中国の建築
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中国建築(英語: Chinese architecture[1])は、何千年にもわたって続いている典型的な東アジア建築である。
多民族国家である中国は、広大な領土や膨大な人口を有するため、建築においても宮殿、園林、陵墓、壇廟、仏教・道教・儒教建築、住宅などその種類は極めて多岐にわたる[2]。古い起源を持つ4000年の歴史を持つ中国文明と同格に、中国の伝統建築もそれなりの歴史を持っている[3]。
9世紀の唐王朝の強盛以来、中国建築は同じ漢字文化圏に所属している朝鮮・日本・ベトナムなどの周辺国にも深く浸透されており、東アジアの国々は中国の建築様式を手本にしてに様々な要素を取り込み、本国の伝統建築を発展させていた。そのため、飛鳥時代から江戸時代までの伝統的な日本建築も伝統的な中国建築の一支流と看做している[4]。
中国建築の大きな特徴の1つとして、「左右の対称性」や「天地人との調和」を重視してきたことが挙げられる。歴史的に見て、建築の構造原理はほとんど変化しておらず、変化が見られるのは「装飾的な細部」のみとされている。こうして、中国建築は古い構造を持ちながらも断絶なく現代の2020年代に存続している。伝統建築の分野では、主として木材が材料として使用されたため、建築物は「木造建築」が絶対的の主流であるが、煉瓦・石などを構造材としたものも少なからずある[2]。
特色
編集中国建築史を専門とする建築史家の田中淡は、中国建築の大まかな特色について、次のように述べている[2]。
中国建築は、高度な技術的水準に早くから到達しただけでなく、材料面では木造を主に塼・石・土も併用し、類型的には城郭・宮殿・壇廟・陵墓・仏寺・石窟(せっくつ)・道観・ラマ廟・イスラム教寺院・官署・民間祠廟・住宅、さらに、ときにはキリスト教・ゾロアスター教・マニ教などをも受け入れ、多くの異民族文化と接触し、多彩な展開をみせた。にもかかわらず、その歴史を大局的にみると、時代・王朝や類型種別にかかわらない、一定の原則性に支配されている点も一つの大きな特色となっている。たとえば、都城の建設の際は、春秋戦国時代から明・清時代に至るまで、一般に二重城郭制を基本理念として計画され、「城」が内城で君主の、「郭」が外城で人民の、それぞれ居住区であって、堅牢(けんろう)な守りを前提とした。個別の建築の場合も、一棟ごとの建物としてより、建築群全体を同様に周壁で取り囲み、閉鎖的な一郭を形成することを主眼とした。中国のもっとも普遍的な住居の伝統的形式「四合院(しごういん)」がその典型で、東西南北に配した家屋で中庭を取り囲み、それを南北方向に幾重にも繰り返して、奥行の深い重層的な中庭群を形成する。この種の左右対称で奥行の深い閉鎖的な中庭群の構成は、唐・宋時代の仏寺や明・清時代の紫禁城や孔子廟にも共通するもので、すでに遠く西周時代の宗廟址にさかのぼる伝統をもつ。
こうした不変的な原則が確立しえた背景には、中国独特の官僚制の歴史がかかわっている。中国建築史の主流を歩み続けたのは、宮殿・城郭・壇廟・陵墓など官営の工程であり、それは官僚主導型のいわば統制的な建築観によって支えられたからである。北宋時代に徽宗(きそう)の勅命によって将作監の李誡(りかい)が編纂(へんさん)した『営造法式』は、世界でも希有(けう)の詳細な内容をもつ大部の建築技術書であるが、その主たる目的はそうした官営工事の経済的な統制であった。同書では建築を8等級に類別し、逐一の部材寸法や装飾・彩色紋様に至るまで、各等級に応じた詳細な設計基準が定められ、積算規準が示されているが、この種の建築に対する等級観も実は儒教の古い伝統に基づくものにほかならない。もとより建築は社会制度と深くかかわるものとはいえ、中国建築の歴史は、とりわけこの国の複雑で奥行の深い歴史の側面を随所に投影しているといえよう。—田中淡
脚注
編集- ^ “Chinese architecture | Definition, History, Characteristics, Styles, Examples, & Facts | Britannica” (英語). www.britannica.com. 2021年12月25日閲覧。
- ^ a b c 第2版, 日本大百科全書(ニッポニカ),ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,世界大百科事典. “中国建築とは”. コトバンク. 2021年12月25日閲覧。
- ^ Liang Sicheng, year 12, A pictorial history of Chinese architecture : a study of the development of its structural system and the evolution of its types, ed. by Wilma Fairbank, Cambridge (Mass.): MIT Press.
- ^ 第2版, 日本大百科全書(ニッポニカ),ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,デジタル大辞泉,世界大百科事典. “日本建築とは”. コトバンク. 2021年12月25日閲覧。