ロル・コックスヒル[1]英語: Lol Coxhill1932年9月19日 - 2012年7月10日[2]は、イングランドフリー・インプロヴィゼーションサックス奏者および談話家である。彼はソプラノまたはソプラニーノ・サックスを演奏した。

ロル・コックスヒル
Lol Coxhill
ロル・コックスヒル(2007年)
基本情報
出生名 George William Lowen Coxhill
生誕 (1932-09-19) 1932年9月19日
出身地 イングランドの旗 イングランド ハンプシャーポーツマス
死没 (2012-07-10) 2012年7月10日(79歳没)
ジャンル フリー・インプロヴィゼーション
職業 ミュージシャン
担当楽器 ソプラノ・サックス、ソプラニーノ・サックス

略歴

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コックスヒルは、イングランドハンプシャーポーツマスのジョージ・コンプトン・コックスヒル(英語: George Compton Coxhill)とメイベル・マーガレット・コックスヒル(英語: Mabel Margaret Coxhill)(旧姓モットン(英語: Motton))の間に生まれた。彼はバッキンガムシャーアイルズベリーで育ち、1947年に最初のサクソフォーンを購入。兵役に就いた後、多忙なセミプロのミュージシャンとなり、デンジル・ベイリーズ・アフロキュービスト(英語: Denzil Bailey's Afro-Cubists)やグラハム・フレミング・コンボ(英語: Graham Fleming Combo)といったバンドと共にアメリカ空軍基地をツアーした。1960年代にはアメリカに渡って、ルーファス・トーマスモーズ・アリソンオーティス・スパンチャンピオン・ジャック・デュプリー英語版など、ブルースソウルジャズのミュージシャンと演奏を行った。彼はまた、連れのいないソロ・サックスを演奏する練習を開発し、普通ではないパフォーマンスのシチュエーションで大道芸的に演奏した。ソロ演奏以外では、いわゆるリーダーとしてではなく、主にサイドマンまたは同じ立場のコラボレーターとして演奏し、通常のサックス奏者に期待されるようなよくあるロル・コックスヒル・トリオやカルテットを率いることはなかった。その代わりに、同志であるミュージシャンとの断続的かつ長期にわたるコラボレーションが数多くあった。

1960年代後半から1970年代初めに、彼はカンタベリー・ロックのバンドであるキャロル・グライムス・アンド・デリヴァリー[3]、そしてケヴィン・エアーズ・アンド・ザ・ホール・ワールド[4]のメンバーを務めた。

彼はソロ演奏と、ピアニストのスティーヴ・ミラー[5][6]や、ギタリストのG.F.フィッツ=ジェラルドとのデュエットで知られるようになった。

彼はウォータールー橋チャリング・クロス橋の間に架かるハンガーフォード橋の一部である古い歩道橋にてソロで大道芸的に演奏し、ジョニ・ミッチェルの歌「フォー・フリー」に大きな影響を与えたと考えられていた[7]

コックスヒルは、マイク・オールドフィールドモーガン・フィッシャーモット・ザ・フープル)、クリス・マクレガー英語版ブラザーフッド・オブ・ブレスとその音楽的系譜にあるデディケーション・オーケストラジャンゴ・ベイツダムドヒュー・メトカルフェデレク・ベイリーといったミュージシャンや、パフォーマンス・アート・グループのウェルフェア・ステート英語版などと共演した。

彼は、次のようなちょっとユーモラスな名前を持つ少人数編成の共同グループでしばしば演奏した。ジョニー・ロンド・デュオ・オア・トリオ(英語: Johnny Rondo Duo or Trio、ピアニストのデイヴ・ホランド(英語: Dave Holland同名ベーシストとは別人)と組んでいる)、メロディ・フォールトニー・コースティーヴ・ベレスフォードをフィーチャーした3人組なのに名前にはフォール=4)、およびレシデンツ(英語: The Recedents、意味は「後退者たち」。ギタリストのマイク・クーパー(英語: Mike Cooper)とパーカッショニストのロジャー・ターナー英語版と組んだバンド)は、メンバーが(コックスヒルの言葉で)「全員ハゲている」ので名づけられたと知られているが、その名はアメリカのバンドであるレジデンツのパロディかもしれない。通常、これらのバンドは、ボールルーム・ダンスの曲とポピュラー・ソングを散在させたフリー・インプロヴィゼーションをミックスして演奏した。彼の音楽にはユーモアがあったが、フリーの演奏は冗談ではないことを観客に伝える必要があると時々感じさせるものだった。

コックスヒルは、ブラックネル・ジャズ・フェスティバル英語版で何度か演奏しており、ミュージシャンとして、また談話家としても出演した。彼はよく「演奏しようとしていることが理解できないかもしれない」という言葉を使って自分の音楽を紹介した。ブラックネル英語版での公演に続いて、彼はメロドラマティックなモノローグの「Murder in the Air」(12インチ・シングル)をレコーディングした。

息子のサイモン・コックスヒル(英語: Simon Coxhill)は有名なパンクドラマーであり、とりわけAcme Sewage Co.と共演した[8]。娘のクレア・コックスヒル(英語: Claire Coxhill)はボーカリストであり、娘のマディ・コックスヒル(英語: Maddie Coxhill)はウクレレ・バンドで歌って演奏している[9]。CD『エキゾチック・ビートルズ 其の弐 (英語: The Exotic Beatles Part 2)』の1曲「アイ・アム・ザ・ウォルラス」には、3人の子供たち全員が父親と一緒に参加している[10]

ディスコグラフィ

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リーダー・アルバム

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  • 『イヤー・オブ・ザ・ビーホールダー』 - Ear of the Beholder (1971年、Dandelion)
  • Toverbal Sweet (1972年、Mushroom Records)
  • Miller/Coxhill (1973年、Caroline) ※with スティーヴ・ミラー
  • 『ストーリー・ソー・ファー/オー・リアリー?』 - The Story So Far...Oh Really! (1974年、Caroline) ※with スティーヴ・ミラー
  • Welfare State/Lol Coxhill (1975年、Caroline) ※with ウェルフェア・ステート・シアター・グループ
  • Fleas In Custard (1975年、Caroline) ※with G.F.フィッツ=ジェラルド
  • Diverse (1977年、Ogun)
  • The Joy of Paranoia (1978年、Ogun)
  • Lid (1978年、Ictus)
  • Digswell Duets (1979年、Random Radar Records)
  • 『スロー・ミュージック』 - Slow Music (1980年、Pipe Records) ※with モーガン・フィッシャー
  • Chantenay 80 (1981年、nato) ※with モーリス・ホルストフィス、レイモンド・ボニ
  • French Gigs (1983年、AAA) ※with フレッド・フリス
  • Instant replay (1983年、nato)
  • 『LOL COXHILL & 突然段ボール』 - Lol Coxhill & Totsuzen Danball (1983年、Wax Records TKCA-30119) ※with 突然段ボール
  • The Dunois Solos (1984年、nato)
  • Cou$cou$ (1984年、nato)
  • 10:02 (1985年、nato) ※with ダニエル・デシェイズ
  • The Inimitable (1985年、Chabada)
  • Café de la place (1986年、nato)
  • Before My Time (1987年、Chabada)
  • The Hollywell Concert (1990年、SLAM)
  • Halim (1993年、Nato) ※with パット・トーマス
  • Three Blokes (1994年、FMP) ※with スティーヴ・レイシーエヴァン・パーカー
  • One Night in Glasgow (1995年、Scatter) ※with パット・トーマス
  • 『LOL COXHILL & 突然段ボール2』 - Lol Coxhill & Totsuzen Danball 2 (1998年、Wax Records) ※with 突然段ボール
  • 『コックスヒル・オン・オガン』 - Coxhill On Ogun (1998年) ※コンピレーション
  • Xmas Songs (1998年、Rectangle)
  • Boundless (1998年、Emanem) ※with ヴェリアン・ウェストン
  • Alone and Together (1999年、Emanem)
  • Mouth (2001年、Fragile Noise) ※with マイク・ウォルター
  • Worms Organising Archdukes (2002年、Emanem) ※with ヴェリアン・ウェストン
  • Spectral Soprano (2002年、Emanem)
  • Milwaukee 2002 (2003年、Emanem)
  • Out to Launch (2003年、Emanem)
  • Duology (2003年、 Slam Productions) ※with ハワード・ライリー
  • Darkly (2006年、Ictus)
  • Darkly Again (2006年、Ictus)
  • 『エコーズ・オブ・デューンデン』 - Echoes of Duneden (2007年、Scatter) ※with G.F.フィッツ=ジェラルド、1975年録音
  • More Together Than Alone (2007年、Emanem)
  • The Early Years (2007年、Ping Pong)
  • Fine Tuning (2010年、Amirani)
  • Success with Your Dog (2010年、Emanem) ※with ロジャー・ターナー
  • The Rock On the Hill (2011年、Nato)
  • Old Sights, New Sounds (2011年、Incus) ※with アレックス・ウォード
  • Sitting On Your Stairs (2013年、Emanem) ※with ミシェル・ドネダ
  • Morphometry (2017年、Glo-Spot) ※with レイモンド・マクドナルド

メロディ・フォール

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  • Love Plays Such Funny Games (1984年)
  • The Melody Four? Si Señor! (1985年)
  • T.V.? Mais Oui! (1986年)
  • Hello! We Must Be Going (1987年)
  • Shopping For Melodies - Volume 1 (1988年)
  • Shopping For Melodies - Volume 2 (1988年)

レシデンツ

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  • Barbecue Strut (1987年) - Nato
  • Zombie Bloodbath On The Isle Of Dogs (1991年) - Nato
  • Wishing You Were Here (5CD Box set) (2014年) - Freeform Association

参加アルバム

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  • ケヴィン・エアーズ・アンド・ザ・ホール・ワールド : 『月に撃つ』 - Shooting at the Moon (1970年)
  • シャーリー・コリンズ・アンド・アルビオン・カントリー・バンド : No Roses (1971年)
  • ジュリエット・ローソン : Boo (1972年、Sovereign Records)
  • ヒュー・ホッパー : 『1984』 - 1984 (1973年)
  • デルロイ・ワシントン : Lonely Street (1973年、Count Shelly Records) ※サックス伴奏とソロ
  • ケヴィン・エアーズ : 『夢博士の告白』 - The Confessions of Dr. Dream and Other Stories (1974年)
  • ペニー・リンボ : The Death of Imagination (1975年、Red Herring Records)
  • ダムド : 『ミュージック・フォー・プレジャー』 - Music for Pleasure (1977年)
  • Various Artists : 『ミニチュアーズ』 - Miniatures: A Sequence of Fifty-One Tiny Masterpieces (1980年、Cherry Red Records) ※1曲のみ参加、モーガン・フィッシャー・プロデュース
  • ジョン・ オトウェイ&ワイルド・ウイリー・バレット : Way & Bar (1980年)
  • ワイルド・ウイリー・バレット : Krazy Kong Album (1980年) ※タイトル曲でのサックス・ソロ
  • Va Plus Haut : The Flying Padovanis (1982年) ※収録曲でのサックス・ソロ
  • Various Artists : 『ミニチュアーズ2』 - Miniatures 2: A Sequence of Sixty Tiny Masterpieces (2000年、Cherry Red Records) ※1曲のみ参加、モーガン・フィッシャー・プロデュース

フィルモグラフィ

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参考文献

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  • The Bald Soprano: A Portrait of Lol Coxhill by Jeff Nuttall. Nottingham, Tak Tak Tak, 1989.
  • The Sound of Squirrel Meals: The Work of Lol Coxhill edited by Barbara Schwarz, Black Press, 2006.

脚注

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  1. ^ ロル・コクスヒル」の表記もある
  2. ^ "Jazz breaking news: Saxophonist Lol Coxhill Dies Age 79", Jazzwise (website), 10 July 2012
  3. ^ Wynn, Ron. “Lol Coxhill: Biography”. Allmusic. 27 July 2010閲覧。
  4. ^ Smith, David Ross. “Kevin Ayers and the Whole World: Shooting at the Moon”. Allmusic. 27 July 2010閲覧。
  5. ^ Jones, Nic (28 August 2007). “Extended Analysis: Steve Miller/Lol Coxhill: The Story So Far...Oh Really?”. All About Jazz. http://www.allaboutjazz.com/php/article.php?id=26761 27 July 2010閲覧。. 
  6. ^ Kelman, John (24 July 2007). “Cd/LP Review: Miller/Coxhill Coxhill/Miller / "The Story So Far..." "...Oh Really?"”. All About Jazz. http://www.allaboutjazz.com/php/article.php?id=26385 27 July 2010閲覧。. 
  7. ^ Walters, John L (11 July 2012). “Guardian obituary”. The Guardian (London). https://www.theguardian.com/music/2012/jul/11/lol-coxhill 11 July 2012閲覧。 
  8. ^ ACME SEWAGE CO”. www.boredteenagers.co.uk. 20 March 2018閲覧。
  9. ^ Feather, the late Leonard; Gitler, Ira (2007) (英語). The Biographical Encyclopedia of Jazz. Oxford University Press. ISBN 9780199886401. https://books.google.co.uk/books?id=KEHGs88c-aAC&pg=PT341&lpg=PT341&dq=lol+Coxhill+son+simon&source=bl&ots=7UF-IPlWF1&sig=3fuNVftfwAPra9fQ7zTqBCDXaWQ&hl=en&sa=X&ved=0ahUKEwirmre64fvZAhVKDcAKHfvkDnoQ6AEIajAO#v=onepage&q=lol%20Coxhill%20son%20simon&f=false 
  10. ^ The Exotic Beatles, Pt. 2 - Various Artists | Songs, Reviews, Credits | AllMusic”. AllMusic. 20 March 2018閲覧。

外部リンク

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