ロリス科(ロリスか、Lorisidae)は、哺乳綱霊長目に分類される科。オランダ語で道化師を意味するLorisが名の由来である[4]

ロリス科
アカスレンダーロリス
アカスレンダーロリス Loris tardigradus
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 霊長目 Primates
亜目 : 曲鼻亜目 Strepsirrhini
下目 : ロリス型下目 Lorisiformes
: ロリス科 Lorisidae
学名
Lorisidae Gray, 1821[1][2]
和名
ロリス科[3]

分類

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原記載ではLoridaeだったが[2]、Lorisidaeという学名が多く用いられるようになってしまった[1]。2002年にICZNの強権により、引き続きLorisidaeを使用することが認められた[1]

キツネザル型下目に分類し、ガラゴ科と共にロリス上科Lorisoideaを設ける説もある[5]

以前はガラゴ科に分類される種も含めており、ガラゴ亜科Galaginaeとして分類されていた[2]。アジアに分布する属をロリス亜科Lorisinae、アフリカに分布する属をポト亜科Perodicticinaeに分類する説もある[6]

本科の系統関係に関しては、分子系統解析で本科が単系統群であることを強く支持する解析がなく2015年の時点では定説がない[6]。一例として2015年に発表されたロリス型下目86標本のミトコンドリアDNAのシトクロムbでは、ガラゴ科・ロリス亜科・ポト亜科がそれぞれ単系統群であることが強く支持された[6]。一方でアフリカに分布する2属(ポト亜科)がガラゴ科に近縁という解析結果が得られてしまい、本科が偽系統群という解析結果が得られた[6]。この解析では分岐年代が37,850,000年前(42,400,000 - 32,960,000年)と古い解析結果が得られたことから、ポト亜科を独立した科とすることも示唆されている[6]

ポトの亜種を独立種とする説もある。上記と同じく2015年に発表された本科のミトコンドリアDNAのシトクロムbの分子系統解析では、分岐年代が5,000,000年前以上であるとしてヒガシポトP. ibeanus・ミルンエドワードポトP. edwardsiを分割する説が支持された[6]。1996年には産地不詳の2標本をもとにニセポトPseudopotto martiniが記載されているが、ポト属の範囲に含めるなど分類に定説がない[1]

スローロリス属に繋がる系統では、レッサースローロリスがほかのスローロリス属の姉妹群となることが推定されている[6]。2022年にはレッサースローロリスのみで構成される新属Xanthonycticebusが提唱された[7]

以下の分類は、レッサースローロリスについてはNekaris & Nijman (2022) に従い[7]、そのほかの分類・和名・英名は、日本モンキーセンター和名リスト (2024) に従う[3]

脚注

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  1. ^ a b c 旧ボルネオスローロリスN. menagensisから分割[8]
  2. ^ 旧スローロリスN. coucangから分割[1]
  3. ^ スンダスローロリスから分割[8]
  4. ^ スンダスローロリスから分割[9]N. javanicusN. ornatusの2種に分割する説もある[9]
  5. ^ スンダスローロリスから分割(旧ボルネオスローロリス)[9]
  6. ^ X. pygmaeus(Southern pygmy loris)・X. intermedius(Northern pygmy loris)の2種に分割する説もある[10]

出典

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  1. ^ a b c d e Colin P. Groves, "Order Primates," Mammal Species of the World, (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Volume 1, Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 111 - 184.
  2. ^ a b c 岩本光雄 「サルの分類名(その8:原猿)」『霊長類研究』第5巻 2号、日本霊長類学会、1989年、129 - 141頁。
  3. ^ a b 日本モンキーセンター霊長類和名編纂ワーキンググループ 「日本モンキーセンター 霊長類和名リスト 2024年7月版」(公開日2024年8月15日・2024年9月9日閲覧)
  4. ^ 新村出 編『広辞苑』(第六版)岩波書店、東京都千代田区一ツ橋2-5-5、2008年1月11日、3014頁。ISBN 978-4-00-080121-8 
  5. ^ 相見滿・小山直樹 「キツネザル類はどのように分類されてきたか」『霊長類研究』第22巻 2号、日本霊長類学会、2006年、97 - 116頁。
  6. ^ a b c d e f g Luca Pozzi et al., "Remarkable ancient divergences amongst neglected lorisiform primates," Zoological Journal of the Linnean Society, Volume 175, Issue 3, 2015, Pages 661 - 674.
  7. ^ a b K. Anne-Isola Nekaris & Vincent Nijman, “A new genus name for pygmy lorises, Xanthonycticebus gen. nov. (Mammalia, primates),” Zoosystematics and Evolution, Issue 98, Number 1, 2022, Pages 87–92.
  8. ^ a b Rachel A. Munds, K. A. I. Nekaris & Susan M. Ford, “Taxonomy of the Bornean Slow Loris, With New Species Nycticebus kayan (Primates, Lorisidae),” American Journal of Primatology, Volume 75, Issue 1, Wiley, 2013, Pages 46-56.
  9. ^ a b c K.A.I. Nekaris & S. Jaffe, “Unexpected diversity of slow lorises (Nycticebus spp.) within the Javan pet trade: Implications for slow loris taxonomy,” Contributions to Zoology, Volume 76, Issue 3, Brill, 2007, Pages 187–196.
  10. ^ Mary E. Blair, Giang T.H. Cao, Elora H. López-Nandam, Daniel A. Veronese-Paniagua, Mark G. Birchette, Marina Kenyon, Badrul M. Md-Zain, Rachel A. Munds, K. Anne-Isola Nekaris, Vincent Nijman, Christian Roos, Hoàng M. Thach, Eleanor J. Sterling & Minh D. Le, “Molecular Phylogenetic Relationships and Unveiling Novel Genetic Diversity among Slow and Pygmy Lorises, including Resurrection of Xanthonycticebus intermedius,” Genes, Volume 14, Issue 3, Number 643. MDPI, 2023.

関連項目

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