不動産市場安定化ファンド

不動産市場安定化ファンド(ふどうさんしじょうあんていかファンド)とは、J-REITの資金繰りを支援する目的で設立された官民ファンド

概要

編集

金融危機リーマンショック)による金融市場・不動産市況の悪化を受け、政府は2009年(平成21年)4月10日閣議決定「経済危機対策」に、「官民一体となったファンドの創設や日本政策投資銀行等によるJ-REITへの資金供給の充実」が盛り込まれた[1]

国土交通省はこれを受け、同年6月より「不動産市場安定化ファンドの設立・運営に関する検討委員会」を4回開催し[2]、委員会は最終とりまとめ案で、2012年3月までの投資法人債の償還総額(3,268億円)や既存借入金に係る金融機関の破綻・撤退への備え等を考慮し、アンコミットベースで総額3,000~5,000億円程度のファンド規模を確保するとした。以上を踏まえて、ファンドは2009年9月5日に設立された[3]

ファンドのスキームは、投資法人(J-REIT)に対する貸付信託銀行特定金銭信託)から実施することとし、資金は民間金融機関からシニアローン、日本政策投資銀行からメザニンローン、関係業界各社からの出資を「不動産市場安定化ファンド投資事業有限責任組合」(LPS)を介して調達する形となった。また公募により、アセットマネージャー(GP)はDBJ野村インベストメント(現DBJアセットマネジメント)、信託受託者は住友信託銀行(現三井住友信託銀行)、私募取扱者は野村證券が選ばれた[4]

ファンドからの貸付の条件は、資金使途を投資法人債のリファイナンス資金とし、期間は原則3年以内、当初1年間の金利はTIBOR+150~550bps程度とされた。

実績・評価

編集

融資実績は2件180億円で、回収を終えている。貸付金利が高いため実績は2件に留まった一方、アナウンスメント効果はあったとされている[5]。国土交通省は、平成25年度の政策レビュー結果にて、”金融危機時に官民が連携し一定のセーフティネットの役割を果たし、市場に対する安心感や信頼感の回復につながったと考えられる”と評価している[6]

出典

編集
  1. ^ 経済危機対策「経済危機対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議 2009年4月10日
  2. ^ 不動産市場安定化ファンドの設立・運営に関する検討委員会について 国土交通省
  3. ^ "2009年09月 不動産市場安定化ファンド投資事業有限責任組合の契約締結について 9月4日付で、当社がアセットマネージャーを務める「不動産市場安定化ファンド」の出資母体となる「不動産市場安定化ファンド投資事業有限責任組合」に係る投資事業有限責任組合契約が締結され、9月5日に当該組合契約の効力が発生いたしました。"ニュースリリース DBJアセットマネジメント
  4. ^ ARESからのお知らせ 2009年 不動産証券化協会
  5. ^ REIT復活のカギ握る公募増資とM&Aの成否、官民ファンド効果はほぼ出尽くし《特集・不動産/建設》 東洋経済オンライン 2009年10月28日
  6. ^ 不動産投資市場の条件整備 国土交通省 2014年3月
  7. ^ 日本賃貸住宅投資法人とプロスペクト・リート投資法人の合併後の資金調達に関するお知らせ 日本賃貸住宅投資法人 2010年6月18日
  8. ^ 日本コマーシャル、官民ファンドから80億円借り入れ 日本経済新聞 2010年4月6日
  9. ^ 日本コマーシャル投資法人に関わる不動産市場安定化ファンドからの借入金完済について ユナイテッド・アーバン投資法人 2010年11月30日

関連項目

編集