モスカーリ人(モスカーリじん、ウクライナ語моска́льベラルーシ語маскальポーランド語Moskal;意訳:「モスクワ人」)は、中世後期以来、ウクライナ人ベラルーシ人リトアニア人ポーランド人の間で用いられるロシア人外名である。ロシア人の蔑称、または皮肉っぽい呼称。文脈によってロシア軍兵士を意味することもある。

タラス・シェフチェンコ作「カテルィーナ」(油絵、1842年)。「カテルィーナ」物語詩をモチーフにした作品。ウクライナの娘カテルィーナはロシア人の将校(モスカーリ人)に遊ばれ捨てられた。19世紀のウクライナ・ロシア関係の象徴。

概要

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「モスカーリ人」という用語は、ロシア人の初国家であるモスクワ大公国に由来する。ルーシルーシ人と無関係な人たちであることを意味する。

本来は、中立的な概念であったが、18世紀末にウクライナベラルーシリトアニアポーランドなどがロシア帝国の支配下に置かれると、ロシア軍将兵をさすようになり、否定的な意味を持つようになった。

現在、ウクライナを初め、東欧諸国においてロシア人の蔑称、あるいは皮肉っぽい呼称として用いられる。ロシア極東においても西部のロシア人、特にモスクワの住民に対して使用されることもある。 また、ウクライナ語での「モスカーリ」という単語は、とても辛いニンニクホシカメムシゴキブリ、そして冷たい北のをさすことがある。

 
オセレーデツィを持つウクライナ・コサックをモチーフにしたウクライナのTシャツ。「神様、ありがとう!モスカーリ人に生まれなくてよかった」と書いてある。

ウクライナ語ではモスカーリ人について沢山の諺が存在する。

  • 鬼とモスカーリ人はビールを造ろうとしたところ、モスカーリ人に麦芽が盗まれた。
    Варив чорт з москалем пиво, та й солод у чорта пропав.
  • モスカーリ人にドアを指しても、から入る。
    Ти москаля в двері, а він у вікно лізе.
  • モスカーリ人と仲良くしても、懐で武器を用意しなければならない。
    З москалем дружи, а камінь за пазухою держи.
  • モスカーリ人は貧しくても、野心が大きい。
    У москаля на грош амуніції, на десять амбіції.
  • モスカーリ人が「法律だ!」と言っても、その法律に従わない。
    Казав москаль право, та й збрехав браво.
  • 「父上、鬼が家に攻め込みましたよ!」-「大丈夫!モスカーリ人ではないから!」
    «Тату, тату, лізе чорт у хату» — «Дарма, аби не москаль».

名字

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「モスカーリ人」という用語に由来するウクライナ人の名字が存在する。例えば、

  • モスカーリ Москаль(ロシア人・兵士)
  • モスカリチューク Москальчук(ロシア人・兵士の召使)
  • モスカレーンコ Москаленко(ロシア人・兵士の子)

などである。

関連項目

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外部リンク

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