上野点字図書館
上野点字図書館(うえのてんじとしょかん)は、三重県伊賀市上野寺町にある私立の点字図書館。社会福祉法人伊賀市社会事業協会が運営する[6]。津市の三重県視覚障害者支援センターと並ぶ、三重県で2館のみの点字図書館のうちの1館である[2]。
上野点字図書館 | |
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施設情報 | |
正式名称 | 上野点字図書館 |
愛称 | 上野点図[1] |
前身 | 上野市盲人ホーム図書室[2] |
専門分野 | 点字・録音図書、デジタルデータ |
事業主体 | 社会福祉法人伊賀市社会事業協会 |
管理運営 | 社会福祉法人伊賀市社会事業協会 |
延床面積 | 194.34 m2 |
開館 | 1971年(昭和46年)4月[2] |
所在地 |
〒518-0851 三重県伊賀市上野寺町1184-2 |
位置 | 北緯34度45分48秒 東経136度8分4.3秒 / 北緯34.76333度 東経136.134528度座標: 北緯34度45分48秒 東経136度8分4.3秒 / 北緯34.76333度 東経136.134528度 |
ISIL | JP-1005851[3] |
統計情報 | |
蔵書数 | 38,460点(2018年3月31日[4]時点) |
貸出者数 | 10,772人(2017年度[4]) |
年運営費 | 29,972,715円(2017年度[5]) |
公式サイト | 上野点字図書館 |
地図 | |
プロジェクト:GLAM - プロジェクト:図書館 |
視覚障碍者向けに点字図書・録音図書の貸し出しを行うだけでなく、点字や視覚障碍に対する一般市民への啓発・理解の促進、点訳・音訳ボランティアの養成、地方公共団体の依頼による選挙の候補者名簿などの点訳物の作成などの業務を行っている[4]。
歴史
編集1960年(昭和35年)4月に上野市盲人ホーム図書室として開設された[2]。1971年(昭和46年)4月に日本国の認可を得て正式な点字図書館となり、上野点字図書館と称した[2]。当時の蔵書数は点字図書2,207冊、録音図書(磁気テープ)319巻であった[2]。蔵書は点訳・音訳ボランティアの協力を得て年間40点のペースで増加していった[2]。ボランティア養成講座は1982年(昭和57年)に開始した[7]。
1999年(平成11年)には上野市立西小学校(現・伊賀市立上野西小学校)が児童主体でバリアフリー化を推進する活動を行った際に点字表示板作りの指導を実施した[8]。2003年(平成15年)1月28日には、前年5月に点字図書館を訪問した上野市立新居小学校(現・伊賀市立新居小学校)の児童が制作した6冊の点字絵本の寄贈を受けた[9]。
2009年(平成21年)12月、点字の考案者のルイ・ブライユ生誕200年と日本語点字の提案者の石川倉次生誕150年を記念して、点字の世界展を開催した[10][11]。2011年(平成23年)11月3日に開館40周年記念式典を挙行した[2]。
利用案内
編集上野点字図書館は視覚障碍者向けのインターネット図書館「サピエ図書館」[12]に参加している[1]。上野点字図書館が所蔵する資料・データはサピエ図書館を通じてダウンロードできるほか、日本全国の参加館との間で相互貸借が可能である[12]。
特色
編集ボランティアの養成・貢献
編集上野点字図書館では点訳ボランティアと音訳ボランティアを養成する講習会を毎年交互に無料開講している[6]。1982年(昭和57年)に始まった[7]。2018年(平成30年)度は点訳ボランティア養成講座を開講し、6月1日から10月12日までの毎週金曜日に計20回、初心者向けに点字の読み方から教授した[6][7]。なお、点訳作業には2000年(平成12年)前後まで点字盤を使用していたが、以降はパーソナルコンピュータを使用している[15]。
講習会を修了した生徒は上野点字図書館が購入した墨字図書、利用者が持ち込んだ資料(家電製品のマニュアル、会議資料なども含む)を点訳・音訳するボランティアとして活動する[6]。2017年(平成29年)度現在、上野点字図書館で活動している点訳ボランティア団体と音訳ボランティア団体はそれぞれ2団体ずつある[4]。これらのボランティア団体は上野点字図書館からの依頼資料や市の広報紙を点訳・音訳する活動を主としている[12]。
点訳書の制作には市の広報紙なら5日程度、通常の図書であれば最短3か月、長ければ1年かかり、ボランティアは各人の自宅で作業を行う[12]。このため、ボランティア団体全体で点訳できる図書は年間10冊程度にとどまる[12]。音訳書の入手・制作・発送には市の広報紙なら10日程度、通常の図書であれば最短4か月、長ければ1年かかり、ボランティアは各人の自宅または録音室で作業を行う[13]。制作作業そのものは300ページの文庫本で約8時間ほどである[13]。ボランティア団体全体で音訳できる図書は年間20冊程度になる[13]。こうして点訳・音訳された図書は上野点字図書館に収められるほか、サピエ図書館を通して日本全国の視覚障碍者に利用される[12][13]。
点字の普及啓発
編集2009年(平成21年)12月1日から12月10日にかけて[11]、伊賀市の「銀座の館」ギャラリーを会場に「点字の世界展」を開催した[10][11]。同展ではルイ・ブライユや石川倉次のパネル展示[10][11]、点訳された国語辞典[10][11]・点字新聞「点字毎日」[10]・視覚障碍者向けの点字付き地球儀[10][11]・点訳器の実物展示など10種50点を一般向けに展示・公開した[11]。会期中の日曜日[11]である12月6日には[10]「一日点字教室」も開講した[10][11]。この教室では点字の仕組みをレクチャーした後、講師が1対1で参加者各人の名前を点字で栞に打つ体験を行った[11]。点字教室は小中学生を主な対象と想定していたが、大人の単独参加や点訳ボランティア希望者が現れるなど想定外の成果を上げた[11]。
2017年(平成29年)には「日常生活用具展示体験会」と称した視覚障碍者が生活に使う用具の展示会の開催、名刺に点字を入れるサービスを提供した[4]。また主に小学校を対象に、点字教室への講師派遣や点字器の貸し出し、図書館見学の受け入れを行っている[4]。
脚注
編集- ^ a b c d “ゲスト:中部・三重ブロック”. サピエ図書館. 2018年8月8日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 伝田賢史「上野点字図書館 40周年 ボランティアに感謝」毎日新聞2011年11月11日付朝刊、伊賀版25ページ
- ^ “ISIL管理台帳ファイル(公共図書館以外)”. 国立国会図書館関西館図書館協力課 (2019年6月26日). 2019年8月3日閲覧。
- ^ a b c d e f g “平成29年度 社会福祉法人伊賀市社会事業協会 事業報告”. 社会福祉法人伊賀市社会事業協会. 2018年8月8日閲覧。
- ^ “法人単位資金収支計算書(自)平成29年4月1日 (至)平成30年3月31日”. 社会福祉法人伊賀市社会事業協会. 2018年8月8日閲覧。
- ^ a b c d e f 大西康裕「点訳ボランティアしてみませんか? 養成講座を開講 上野点字図書館」毎日新聞2018年4月26日付朝刊、伊賀版22ページ
- ^ a b c d 燧正典「点訳ボランティアになろう 6月から伊賀で養成講習会」朝日新聞2018年4月26日付朝刊、伊賀版23ページ
- ^ 渕脇直樹「障害者にやさしい学校に 上野市立西小6年生が車いすスロープ2台作る」毎日新聞1999年3月9日付朝刊、伊賀版
- ^ 江見洋「新居小の3年生が手作りの点訳絵本6冊を寄贈 上野点字図書館に」毎日新聞2003年1月29日付朝刊、伊賀版23ページ
- ^ a b c d e f g h 伝田賢史"「点字の世界」展 考案者ブライユ生誕200周年 地球儀や辞典展示"毎日新聞2009年12月4日付朝刊、伊賀版27ページ
- ^ a b c d e f g h i j k “「点字の世界展」と一日点字教室の開催”. 公益実践事例集. 全国社会福祉法人経営者協議会 (2010年). 2018年8月8日閲覧。
- ^ a b c d e f 竹内之浩「伝えて支えて 名張市コミュニケーション条例 3 点訳奉仕員 読書の喜び、点字で届けたい」毎日新聞2017年7月15日付朝刊、伊賀版24ページ
- ^ a b c d e f g 竹内之浩「伝えて支えて 名張市コミュニケーション条例 4 音訳奉仕員 正しい情報、声に乗せて」毎日新聞2017年7月20日付朝刊、伊賀版26ページ
- ^ a b "「録音図書」作りに参加を 上野点字図書館 10月から講習会 ボランティア養成へ"朝日新聞2017年8月26日付朝刊、伊賀版27ページ
- ^ 下地毅「点字図書 1冊でも多く 伊賀の図書館が養成講習会 PC点訳や基礎知識など学ぶ」朝日新聞2016年9月2日付朝刊、伊賀版27ページ