音寺
高知 高知・須崎・安芸・中村
名古屋 名古屋 名古屋・一宮・半田・岡崎・豊橋・新城
安野津 安野津・松坂・上野・四日市・山田・木本
岐阜 岐阜・八幡・大垣・御嵩・髙山
福井 福井・武生・大野・敦賀・小浜
金沢 金沢・小松・七尾・輪島
富山 富山・魚津・高岡・出町
広島 広島 広島・呉・竹原・尾道・福山・三次・庄原
山口 山口・徳山・萩・岩国・下関・船木
岡山 岡山・玉島・笠岡・高梁・新見・津山・勝山
鳥取 鳥取・倉吉・米子
松江 松江・木次・今市・浜田・益田・大森・西郷
松山 松山・大洲・八幡浜・西条・今治・宇和島
長崎 長崎 長崎・大村・島原・佐世保・平戸・武生水・福江・厳原
佐賀 佐賀・武雄・伊万里・唐津
福岡 福岡・甘木・飯塚・直方・久留米・吉井・柳河・八女・小倉・行橋・田川
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熊本 熊本・三角・高瀬・御船・山鹿・宮地・八代・人吉・天草
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宮城 仙台 仙台・大河原・古川・石巻・登米・気仙沼
福島 福島・相馬・郡山・白河・若松・平
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釧路 釧路・帯広・網走・野付牛・根室
樺太 豊原・知取・真岡

脚注

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関連項目

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