八雲町都市間高速バス正面衝突事故

八雲町都市間高速バス正面衝突事故(やくもちょうとしかんこうそくばすしょうめんしょうとつじこ)は、2023年令和5年6月18日[1]北海道八雲町野田生の国道5号[2]で発生した交通事故である。この事故により5名が死亡、12名が重軽傷を負った。

八雲町都市間高速バス正面衝突事故
場所 日本の旗 日本北海道八雲町野田生
国道5号
座標
北緯42度13分1.9秒 東経140度22分59.2秒 / 北緯42.217194度 東経140.383111度 / 42.217194; 140.383111座標: 北緯42度13分1.9秒 東経140度22分59.2秒 / 北緯42.217194度 東経140.383111度 / 42.217194; 140.383111
日付 2023年令和5年)6月18日
午前11時55分頃
原因 家畜運搬車のセンターラインはみ出し、はみ出した原因は不明
死亡者 5人(都市間高速バス運転手1人、家畜運搬車の運転手1人、乗客3人)
負傷者 12人(乗客12人)
謝罪 日本クリーンファーム(家畜運搬車所有会社)が翌日の19日午後に報道陣の取材に対し謝罪
賠償 死亡した乗客の遺族2人が日本クリーンファームに対しそれぞれ約5800万円の損害賠償を求め提訴
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概要

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2023年(令和5年)6月18日午前11時55分頃、北海道八雲町野田生の国道5号で、乗客15人[注釈 1]が乗車する北都交通都市間高速バス高速はこだて号[3]」(いすゞ・RU系ガーラ)に、緩やかな左カーブを直進する様にセンターラインを逸脱し走行して来た30頭を積載する家畜運搬車いすゞ・FTR系フォワード)が減速せずに正面衝突した[4]。現場は左側にガードロープが設置されており、当時、路面は乾燥していた[5]

都市間高速バスは同日午前7時50分頃に札幌市のJR札幌駅前を出発し[5]、午後1時45分頃に函館市へ向かう最中であり[6]、家畜運搬車は森町事務所を出発し、七飯町養豚場で豚を積み込み八雲町の加工場へ向かう最中であった[4][1]

この事故により17名が救急搬送され[3]、都市間高速バスを運転していた男性(64歳)、家畜運搬車を運転していた男性(65歳)、都市間高速バスに乗車していた乗客の函館市職員男性(33歳)、女性(57歳)、女性(55歳)の5名が死亡、1名が重傷を負い、20歳代から40歳代の男性3名と30歳代から70歳代の女性7名、年齢不明の女性1名と年齢性別共に不明の1名の計11名が軽傷を負った[7][8]。都市間高速バスの男性は乗務歴15年のベテランドライバーであり、重大事故の経験も無い「優良乗務員」であり、前日と前々日は休日であった[5]。担当者は「乗客が亡くなられた事を重く受け止めている」と話した[5]。家畜運搬車の男性も同じく運転歴30年のベテランドライバーであった[5]。また、北都交通によれば、死亡した乗客3名は共に運転席側の先頭から3席目にかけてに乗車していた[7][1]

都市間高速バスの男性の元同僚は「誰よりも早く出勤されて、運行前のバスの点検や、車両の状況なども、細かく、くまなく点検される方。タイヤの溝までチェックする方でした。あんな恐ろしい、凄まじい衝撃と、あれだけ余裕のない道幅で、よくあれだけピタッとまっすぐ止まれたなと。あれが彼が精一杯できた思いなのかなと」と話した[4]

家畜運搬車に積まれていた豚は道路上に投げ出され、日本クリーンファーム親会社日本ハムによると30頭のうち12頭が事故の衝撃で死亡、17頭は生存したという。その後、食肉処理場に運ばれ通常通り処理されたが、内出血などがひどく出荷は控えられた[8]。残る1頭は26日に発見されたが、かなり衰弱した状態で捕獲後、安楽死処分された[9]

現場函館市から北西に約60kmの地点[3]内浦湾沿いであり[3]ドライブレコーダー映像車両の損傷状態などから、家畜運搬車がカーブを直進して都市間高速バスの運転席側[3]に衝突したものとみられる[7]。また、家畜運搬車には車線逸脱警報は搭載されていなかった。また、車体の半分同士が衝突する「オフセット衝突」も事故を拡大させた要因と考えられる[10]

また、現場では居眠り運転追い越しによる事故が多発しており[4]、10年前に国土交通省北海道開発局により一帯を事故危険区間に設定されたが、中央分離帯等の正面衝突対策は取られておらず、事故を受け開発局はランブルストリップスを設置した[2]

原因

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事故の原因は、家畜運搬車がセンターラインを越え、対向車線の都市間高速バスに正面衝突したことで、現場にブレーキ痕はなく、事故現場までの道路は約50kmに渡りほぼ直線だったことから、運転手の男性の人為的なミスが原因と考えられたが、男性は事故当時、心筋梗塞を発症していた可能性も浮上した[11]

また、事故前日に男性は「熱があり、体調が悪い」等と同僚らに体調不良を訴えており、風邪薬を服用していた[2]。なお、事故当日は訴えず、運転不可能な程では無かったという[2]

持病などはなく、運転歴30年のベテランで、これまでに重大事故はなかったという[4]。日本クリーンファームは取材に対し、「事故当日の運転手の体調については答えられない」と回答した。昨年健康診断では目立った異常は確認されておらず、直近3ヶ月の勤務状況は過重労働ではなかったとしている。また、同年7月13日に函館労働基準監督署が日本クリーンファームを調査した際も、運転者の過重労働等の法令違反は確認されなかった[2]

親族は「原因が分かって、それが本人のせいではないと証明されたらいいなと思っているよ」と話し[4]、持病については「聞いたことはない。落ち着いて一生懸命仕事する真面目なヤツだったよ」と話した[4]

交通事故鑑定人の澁澤敬造は「運転手さんの人為的なエラーが事故に繋がったと考えるのが自然。ぼうっとしてしまうということですね。単調な運転になっていたでしょうから。今回の現場では、バスの左側にガードロープといって路外に落ちないようにするための構造物がありました。今回の事故は本当に防ぎようがない事故だなっていう感じはしますよね」と分析した[4]

時系列

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  • 2023年(令和5年)6月18日、事故発生。
  • 2023年(令和5年)6月19日自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で日本クリーンファームを家宅捜索
  • 2023年(令和5年)7月14日道警は国土交通省北海道開発局や道、道トラック協会、道バス協会等と札幌市で重大交通事故抑止緊急対策会議を開き、正面衝突事故の抑止対策や安全運転教育等、事故防止に向けた連携強化を確認[2]
  • 2023年(令和5年)12月5日、死亡した乗客の男性の民法使用者責任に基づき日本クリーンファームに約5800万円の損害賠償を求め、函館地方裁判所提訴。日本クリーンファームは「訴状が届いたばかりでコメントできない」とし、代理人を務める弁護士は「請求に従い、会社側が支払うものと考えている」と話した[12]
  • 2023年(令和5年)12月12日、死亡した乗客の男性の長女も民法の使用者責任に基づき日本クリーンファームに約5800万円の損害賠償を求め、函館地方裁判所に提訴。
  • 2024年(令和6年)3月22日、道警は日本クリーンファーム道南事業所の道南生産管理部長と安全運転管理者を業務上過失致死傷容疑で書類送検。運転手の男性も自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で容疑者死亡のまま送検。捜査関係者によれば、運転手は事故前日、運転業務終了後に体調不良を安全運転管理者に伝え、情報は道南生産管理部長にも共有。2人は事故当日に運転手の体調を確認しなかったという[13][14]

脚注

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注釈

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  1. ^ 出発時は18人であったが、事故前に八雲停留所で3人が降車した。

出典

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  1. ^ a b c センターライン越えたトラックがバスに…5人死亡 死亡した乗客3人は先頭から3番目までの座席に 過失運転致死傷も視野に捜査”. UHB:北海道文化放送 (2023年6月19日). 2023年6月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月7日閲覧。
  2. ^ a b c d e f 5人死亡の北海道バス事故、衝突のトラック運転手に過重労働など確認されず”. 読売新聞オンライン (2023年7月17日). 2024年3月7日閲覧。
  3. ^ a b c d e トラックが車線をはみ出したか バスと衝突、5人死亡 北海道八雲町:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2023年6月19日). 2023年6月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月7日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h バスは「事故避けられなかった」鑑定人が見た現場 ほとんどの原因は『人為エラー』約50キロの"ほぼ直線道路"が事故誘発か”. UHB:北海道文化放送 (2023年6月20日). 2023年6月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月7日閲覧。
  5. ^ a b c d e バスとトラック正面衝突、乗客ら5人死亡 北海道・八雲”. 日本経済新聞 (2023年6月18日). 2024年12月2日閲覧。
  6. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2023年6月18日). “バス衝突、5人死亡 ブタ輸送のトラックと 北海道”. 産経ニュース. 2024年3月7日閲覧。
  7. ^ a b c 死亡したバス乗客3人、運転席の後ろ3列に乗車か 北海道の衝突事故:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2023年6月19日). 2024年3月7日閲覧。
  8. ^ a b トラックから逃げ出した豚1頭、なお行方不明 捜索続く 北海道事故:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2023年6月22日). 2024年3月7日閲覧。
  9. ^ 【速報】衝突事故を起こしたトラックから逃走したブタ1頭を発見…衰弱ひどく"安楽死処分"に 北海道・八雲町”. UHB:北海道文化放送 (2023年6月26日). 2024年3月7日閲覧。
  10. ^ 北海道バス事故、トラック側にブレーキ痕確認されず…「オフセット衝突」で被害拡大か”. 読売新聞オンライン (2023年6月20日). 2024年3月7日閲覧。
  11. ^ “運転手は心筋梗塞を起こしていたか“八雲5人死亡事故”安全運転管理者らを書類送検”. STV. (2024年3月22日). https://nordot.app/1143804815740453435?c=768367547562557440 
  12. ^ 北海道高速バス事故、遺族が提訴 トラック雇用主に賠償請求(共同通信)”. Yahoo!ニュース. 2024年3月7日閲覧。
  13. ^ “トラックによる死傷事故、会社の管理者も書類送検 識者「意義ある」”. 朝日新聞. (2024年3月22日). https://www.asahi.com/sp/articles/ASS3Q6QJRS3QIIPE002.html 2024年3月22日閲覧。 
  14. ^ “トラック運転手の体調管理怠った疑い 幹部ら書類送検 北海道バス事故”. 毎日新聞. (2024年3月22日). https://mainichi.jp/articles/20240322/k00/00m/040/355000c 2024年3月22日閲覧。 

関連項目

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  • バス事故
  • 自家用自動車 - 事故を起こした当該車両は養豚会社所属の自家用車両(白ナンバー)であった。
  • ランブルストリップス - 現場は長い直線が続くことから正面衝突が多発しており、近隣住民から陳情が出されていた。