ボートル・スケール

夜空の明るさの指標
NELM[注釈 1]とボートルスケールの対比表[1]
NELM ボートルスケール
>=7.5 1
7.0 - 7.5 2
6.5 - 7.0 3
6.0 - 6.5 4
5.5 - 6.0 5
5.0 - 5.5 6
4.5 - 5.0 7
4.0 - 4.5 8
<4.0 9

ボートル・スケール (The Bortle scale ) は、ある地域の夜天光の明るさを測るための9段階の数値スケールである。どの程度の明るさの天体が観測できるか、また光害の悪影響がどのくらいあるかを計量することができる。

アメリカのアマチュア天文家ジョン・E.ボートルによって、スカイ&テレスコープ誌2001年2月号に、アマチュア天文家天体観測場所の空の暗さを評価するのを助け、また観測地毎の空の暗さを比較するための尺度として公表された。ボートル・スケールは、地球上で最も暗い夜空であるクラス1から都市中心部のクラス9までの9段階で示され、肉眼で見ることができる星の明るさ(NELM)の目安にもなる[2]

ただし最近の研究においては、スケールの精度と有用性が疑問視されている[3]

階級表

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以下の表は、ボートルの記述の要約である。クラス4とクラス5のように一部の階級は、隣の階級とは大幅に異なる場合がある。

クラス タイトル NELM SQM 描写
1 優れた光害フリーの土地 7.6-8.0 21.75–22.0
2 代表的な真に空が暗い土地 7.1-7.5 21.6–21.75
  • 黄道光は夕暮れと夜明けに、影を投げかけるように明確に、十分に帯黄色で明るい。
  • 大気光は地平線近辺に弱く見ることができる
  • 雲は空に開いた暗い穴としてのみ見ることができる
  • 周辺は空に対しての影としてかすかに見ることができる
  • 夏の天の川は高度に構造的に見える
  • 多くのメシエ天体や球状星団を肉眼で見ることができる
  • さんかく座銀河は肉眼で簡単に見える
  • 12.5インチ口径反射望遠鏡の限界等級は16.5
3 田舎の空 6.6-7.0 21.3–21.6
  • 黄道光は春と秋に著しい。また、色はまだ目に見える
  • いくつかの光害が地平線に現れる
  • 雲は地平線近くで照らし出され、頭上では暗い
  • 近くの周辺はかすかに見ることができる
  • 夏の天の川はまだ複雑に見える
  • M15M4M5M22などの球状星団は肉眼で見ることができる
  • さんかく座銀河はそらし目を使えば容易に見ることができる
  • 12.5インチ口径反射望遠鏡の限界等級は16
4 田舎と郊外の境 6.1-6.5 20.8–21.3
  • 黄道光はまだ見ることができるが、夕暮れと夜明けの頃の天頂への半ば辺りでは存在しない
  • いくつかの方角に目に見える光害のドームがある
  • 雲は光源のある方向で照らし出され、頭上では暗い
  • 周辺は距離があってもはっきり見ることができる
  • 天の川は地平線上でまだ印象的だが、形状は欠けている
  • さんかく座銀河は、そらし目でも難しく、空の高い位置にあるときのみ見ることができる
  • 12.5インチ口径反射望遠鏡の限界等級は15.5
5 郊外の空 5.6-6.0 19.25–20.3
  • 秋か春の条件の良い夜のみ黄道光の兆候が見える
  • 光害はほとんどの方向で見られる
  • 雲は空よりも顕著に明るい
  • 天の川は地平線近くでは非常にかすかか全く見えず、頭上では押し流されたように見える
  • 12.5インチ口径反射望遠鏡の限界等級は15
6 明るい郊外の空 5.1-5.5 18.5–19.25
  • 黄道光は見ることができない
  • 光害は地平線から35°までの空を灰白色に照らしている
  • 雲は空のどこにあってもはっきり明るく現れる
  • 周辺は容易に見ることができる
  • 天の川は天頂近辺でのみ見える
  • さんかく座銀河は見えず、アンドロメダ銀河は控えめに見える
  • 12.5インチ口径反射望遠鏡の限界等級は14.5
7 郊外と都市部の境 4.6-5.0 18.00–18.5
  • 光害が空全体を薄灰色にしている
  • 強い光源が四方八方にはっきり現れている
  • 雲は明々と照らされている
  • 天の川は見ることができない
  • アンドロメダ銀河とプレセペ星団は感じ取られるだろうが、形状はわからない
  • 望遠鏡を通すと、最も明るいメシエ天体は青白い影に見える
  • 12.5インチ口径反射望遠鏡の限界等級は14
8 都市部の空 4.1-4.5 <18.00
  • 空は灰色またはオレンジに照らされている - 容易に読書できる
  • よく知られた星座の形を形作る星はかすかに見えるか、または見ることができない
  • アンドロメダ銀河とプレセペ星団は、良い条件の夜に経験ある観測者によってかろうじて感じ取られる
  • 望遠鏡を以てすら、最も明るいメシエ天体しか検出できない
  • 12.5インチ口径反射望遠鏡の限界等級は13
9 都心部の空 4.0
  • 空は明々と照らされている
  • 星座を形作る多くの星、かすかな星座の多くは見ることができない
  • プレアデス星団を除くメシエ天体は肉眼では見ることができない
  • 惑星と、幾つかの明るい星団以外は観測できない

関係項目

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南カリフォルニア郊外で10秒間の露出で撮影されたいて座方向の写真では、光害が星と天の川を覆い隠している

外部リンク

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脚注

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注釈

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  1. ^ 肉眼で見ることができる星の明るさ

出典

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  1. ^ Bortle Dark Sky Scale”. 2023年11月17日閲覧。
  2. ^ a b Bortle, John E. (February 2001). “The Bortle Dark-Sky Scale”. スカイ&テレスコープ. Sky Publishing Corporation. 2007年6月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年6月10日閲覧。
  3. ^ Crumey, Andrew (2014-08-11). “Human contrast threshold and astronomical visibility”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 442 (3): 2600–2619. doi:10.1093/mnras/stu992. ISSN 0035-8711. https://doi.org/10.1093/mnras/stu992.