マサチューセッツ州会議事堂

ボストンの建築物

マサチューセッツ州会議事堂(マサチューセッツしゅうかいぎじどう、Massachusetts State House)は、アメリカ合衆国マサチューセッツ州の州知事室、州政府の事務所、および州議会を擁する建物。同州の州都ボストン市の中心部、ビーコンヒル地区に位置する[3][4]。マサチューセッツ州議会およびマサチューセッツ州知事のオフィスを所有している。著名な建築家チャールズ・ブルフィンチにより設計され、1798年に完成し、以降繰り返し増築されている。フェデラル様式の名作の1つ、ブルフィンチの代表作の1つとされ、アメリカ合衆国国定歴史建造物に認定されている[5]

マサチューセッツ州会議事堂
Massachusetts State House
マサチューセッツ州会議事堂
マサチューセッツ州会議事堂の位置(ボストン内)
マサチューセッツ州会議事堂
所在地アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン
座標北緯42度21分29.4秒 西経71度3分49.3秒 / 北緯42.358167度 西経71.063694度 / 42.358167; -71.063694座標: 北緯42度21分29.4秒 西経71度3分49.3秒 / 北緯42.358167度 西経71.063694度 / 42.358167; -71.063694
建設1795年-1798年
建築家
建築様式フェデラル
所属ビーコンヒル歴史地区 (#66000130)
NRHP登録番号66000771
指定・解除日
NRHP指定日1966年10月15日[1]
NHL指定日1960年12月19日[2]
CP指定日1966年10月15日
1862年頃、翼壁が追加される前。当初、銅のドームは岩のような灰色であったが、1872年、金色に塗装された。
ビーコン・ストリート沿いの正門。
1827年、アレキサンダー・ジャクソン・デイヴィス画。
2013年のワールドシリーズにおけるボストン・レッドソックスの優勝を祝福。

建物概要

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マサチューセッツ州会議事堂はボストンのビーコンヒルの丘の頂上、ボストンコモンのビーコン・ストリートを挟んだ北側の6.7エーカー(約27,000m2)の敷地に建っている。マサチューセッツ州初代知事ジョン・ハンコックがこの土地を所有していた。

それまでのコート・ストリートの州会議事堂に代わる庁舎として建てられ、1798年に完成した、周辺で最も古い建物である。建築家チャールズ・ブルフィンチがロンドンにあるウィリアム・チェンバーズサマセット・ハウスおよびジェイムズ・ワイアットのパンセオンを参考に設計した[6][7]

1895年、地元のチャールズ・ブリガムによる設計で大幅な増築がなされた[8]

1917年、スタージス・ブライアント・チャップマン&アンドリュースによる設計で東西の翼壁が完成した[9]

2016年7月、チャーリー・ベイカー知事は西側の300平方フィート (28 m2)の芝地の地役権をコンドミニアムに売却することを議会に提案した。かつてジョン・ハンコックが所有していた牧草地であり、オペア・ユニットとして使用されることが議論となっている[10]

ドーム

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建物のシンボルである屋根のドームは木製で、金箔が張られている。しかし、最初から金箔張りであったわけではない。最初、1802年に張られたのはポール・リビアのリビア・コッパー・カンパニーのであった。リビアはアメリカの銅メッキ製造の先駆者であった。

当初、ドームは灰色、その後に薄黄色に塗られた。1874年、ドームに金箔が張られ、現在の姿になった。しかし第二次世界大戦の最中、敵機による爆撃を避けるため、一時的にドームが黒または灰色に塗られていた。1997年、30万ドル以上をかけ、24金を張り直した。

ドームの頂上にはマツの実を模した飾りがつけられている[11]。これは、植民地時代初頭のボストンの製材業の重要性および当時マサチューセッツ湾植民地の飛び地であったメイン州を表してい る。

庁舎の入り口にはジョセフ・フッカーの騎馬像、ダニエル・ウェブスターホーレス・マンジョン・F・ケネディなどの像が立ち並んでいる。アン・ハッチンソンメアリ・ダイアーの像は東西の翼壁の芝地に位置している。

館内

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最初からあった赤レンガ造りの建物には知事室とマサチューセッツ州上院が入っている。知事室は西端に、上院はドームの直下にそれぞれ位置している。マサチューセッツ州下院は増築されたほうの建物の西側に入っている。下院の会議場には1784年に地元の商人から贈られた「聖なるタラ英語版」が飾られている。この「聖なるタラ」は初期のマサチューセッツ州経済における漁業の重要性を示すものである[12]

ドーム下の2階はエドワード・ブロドニーによる壁画が描かれている[13]。1936年、ブロドニーは公共事業促進局によるコンテストで優勝し、最初の壁画『Columbia Knighting Her World War Disabled 』を描くことになった。経済的にモデルを雇うことができず、友人や家族にポーズをとってもらって描いた。コロンビアのモデルは姉妹のノーマ・ブロドニー・コウエン、手前の片足の兵士のモデルは兄弟のフレッド・ブロドニーである。1938年、2つめの壁画『World War Mothers 』を描いた。再び友人や家族が主なモデルとなり、母サラ・ブロドニーの隣にノーマが座ってモデルを務めた[14]。『ニューヨーク・タイムズ』紙はこの壁画に関して、戦争関連の芸術作品で女性が主題となっている珍しい作品であると記した。

ビーコン・ストリートから館内のドリック・ホールに向かい階段が続いている。ドリック・ホールの大きなメインのドアは以下の3回しか開けられない[15]

  1. アメリカ合衆国大統領または各国首脳訪問時。
  2. 州知事任期最終日の退出時。この伝統は「ロング・ウォーク」と呼ばれ、1人で執行部室を出て2階へ下り、ドリック・ホールを通り、正面玄関から出る。その後階段を下ってビーコン・ストリートを渡り、ボストンコモンに入ることでマサチューセッツ州の一般市民となることを示す。ただしこの伝統は近年中断されている。1997年7月29日、ウィリアム・ウェルドの退任日、階段を下りる途中に後任のA・ポール・セルッシと面会した。4年後の2001年4月10日、セルッシの退任日には議事堂正面の改修により階段が使用できなかった。2003年1月2日、州知事代理のジェーン・スウィフトは家族と共に階段を下り、バークシャー山脈に向かった。2007年1月4日、ミット・ロムニーの退任日、後任のディヴァル・パトリックは階段上で就任の宣誓を行なったため、ロムニーのロング・ウォークは前日に行われた[16]
  3. 軍旗が戦闘から戻った時。現在軍旗はワシントンD.C.にあり、ベトナム戦争以降行われていない。

近年、サミュエル・アダムズポール・リビアタイムカプセルが館内で発見された。

歴史

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旧州会議事堂

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旧州会議事堂

旧州会議事堂(Old State House)は1713年に建てられ、80年以上にわたって使用されていた歴史的建造物である。ボストン市内のワシントン通り(Washington Street)とステート通り(State Street)の角に位置する。

建てられた当初は、1階が通商取引所、地下は倉庫になっていた。2階は3部に分かれ、東側は総督の執務室に、西側はマサチューセッツ植民地の最高裁判所にそれぞれなっていた。中ほどは植民地議会の会議場になっていた。この会議場は回廊に飾られた、議員の肖像画をはじめとする数々の絵画でも知られていた。

1761年弁護士のジェームス・オティス(James Otis)がここで裁判を起こした。裁判には負けたものの、裁判中に行ったオティスの弁論は後に独立戦争へとつながるものであった。1776年7月18日、この建物の東側のバルコニーで、アメリカ独立宣言が群集に向けて高らかに読み上げられた。

独立戦争後20年ほどの間、この建物はマサチューセッツ州の州会議事堂として使われた。1798年に州会議事堂は現在の位置に移設されたが、その後1830年から1841年にかけてボストンの市庁舎として使用された後、この建物は商用に転用された。1881年、この建物を解体してシカゴに移設する計画が持ち上がったが撤回され、外観の修復がなされた。

現在では、旧州会議事堂は博物館となっており、フリーダムトレイルに沿ったボストンの観光名所のひとつとなっている。同建物内にはボストン・ソサイエティ(The Bostonian Society)の本部も置かれている。また、州内のウェイマス市庁舎や、ボストン郊外のミルトン(Milton)にキャンパスを構えるカリー・カレッジ(Curry College)の学生寮のうちの1棟は、この旧州会議事堂のレプリカである。

現在の州会議事堂

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現在のマサチューセッツ州会議事堂

現在の州会議事堂は、旧州会議事堂に代わる庁舎として1798年に建設されたものである。しかし次第にこのレンガ造りの庁舎が手狭になったため、州の中央部に州都を遷都し、新たな州会議事堂を建設する提案が持ち上がった。しかしその提案は実行されず、庁舎は4度にわたって増築されることになった。

最初の増築は1831年に行われ、建物の後部が拡張された。その後チャールズ・ブリガム(Charles Brigham)によって、1853-56年1889-95年の2度にわたる増築が行われ、このときにマサチューセッツ州下院が増築されたほうの建物に移転した。4度目の増築となる1914-17年には、もとの庁舎の東西がそれぞれ拡張された。

庁舎の外観も数回にわたって変わった。1825年には建物全体が白く塗られた。その30年後、1855年には黄金色に塗り替えられた。4度目の増築の際に、庁舎は白く塗り直された。1928年、それまでの塗装が全て剥がされ、もとの赤レンガの色に戻った。その後塗装は行われず、現在でも赤レンガそのものの色が残っている。

建物だけでなく、ドームの色もまた数回にわたって変わっていった。1802年に銅で覆われた後、ドームは灰色と薄黄色に塗られた。1831年にはドームが灰色に塗り替えられた。ドームに金箔が張られ、現在の姿になったのは1874年のことである。しかし第二次世界大戦の最中、敵機による爆撃を避けるため、一時的にドームが灰色に塗られていた。

2001-02年にかけて、庁舎には大掛かりな外観修復工事がなされた。

文学

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1858年出版のオリバー・ウェンデル・ホームズ・シニアの書籍『朝食テーブルの独裁者英語版』の「ボストンの州議事堂は太陽系の中心である」との記載から、「宇宙(または世界)の中心」がボストンのニックネームの1つとなった[17][18]

映画

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1982年の映画『評決』の裁判所および病院のシーンが州議事堂内部で撮影された。

2006年の映画『ディパーテッド』において、コリン・サリバン(マット・デイモン)の野心の象徴として州議事堂が登場する。

ビデオ・ゲーム

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2013年、『The Last of Us』において外装および内装が登場する。所々崩壊した建物を通っていく。

2015年、ベセスダ・ソフトワークスの『Fallout 4』に登場する。

ギャラリー

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関連項目

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脚注

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  1. ^ National Park Service (15 March 2006). "National Register Information System". National Register of Historic Places. National Park Service. {{cite web}}: Cite webテンプレートでは|access-date=引数が必須です。 (説明)
  2. ^ Massachusetts Statehouse”. National Historic Landmark summary listing. National Park Service. 2009年1月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年7月6日閲覧。
  3. ^ Neighborhoods: Downtown”. City of Boston. October 2014閲覧。
  4. ^ Electoral Maps”. Boston Redevelopment Authority. October 2014閲覧。
  5. ^ NHL nomination for Massachusetts State House”. National Park Service. 2015年2月22日閲覧。
  6. ^ Shand-Tucci, Douglass. Built in Boston: City and Suburb, 1800-2000, p. 6. University of Massachusetts Press, Amherst, 1999. ISBN 1-55849-201-1.
  7. ^ Whiffen, Marcus, and Koeper, Frederick. American Architecture, 1607-1976. Routledge (1981), p. 110. ISBN 0-7100-0813-9.
  8. ^ A Guide to the Massachusetts State House”. Mass.Gov. 8 June 2015閲覧。
  9. ^ Exterior Tour
  10. ^ Phillips, Frank (2016年7月21日). “Baker wants to sell part of State House lawn”. The Boston Globe. https://www.bostonglobe.com/metro/2016/07/20/baker-seeks-sell-sliver-state-house-lawn-luxury-condo-complex/yI2dAxHg6B9I9PtzcRoVzO/story.html 2016年7月21日閲覧。 
  11. ^ Massachusetts State House”. 2016年7月21日閲覧。
  12. ^ Massachusetts State House, via cityofboston.gov
  13. ^ Martin, Douglas (2002年8月19日). “Edward Brodney, 92, Who Painted War Scenes”. The New York Times. https://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?res=9501E2D9103DF93AA2575BC0A9649C8B63 2008年10月21日閲覧。 
  14. ^ Boston Women's Heritage Trail”. 2009年11月26日閲覧。
  15. ^ Massachusetts Facts Part 3, The State House, Doric Hall”. Office of the Secretary of the Commonwealth of Massachusetts. 20 January 2017閲覧。
  16. ^ “Patrick Vows Inclusion in Inaugural Address”. The Boston Globe. (January 5, 2007). http://www.boston.com/news/local/articles/2007/01/05/patrick_vows_inclusion_in_inaugural_address 
  17. ^ “Boston's nicknames: Beantown, Hub, the Walking City”. The Boston Globe. (August 10, 2006). http://www.boston.com/travel/boston/boston_nicknames/ 
  18. ^ Holmes, Oliver Wendell (1858). The Autocrat of the Breakfast-Table. Phillips, Sampson and Company ; Holmes, Oliver Wendell (1891) [1858]. The Autocrat of the Breakfast-Table. Houghton, Mifflin and Company  p. 172

参照

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参考文献

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  • Arthur Milnor Bridgman. A Souvenir of Massachusetts legislators. Stoughton, Mass.: A.M. Bridgman, 1908.
  • Harold Kirker. Architecture of Charles Bulfinch. Cambridge, MA: Harvard University Press, 1969.

外部リンク

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地図

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先代
ボストンコモン
ボストンのフリーダムトレイル沿いの名所
マサチューセッツ州会議事堂
次代
パークストリート教会