亀井俊介
亀井 俊介(かめい しゅんすけ、1932年8月14日 - 2023年8月18日)は、日本の比較文学者、アメリカ文学者、アメリカ大衆文化研究者。東京大学名誉教授。
来歴
編集岐阜県中津川市生まれ。新制岐阜県立中津高等学校卒業。1953年、東京大学文学部英文科卒。1952年、同大学院比較文学比較文化専攻修士課程修了。はじめ詩人を目指していた。同大学院比較文学比較文化専攻博士課程在学中に休学し、セントルイスのワシントン大学に留学[1]。メリーランド大学大学院などをへて、1962年に帰国して大学院に復学。1963年、東京大学大学院比較文学比較文化専攻博士課程単位取得退学。師の一人に島田謹二がいる。
1963年東京大学教養学部助教授、1984年教授、1993年定年退官、名誉教授、東京女子大学教授、2003年岐阜女子大学教授。2020年同退職。
1971年に『近代文学におけるホイットマンの運命』で日本学士院賞を受賞している。1973年には日本学術振興会派遣海外研究員として、ニューヨーク州立大学オルバニー校に留学して、アメリカ大衆文化研究の先駆けとなった。
2023年8月18日、病気のため死去[2]。91歳没。
人物
編集- 著書が多数あり、アメリカ大衆文化に詳しく、性革命に関する著作もあり、『マリリン・モンロー』を刊行したときは、東大教授が岩波新書で出したというので話題になった。
- 司馬遼太郎の愛読者でもあり、新潮文庫版の『峠』や『アメリカ素描』の解説を書いている。また日本女子大学教授だった妻亀井規子(旧姓山名、規子の父は法学者の山名寿三)の死後、遺著「ヴィクトリア朝の小説」(研究社)を刊行している。手記『わが妻の「死の美学」』を出した。
- 2007年にはその研究活動の出発点であった「アメリカ産の日本詩人」ヨネ・ノグチ(日本名野口米次郎、イサム・ノグチの父)の復権を目指し、『ヨネ・ノグチ英文著作集』全6巻を編集、別冊日本語解説を書いた。
受賞歴
編集著作
編集- 『近代文学におけるホイットマンの運命』(研究社出版) 1970
- 『ナショナリズムの文学』(研究社出版) 1971、のち講談社学術文庫 1988
- 『アメリカの心 日本の心』(日本経済新聞社) 1975、のち講談社学術文庫 1986
- 『サーカスが来た! アメリカ大衆文化覚書』(東京大学出版会) 1976、のち文春文庫 1980、のち岩波同時代ライブラリー 1992、のち平凡社ライブラリー 2013
- 『内村鑑三 明治精神の道標』(中公新書) 1977
- 『摩天楼は荒野にそびえ わがアメリカ文化誌』(日本経済新聞社) 1978、のち旺文社文庫 1984
- 『自由の聖地 日本人のアメリカ』(研究社出版) 1978
- 『メリケンからアメリカへ 日米文化交渉史覚書』(東京大学出版会) 1979
- 『バスのアメリカ』(冬樹社) 1979、のち旺文社文庫 1984
- 『カバンひとつでアメリカン』(冬樹社) 1982
- 『本のアメリカ』(冬樹社) 1982
- 『アメリカのイヴたち』(文藝春秋) 1983
- 『ハックルベリー・フィンは、いま』(講談社) 1985、のち講談社学術文庫 1991
- 『マリリン・モンロー』(岩波新書) 1987
- 『ピューリタンの末裔たち アメリカ文化と性』(研究社出版) 1987
- 「亀井俊介の仕事」全5巻(南雲堂)
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- 『荒野のアメリカ』 1987
- 『わが古典アメリカ文学』 1988
- 『西洋が見えてきた頃』 1988
- 『マーク・トウェインの世界』 1995
- 『本めくり東西遊記』 1990
- 『性革命のアメリカ ユートピアはどこに』(講談社) 1989
- 『「金メッキ時代」への私的考察』(PHP研究所) 1990
- 『アメリカ人の知恵 荒野と摩天楼の夢案内』(ベストセラーズ、ワニ文庫) 1990
- 『現代の風景 亀井俊介コラム集』(河合出版) 1991
- 『わが妻の「死の美学」』(リバティ書房) 1993
- 『アメリカン・ヒーローの系譜』(研究社出版) 1993
- 『アメリカの歌声が聞こえる』(岩波書店) 1994
- 「アメリカ文学史講義」全3巻(南雲堂) 1997 - 2000
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- 『新世界の夢 植民地時代から南北戦争まで』
- 『自然と文明の争い 金めっき時代から一九二〇年代まで』
- 『現代人の運命 一九三〇年代から現代まで』
- 『アメリカ文化と日本 「拝米」と「排米」を超えて』(岩波書店) 2000
- 『ニューヨーク』(岩波新書) 2002
- 『わがアメリカ文化誌』(岩波書店) 2003
- 『ひそかにラディカル? わが人生ノート』(南雲堂) 2003
- 『アメリカでいちばん美しい人 マリリン・モンローの文化史』(岩波書店) 2004
- 『わがアメリカ文学誌』(岩波書店) 2007
- 『ハックルベリー・フィンのアメリカ 「自由」はどこにあるか』(中公新書) 2009
- 『英文学者 夏目漱石』(松柏社) 2011
- 『ヤンキー・ガールと荒野の大熊 アメリカの文化と文学を語る』(南雲堂) 2012
- 『有島武郎 世間に対して真剣勝負をし続けて』(ミネルヴァ書房、日本評伝選) 2013
- 『日本近代詩の成立』(南雲堂) 2016
- 『英文学者 坪内逍遥』(松柏社) 2021
- 『魂の声 英詩を楽しむ』(南雲堂) 2021
共著・編著
編集- 『現代比較文学の展望』(編、研究社出版) 1972、のち改題『現代の比較文学』(講談社学術文庫) 1994
- 『講座比較文学』全8巻(芳賀徹, 平川祐弘, 小堀桂一郎共編、東京大学出版会) 1973 - 1976
- 『日本とアメリカ - 比較文化論』全3巻(斎藤眞, 本間長世共責任編集、南雲堂) 1973
- 『アメリカの大衆文化』(本間長世共編、研究社出版) 1975
- 『アメリカ古典文庫5 ウォルト・ホイットマン』[3](編、研究社出版) 1976
- 『アメリカ古典文庫23 日本人のアメリカ論』(編、研究社出版) 1977
- 『文章の解釈』(平川祐弘, 小堀桂一郎共編、東京大学出版会) 1977
- 『日本とアメリカ』(加藤秀俊共編、日本学術振興会) 1977
- 『アメリカ』(鶴見俊輔共著、文藝春秋) 1980
- 『横断鉄道の時代』(編、集英社、人物アメリカ史3) 1984
- 『日米文化交流事典』(編、南雲堂) 1988
- 『パチンコけんけん学々』(編、善本社) 1990
- 『自伝でたどるアメリカン・ドリーム』(鈴木健次共編、河合出版) 1992
- 『アメリカの文化 現代文明をつくった人たち』(編、弘文堂) 1992
- 『アメリカン・ベストセラー小説38』(編著、丸善ライブラリー) 1992
- 『近代日本の翻訳文化』(編、中央公論社、叢書比較文学比較文化3) 1994:退官記念論文集
- 『世界の歴史23 アメリカ合衆国の膨張』(紀平英作共著、中央公論新社) 1998、のち中公文庫 2008
- 『文学を旅する』(小池滋, 川本三郎共著、朝日選書) 2002
- 『名詩名訳ものがたり 異郷の調べ』(沓掛良彦共著、岩波書店) 2005
- 『ヨネ・ノグチ<野口米次郎> 英文著作集:詩集・小説・評論』(編、東京:Edition Synapse) 2007
- 全6巻+別冊解説: Collected English Works of Yone Noguchi Poems, Novels and Literary Essays
- 『アメリカ文化史入門 植民地時代から現代まで』(編、昭和堂) 2006
- 『アメリカの旅の文学 ワンダーの世界を歩く』(編、昭和堂) 2009
- 『「セックス・シンボル」から「女神」へ - マリリン・モンローの世界』(編、昭和堂) 2010
- 『亀井俊介 オーラル・ヒストリー』[4](研究社) 2017
翻訳
編集- 「グリーン・ノウ物語」(ルーシー・M・ボストン、評論社)、のち新版 2008
- 1『グリーン・ノウの子どもたち』 1972
- 2『グリーン・ノウの煙突』 1977
- 3『グリーン・ノウの川』 1970
- 4『グリーン・ノウのお客さま』 1968
- 5『グリーン・ノウの魔女』 1969
- 別巻『グリーン・ノウの石』 1981
監修
編集脚注
編集- ^ 『亀井俊介オーラル・ヒストリー 戦後日本における一文学研究者の軌跡』
- ^ “東大名誉教授・亀井俊介さん死去、91歳…「アメリカン・ヒーローの系譜」で大仏次郎賞”. 読売新聞. (2023年8月26日) 2023年8月26日閲覧。
- ^ 他に『1) ベンジャミン・フランクリン』『4) H・D・ソロー』『12) D・H・ロレンス』を解説担当
- ^ 語りと若手研究者によるインタビュー(オーラル・ヒストリー)での学問回想、副題は「戦後日本における一文学研究者の軌跡」
参考文献
編集- 『わが妻の「死の美学」』(半自伝)
- 「亀井俊介教授著作目録:1953年-1992年」『比較文學研究』(63)1993-06
- 「亀井俊介教授著作目録 1993-2003年」 (亀井俊介教授古稀記念号)『Aurora』(8), 2004
- 小谷野敦『東大駒場学派物語』新書館