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北九州元漁協組合長射殺事件

1998年に日本の福岡県北九州市で発生した殺人事件

北九州元漁協組合長射殺事件（きたきゅうしゅう もとぎょきょうくみあいちょう しゃさつじけん）は、1998年（平成10年）2月18日に福岡県北九州市で発生した殺人事件。

事件の概況

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1998年（平成10年）2月18日午後7時ごろ、福岡県北九州市小倉北区古船場町の路上[1]で、元脇之浦漁業協同組合（現・北九州市漁業協同組合脇之浦地区）組合長の男性（当時70歳）に、何者かが拳銃を至近距離から発砲、4発を命中させた[2]。

その後、暴力団2代目工藤連合・草野一家（現在の工藤会）の当時の組長ら3人が殺人と銃刀法違反で逮捕・起訴され、そのうちの2名については2008年に最高裁判所で無期懲役と懲役20年の有罪判決が確定し、残りの1名については第1審で無罪を言い渡された。この第1審において、事件の背景を「港湾整備公共事業への利権介入を断られたことへの報復」と位置付け、「工藤連合の組織的関与が明白である」とみなされた[3]。

さらに2013年（平成25年）12月には、前述の男性の実弟で、当時北九州市漁業組合長だった男性（当時70歳）も射殺される事件が発生。これを受けて、福岡県警は未解決のままだった1998年の射殺事件の捜査を強化する。その結果、1998年の事件で、工藤会の実質トップとされた総裁・野村悟が、その支配下にあった実行犯との共謀が関与され、実質的に重要な役割を果たしていれば、実行犯と同等の責任を問えるものとみなされる「共謀共同正犯」とされ、行方を追っていたが、2014年（平成26年）9月11日に、殺人と銃刀法違反で逮捕[3]。

同時に、1998年の事件で当時若頭だった工藤会のナンバー2とされる会長・田上不美夫に対しても逮捕状を取り、野村共々逮捕する方針を固めるが、田上の自宅を捜索しても見つからなかったため、野村に対し警察庁は、周辺県の警察に手配・捜査を呼び掛ける特別手配を交付。同9月13日に会長を逮捕した[4]。

なお、共犯者が公判中による公訴時効停止及び2010年（平成22年）の殺人罪の公訴時効撤廃[3]により、工藤会の総裁と会長の公訴時効は成立していない。

2021年（令和3年）8月24日、福岡地方裁判所第3刑事部[5]（足立勉裁判長）[注 1]は、本事件を含む工藤會による市民襲撃4事件（殺人罪および組織犯罪処罰法違反・銃刀法違反）を、すべて工藤會総裁の野村が首謀および指揮したと認定し、野村を死刑（求刑：同）、田上を無期懲役（求刑：無期懲役・罰金2,000万円）とする判決を言い渡した[8]［事件番号：平成26年(わ)第1284号など］[5]。指定暴力団最高幹部への死刑判決は国内初の事例となる[10]。

2024年（令和6年）3月12日、福岡高等裁判所は、野村は本事件について「犯行の指示の存在を認めるのに十分な証拠はない」と述べ無罪と判断。他3事件は有罪として、死刑とした一審判決を破棄し、無期懲役を言い渡した[11][12]。田上については控訴棄却とした[13]。

なお、2014年（平成26年）にはKの孫の歯科医師が胸や腹などを刺され重傷を負う殺人未遂事件が発生しており、裁判で有罪とされた事件の内1件はこの件[14]。

出典

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注釈

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  1. ^ 足立勉裁判官（判事）は2020年4月1日時点で、福岡地裁第3刑事部（合議1係）を担当していた[6]。その後、足立は2021年（令和3年）4月1日付で、東京高裁判事・東京簡裁判事として異動したが[7]、福岡地裁で開かれた判決公判（2021年8月24日）では自ら判決文を読み上げている[8][9]。

出典

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  1. ^ 暴力団工藤会の総裁逮捕　漁協元組合長射殺に関与の疑い 朝日新聞 2014年9月13日、9月14日閲覧
  2. ^ 「元漁協組合長射殺、工藤会総裁を殺人容疑で逮捕」『読売新聞』2014年9月11日。オリジナルの2014年9月14日時点におけるアーカイブ。2014年9月14日閲覧。
  3. ^ a b c 福岡県警、工藤会トップを逮捕　１６年前、元漁協組合長殺害関与の疑い 西日本新聞 2014年9月11日、9月14日閲覧[リンク切れ]
  4. ^ 工藤会ナンバー２を逮捕　元漁協組合長の射殺容疑 佐賀新聞 2014年9月13日、9月14日閲覧
  5. ^ a b “傍聴券交付情報”. 裁判所ウェブサイト. 最高裁判所 (2021年8月24日). 2021年8月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月24日閲覧。 “福岡地方裁判所 第3刑事部 令和3年8月24日　午前8時30分　福岡高等・地方・家庭・簡易裁判所合同庁舎裏南側ロータリー付近 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反，銃砲刀剣類所持等取締法違反，殺人被告事件　平成26年(わ)第1284号等”
  6. ^ “担当裁判官一覧 > 福岡地方裁判所”. 裁判所ウェブサイト. 最高裁判所 (2021年4月1日). 2021年2月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月4日閲覧。 “福岡地方裁判所 第3刑事部の担当裁判官一覧”
  7. ^ “裁判官情報 足立勉”. 新日本法規WEBサイト. 新日本法規出版 (2021年7月5日). 2021年8月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月24日閲覧。
  8. ^ a b 「【速報】工藤会トップに死刑判決　市民襲撃4事件に関与認定　福岡地裁」『西日本新聞』西日本新聞社、2021年8月24日。オリジナルの2021年8月24日時点におけるアーカイブ。2021年8月24日閲覧。
  9. ^ 「工藤会トップに厳刑へ　市民襲撃4事件関与認定　福岡地裁、主文を後回し」『西日本新聞』西日本新聞社、2021年8月24日。オリジナルの2021年8月24日時点におけるアーカイブ。2021年8月24日閲覧。
  10. ^ 「工藤会総裁に死刑判決　ナンバー2には無期懲役判決」『朝日新聞デジタル』朝日新聞社、2021年8月24日。オリジナルの2021年8月24日時点におけるアーカイブ。2021年8月24日閲覧。
  11. ^ “工藤会トップ、二審は無期懲役 元漁協組合長射殺は無罪―一審死刑を破棄・福岡高裁”. 時事通信. (2024年3月12日). https://www.jiji.com/sp/article?k=2024031200080 2024年3月12日閲覧。 
  12. ^ “「意思決定の在り方不明」で共謀認めず 工藤会総裁、野村悟被告控訴審”. 産経新聞. (2024年3月12日). https://www.sankei.com/article/20240312-TKYS7VQQWNNU7OJGU3K4FREFZE/ 2024年3月12日閲覧。 
  13. ^ “工藤会トップの野村悟被告への死刑を破棄、無期懲役判決…福岡高裁が1審の共謀認定方法認めず”. 読売新聞. (2024年3月12日). https://www.yomiuri.co.jp/national/20240312-OYT1T50034/ 2024年3月12日閲覧。 
  14. ^ “「工藤会」トップに無期懲役 1審の死刑判決取り消し 福岡高裁”. NHK. (2024年3月12日). https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240312/k10014387471000.html 2024年3月13日閲覧。 
 

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