切り干し大根
切り干し大根(きりぼしだいこん、単に切り干しとも[2])は、ダイコンを細長く薄く切って乾燥させた乾物[3]。特に京都では軒しのぶ(のきしのぶ)とも呼ばれる[4]。
100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 1,260 kJ (300 kcal) |
69.7 g | |
食物繊維 | 21.3 g |
0.8 g | |
9.7 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(0%) 2 µg |
チアミン (B1) |
(30%) 0.35 mg |
リボフラビン (B2) |
(17%) 0.20 mg |
ナイアシン (B3) |
(31%) 4.6 mg |
パントテン酸 (B5) |
(25%) 1.24 mg |
ビタミンB6 |
(22%) 0.29 mg |
葉酸 (B9) |
(53%) 210 µg |
ビタミンC |
(34%) 28 mg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(14%) 210 mg |
カリウム |
(74%) 3500 mg |
カルシウム |
(50%) 500 mg |
マグネシウム |
(45%) 160 mg |
リン |
(31%) 220 mg |
鉄分 |
(24%) 3.1 mg |
亜鉛 |
(22%) 2.1 mg |
銅 |
(7%) 0.13 mg |
セレン |
(3%) 2 µg |
他の成分 | |
水分 | 8.4 g |
水溶性食物繊維 | 5.2 g |
不溶性食物繊維 | 16.1 g |
ビオチン(B7) | 5.9 µg |
硝酸イオン | 2.9 g |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
概要
編集秋の終わりから冬にかけて収穫したダイコンを細切りにし、広げて天日干しする。寒さが厳しいほど良質な製品になる。戻す時間が短く灰汁が少ないため、扱いやすい。戻すと、重量は約4倍に増加する[5]。
切る太さや脱水の方法などにより、いくつかの種類に分かれる。縦四つ割にしたものは割り干し大根(わりぼしだいこん)と呼ばれる。また、長崎県では大根を茹でてから同様の加工を施したゆで干し大根(ゆでぼしだいこん)、寒風と氷点下になる気候を活かした凍み大根(しみだいこん)や寒干し大根(かんぼしだいこん)などがある[6]。いずれも乾物なので常温保存が可能だが、夏季には茶色く変色してしまうため、春を過ぎたら冷蔵庫での保存が望ましい。
軽く洗ってから水に漬けて戻し、醤油や酢をかけてそのまま食べるほか、煮物などの料理に用いる。 名古屋を中心とする尾張地方では、花切大根(はなきりだいこん)と呼ばれる[7]。これは、縦割りにして乾燥させた大根を薄く切った形状が、桜の花びらに似ていることにちなむ[8]。
実際に含まれる栄養価は、生育土壌、栽培条件、品種、加工方法[9]によって異なるが、良質の食物繊維やカルシウムが多く含まれており、健康食品としても有用とされる。
主な生産地
編集漬物
編集割り干し大根(または切り干し大根)を、昆布、生姜、唐辛子、白胡麻などとともに甘酢液で漬けたものはハリハリ漬(はりはり漬)という[11][12]。しかし、ハリハリ漬(はりはり漬)は沢庵漬けから製造される壺漬けに押されて販路が縮小している[11]。
また、天保年間に初版が刊行された『漬物塩嘉言』では、干し大根を昆布、生姜、みょうが、塩漬茄子などとともに、酒、醤油、酢または梅酢で漬けたものを「阿茶蘭漬」として紹介している[13]。
ギャラリー
編集-
水戻し前の切干大根
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水戻し後の切干大根
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切り干し大根の煮物(弁当のおかず)
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切り干し大根の煮物(信州おやきの具)
脚注
編集- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ 「切干し」『デジタル大辞泉』 。コトバンクより2024年9月10日閲覧。
- ^ 「切干し大根」『デジタル大辞泉』 。コトバンクより2020年11月20日閲覧。
- ^ “軒しのぶ”. 日本の食べ物用語辞典. FROMTOJAPAN. 2020年11月20日閲覧。
- ^ 家森、奥薗 2013, pp. 26, 32–33.
- ^ 家森、奥薗 2013, pp. 34–36.
- ^ “花切大根”. 株式会社安本. 2020年11月20日閲覧。
- ^ “花切大根”. 紙屋本店. 2020年11月20日閲覧。
- ^ 水野時子、佐々木弘子、『切干大根製造工程における青首大根とアザキ大根の遊離アミノ酸組成の比較』 日本食生活学会誌 Vol.26 (2015) No.3 p.139-142, doi:10.2740/jisdh.26.139
- ^ 家森、奥薗 2013, p. 35.
- ^ a b “漬物の製造法”. 全日本漬物協同組合連合会. 2022年4月8日閲覧。
- ^ 「はりはり漬」『デジタル大辞泉』 。コトバンクより2020年11月20日閲覧。
- ^ 宮尾 茂雄. “漬物塩嘉言と小田原屋主人”. 東京家政大学・食品加工学研究室. 2023年1月12日閲覧。
参考文献
編集- 家森幸男、奥薗壽子 監修『すべてがわかる!「乾物」事典』世界文化社、2013年。ISBN 9784418133420。
- 金和子、『切り干し大根の香気形成について』 日本家政学会誌 Vol.46 (1995) No.5 P413-421, doi:10.11428/jhej1987.46.413
関連項目
編集外部リンク
編集- 倉田美恵、『切り干し大根』 福山市立女子短期大学紀要 39, 33-42, 2012, NAID 110008802895