モスカーリ人
モスカーリ人(モスカーリじん、ウクライナ語:моска́ль;ベラルーシ語:маскаль;ポーランド語:Moskal;意訳:「モスクワ人」)は、中世後期以来、ウクライナ人・ベラルーシ人・リトアニア人・ポーランド人の間で用いられるロシア人の外名である。ロシア人の蔑称、または皮肉っぽい呼称。文脈によってロシア軍の兵士を意味することもある。
概要
編集「モスカーリ人」という用語は、ロシア人の初国家であるモスクワ大公国に由来する。ルーシとルーシ人と無関係な人たちであることを意味する。
本来は、中立的な概念であったが、18世紀末にウクライナ・ベラルーシ・リトアニア・ポーランドなどがロシア帝国の支配下に置かれると、ロシア軍の将兵をさすようになり、否定的な意味を持つようになった。
現在、ウクライナを初め、東欧諸国においてロシア人の蔑称、あるいは皮肉っぽい呼称として用いられる。ロシア極東においても西部のロシア人、特にモスクワの住民に対して使用されることもある。 また、ウクライナ語での「モスカーリ」という単語は、とても辛いニンニク、ホシカメムシ、ゴキブリ、そして冷たい北の風をさすことがある。
諺
編集ウクライナ語ではモスカーリ人について沢山の諺が存在する。
- 鬼とモスカーリ人はビールを造ろうとしたところ、モスカーリ人に麦芽が盗まれた。
- Варив чорт з москалем пиво, та й солод у чорта пропав.
- モスカーリ人にドアを指しても、窓から入る。
- Ти москаля в двері, а він у вікно лізе.
- モスカーリ人と仲良くしても、懐で武器を用意しなければならない。
- З москалем дружи, а камінь за пазухою держи.
- モスカーリ人は貧しくても、野心が大きい。
- У москаля на грош амуніції, на десять амбіції.
- モスカーリ人が「法律だ!」と言っても、その法律に従わない。
- Казав москаль право, та й збрехав браво.
- 「父上、鬼が家に攻め込みましたよ!」-「大丈夫!モスカーリ人ではないから!」
- «Тату, тату, лізе чорт у хату» — «Дарма, аби не москаль».
名字
編集「モスカーリ人」という用語に由来するウクライナ人の名字が存在する。例えば、
- モスカーリ Москаль(ロシア人・兵士)
- モスカリチューク Москальчук(ロシア人・兵士の召使)
- モスカレーンコ Москаленко(ロシア人・兵士の子)
などである。
関連項目
編集外部リンク
編集- М. Номис. Українські приказки, прислів'я і таке інше / Київ. — № 4, 1991. С. 143—144
- Євген Наконечний. Украдене ім'я, чому русини стали українцями