下襲
束帯及び布袴装束のとき袍と半臂の間に着る衣服
概要
編集表地を冬は綾か平絹、夏は紗などで仕立て、裏地を平絹などを板引加工したもので作った。 身頃は二巾、襟は打ち合わせのあるもので脇は縫われていないが、後身頃の裾を長く仕立てている(続裾)。
この裾は身分差などを表現するようになって極端に長くなり、邪魔にならないように別仕立て(別裾)にするようになった。 行幸などで屋外で活動する際には、石帯に下襲の裾を挟んで邪魔にならないようにしていた。 鎌倉時代には臣下は皆別裾になったが、ただ天皇と皇太子のみは昔ながらの続裾を用いる。
通常、束帯装束か布袴装束の時のみ着るものだが、摂関期には若い皇族男子のみ「大君姿」と称して直衣装束に下襲を重ねることがあった。
行幸など「はれの日」には、顔料で文様を描く「染下襲」着用が許された[1]。
下襲の色目
編集- 躑躅:表が白で裏が濃蘇芳(黒紅色)後に裏が黒。若年者や壮年者が通常用いたもの。
- 柳:表が白で裏が青(現在の緑色)。老年者が通常用いたもの。
- 紅梅:表が紅梅色(濃いピンク)で裏が蘇芳(濃い赤紫)。冬から春の中ごろまで着用でき、正月行事などに用いたもの。
- 松重:表が青(緑色)で裏が紫。天皇や皇族の供をする時や競馬などに用いたもの。
- 黄紅葉:表が黄で裏が蘇芳。九月から十一月まで着用でき、儀式や宴などの晴れの席に用いたもの。
- 菊:表が白で裏が蘇芳。十月から十一月まで着用でき、晴れの席に用いる。
- 裏山吹:表が黄で裏が紅。冬から春まで着用でき、御賀や行幸などに用いる。
- 桜:表が白で裏が葡萄染(ワインレッド)。春の間着用でき、晴れの席に用いた。
- 葡萄:表が蘇芳で裏が縹(水色)。冬から春まで着用し、春日行幸などの儀式に着用される。
出典
編集参考文献
編集- 八條忠基『日本の装束解剖図鑑』エクスナレッジ、2021年3月9日。ISBN 978-4-7678-2861-9。