ワールドコイン
ワールドコイン(英: Worldcoin)は、サンフランシスコとベルリンに拠点を置くTools for Humanityによって開発された虹彩生体認証を用いた仮想通貨及びそのプロジェクトである。
ワールドコイン | |
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ティッカーシンボル | WLD |
開発 | |
白書 | whitepaper |
開発者 | Tools for Humanity |
ライセンス | Tools for Humanity Corporation |
ウェブサイト | worldcoin |
OpenAIの最高責任者であるサム・アルトマン、マックス・ノベントスターン、アレックス・ブラニアによって2019年に立ち上げられ、ベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツからの支援を受けている[1][2][3][4]。
概要
編集オンライン上で増加するBOTと人間を判別するため、ワールドコインは虹彩生体認証装置であるオーブを開発し、この虹彩生体認証によってユーザーが取得することができるワールドIDを通じて人間であることの証明を行える仕組みを作った[5][6]。オーブは世界中に配備され、ワールドIDの発行は公式アプリであるワールドアプリから無料で行うことができる。人間であることを証明してワールドIDを発行すると、トークンであるワールドコイン(WLD)が付与される[7]。ワールドアプリは、取得されたワールドIDをRedditやDiscord、Minecraftなどのアカウントと統合して人間であることの証明を行うことができる認証システムであると共に、この付与されたワールドコイン(WLD)を用いた決済や送金、またその他のデジタル資産の購入を行うことができるなど、金融インフラとしての側面も備えており、この金融インフラとしての機能を将来的にユニバーサルベーシックインカムのために応用する可能性も構想として語られている[8][9]。
2024年9月時点で、World IDの登録者は650万人を超えている[10]。
歴史
編集2015年にOpenAIを設立してCEOを務めていたサム・アルトマンは、新たに立ち上げるWorldcoinに対して興味があるかを探るために2019年にアレックス・ブラニアにメールを送った。アルトマンともう一人の後に共同設立者となるマックス・ノベントスターンが用意していた文書には、AGI(汎用人工知能)が実現すること、またそれによって社会が有意義な形でディスラプト(破壊)されるということが記されていた[11]。また、ブラニアによるとアルトマンは当時既にUBIの必要性を確信しており、それは社会にとって最も重要なものの一つであると考えていたという。アルトマンは暗号資産に対して懐疑的な面もありながらも、実は暗号資産全体を大いに信じており、世間においては過小評価されているというネットワーク効果が発揮された時にいかにそれが激しく重大であるかと考え、必要なものの多く(暗号資産など)は既に揃っており、あとはそれを普及させるためにスケーリングする必要があるだけだとした[11]。
このようにして、ワールドコインプロジェクトは、アルトマン、ノベントスターン、ブラニアらによって2019年に設立されたTools for Humanityと呼ばれる会社によって開始された[12][13]。
2021年、Tools for Humanityは、ワールドコインのトークンであるWLDは、インターネット経済によって営まれ、よりまとまりのある公正な世界経済を推進するための大きな取り組みのためのトークンであると述べた。このトークンは、イーサリアムのレイヤー2に基づいて、独自の経済圏を持ちながら、イーサリアムブロックチェーンのセキュリティを向上させる仮想通貨となっている。[14][15][16]
またこの年、共同設立者でありCEOを務めていたノベントスターンはワールドコインを退任し、Manaというベンチャー企業を立ち上げた。
2023年7月24日、ワールドコインが正式にスタートした。ベータ期間中には200万人のユーザーが参加し、サービス開始に伴い虹彩生体認証サービスのためのオーブを20カ国、35都市以上に合計1500個に拡大すると発表した[17][18][19]。また同日、大手仮想通貨取引所であるバイナンスやHuobi、Bybit、OKXにワールドコイントークンであるWLDが上場した[20]。
2024年2月、アルトマンがCEOを務めるOpenAIが15日に動画生成AIツールSoraを発表した事を受けてワールドコインの価格が急騰し、過去7日間で190%近く上昇した。また17日には、デイリーユーザーが100万人を突破し、時価総額は10億ドルに迫った[21]。アルトマンは過去に、AGIの利益に基づくユニバーサルベーシックインカムを与える目的でWorldcoinを配布することもあると語っている[22]。
同年9月、Tools for Humanityのアレックス・ブラニアCEOはソウル城東区で開かれたワールドコイン記者懇談会に出席し、「フェイスブックは20億人に達するユーザー基盤を備えている。クリプトシーンでフェイスブックのような企業に成長したい」とビジョンを明らかにした[10]。
設計
編集ワールドコインは、BOTやAIの作り出した存在しない架空の個人アカウントによってサービスを悪用されないよう、ワールドIDと呼ばれるオンライン上で個人を認証するための信頼性の高いシステムを提供しようとしている[23]。ワールドコインでは、ワールドコインのトークンと引き換えに、球体の虹彩スキャナーを利用して虹彩をスキャンしてもらうことで、新規ユーザーを募っている[24]。ワールドコインはトークンの配布システムはユニバーサルベーシックインカムの議論に触発されたと主張している[25]。
批判と問題点
編集投機や詐欺の懸念による米国の規制当局の取り締まりによって妨げられているためワールドコインは米国で利用することができない[26]。
また、WLDが普及した後にどのような価値を持つかが不確かである点から、WLDはミームコインに過ぎず、ワールドコインのユニバーサルベーシックインカムに関する構想は生体認証を通じて人間をBOTから区別した情報を収集し、ワールドIDを発行するというデジタルアイデンティティ(DID)問題を解決するための売り込みのうわべの飾りであり、DIDに関するアプローチの方が真の目的なのではないかという指摘もある[27]。
脚注
編集- ^ Mascellino (2023年2月13日). “Iris biometrics crypto project Worldcoin reportedly looks for $120M investment | Biometric Update” (英語). www.biometricupdate.com. 2023年4月14日閲覧。
- ^ Nieva (2022年4月21日). “Worldcoin Promised Free Crypto If They Scanned Their Eyeballs With "The Orb." Now They Feel Robbed.” (英語). BuzzFeed News. 2023年5月27日閲覧。
- ^ Guo (2022年4月6日). “Deception, exploited workers, and cash handouts: How Worldcoin recruited its first half a million test users” (英語). MIT Technology Review. 2023年5月27日閲覧。
- ^ "You Can Get This Free Crypto—If the 'Orb' Scans Your Eye". Wired. 21 October 2021. 2023年6月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- ^ “サム・アルトマン氏の財団、生体認証で人間にID 登録者に仮想通貨”. 日本経済新聞 (2023年7月24日). 2024年2月24日閲覧。
- ^ Loizos, Connie (2023年3月8日). “Worldcoin, co-founded by Sam Altman, is betting the next big thing in AI is proving you are human” (英語). TechCrunch. 2024年2月24日閲覧。
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- ^ “OpenAIが20億人登録目指す暗号資産「ワールドコイン」の全貌 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)”. forbesjapan.com. 2024年2月24日閲覧。
- ^ Nast, Condé (2021年11月12日). “仮想通貨「Worldcoin」は、ベーシックインカムを実現できるか”. WIRED.jp. 2024年2月24日閲覧。
- ^ a b “ワールドコイン開発会社のCEO「人間の固有性を区別するシステムが不足…ワールドコインが必要な理由」”. BitcoinPost24(ビットコインポスト24) (2024年9月4日). 2024年9月5日閲覧。
- ^ a b Wilser, Jeff (2023年7月25日). “議論を呼ぶ「Worldcoin」の目的は? 80億人のためのベーシック・インカムを目指すプロジェクトの実態は:CEOインタビュー | CoinDesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)”. CoinDesk Japan. 2024年2月23日閲覧。
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- ^ “Tools For Humanity - Crunchbase Company Profile & Funding”. 2024年2月23日閲覧。
- ^ “Sam Altman wants to give you crypto to scan your eyeballs. Can he get 8 billion people stare into a futuristic orb to prove they're not A.I. bots?” (英語). Fortune Crypto. 2023年6月25日閲覧。
- ^ Matney, Lucas (2021年10月21日). “Sam Altman's Worldcoin wants to scan eyeballs in exchange for crypto” (英語). TechCrunch. 2023年6月25日閲覧。
- ^ “Secure Bitcoin Exchange”. 2024年2月21日閲覧。
- ^ “Worldcoin begins rollout of 1.5K Orbs to meet global demand for World ID” (英語). worldcoin.org. 2024年2月23日閲覧。
- ^ 「オープンAIのアルトマン氏、仮想通貨プロジェクト開始」『Reuters』2023年7月24日。2024年2月23日閲覧。
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- ^ Gkritsi, Eliza (2023年7月24日). “サム・アルトマンのWorldcoinが主要取引所に上場──初日に20%以上急騰 | CoinDesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)”. CoinDesk Japan. 2024年2月24日閲覧。
- ^ “サム・アルトマンの「ワールドコイン」が急騰、1週間で190%高 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)”. forbesjapan.com. 2024年2月23日閲覧。
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- ^ Pandolfo, Chris (May 16, 2023). “OpenAI CEO Sam Altman raises $100M for Worldcoin crypto project, which uses 'Orb' to scan your eye: report”. FOXBusiness. 2024年2月21日閲覧。
- ^ “Worldcoin suspended in Kenya as thousands queue for free money”. BBC News. (2023年8月2日) 2023年8月26日閲覧。
- ^ “Silicon Valley entrepreneur Sam Altman wants to scan your eyes in exchange for free cryptocurrency”. CNBC (2021年10月21日). 2023年8月26日閲覧。
- ^ Times, Financial (2023年7月24日). “Ready for your eye scan? Worldcoin launches—but not quite worldwide” (英語). Ars Technica. 2024年2月24日閲覧。
- ^ 晶子, 山口 (2023年5月29日). “オープンAI創業者が取り組むWorldcoinへの深刻な疑問【コラム】 | CoinDesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)”. CoinDesk Japan. 2024年2月24日閲覧。