ホンシメジ(本占地[2]・本湿地[3]学名: Lyophyllum shimeji )はシメジ科シメジ属キノコ。別名ダイコクシメジ(大黒占地)。「香りマツタケ、味シメジ」で知られる中・大型の食用キノコの一種で、シメジとよばれるキノコは多数あるが、これこそが本物のシメジということからホンシメジの和名が名付けられている[4]。単にシメジ(占地)ということもあるが、これは混乱を招く呼び方である(詳細はシメジを参照)。地域により、クロシメジ、カブシメジ、タイコクシメジなどの地方名でもよばれる[5]

ホンシメジ
分類
: 菌界 Fungi
: 担子菌門 Basidiomycota
亜門 : ハラタケ亜門 Agaricomycotina
: ハラタケ綱 Agaricomycetes
亜綱 : ハラタケ亜綱 Agaricomycetidae
: ハラタケ目 Agaricales
: シメジ科 Lyophyllaceae
: シメジ属 Lyophyllum
: ホンシメジ L. shimeji
学名
Lyophyllum shimeji (Kawam.) Hongo
和名
ホンシメジ(本占地/本湿地)
菌床栽培品
ほんしめじ 生[1]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 52 kJ (12 kcal)
2.8 g
食物繊維 1.9 g
0.4 g
2.5 g
ビタミン
チアミン (B1)
(6%)
0.07 mg
リボフラビン (B2)
(23%)
0.28 mg
ナイアシン (B3)
(34%)
5.1 mg
パントテン酸 (B5)
(32%)
1.59 mg
ビタミンB6
(15%)
0.19 mg
葉酸 (B9)
(6%)
24 µg
ビタミンD
(4%)
0.6 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
1 mg
カリウム
(7%)
310 mg
カルシウム
(0%)
2 mg
マグネシウム
(2%)
8 mg
リン
(11%)
76 mg
鉄分
(5%)
0.6 mg
亜鉛
(7%)
0.7 mg
(16%)
0.32 mg
他の成分
水分 93.6 g
水溶性食物繊維 0.3 g
不溶性食物繊維 1.6 g

別名: だいこくしめじ。試料: 栽培品及び天然物。廃棄部位: 柄の基部(いしづき)。エネルギー: 暫定値
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

分布・生態

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日本固有種[6][7]

外生菌根菌[3]。秋になると、アカマツが混じるコナラなどの雑木林に発生し、毎年同じ場所に生える[8][2]。これらの樹木に菌根をつくって生活し、子実体は地上に単生したり、大きな株になって群生するものがある[4][2]。ときに菌輪を形成することもある[4]。落ち葉や下草など有機物の少ない貧栄養の森に発生し、炭焼き小屋の周囲に出ることが知られている[3]。まれにシイカシ林に生える[2]。手入れされなくなって里山が荒れてくると発生が少なくなる[5]

形態

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傘は高さ3 - 10センチメートル (cm) [4]。初め半球形からまんじゅう形(丸山形)で、後に平らに開く[4]。色は暗灰褐色(ねずみ色)から淡灰褐色で[3]、細かい白色のかすり模様があり、傘の中央の灰色は濃い[4]。表面はなめらか[3]。ヒダはやや密で、白色から淡黄色をしており、柄に湾生または直生する[3][2]。柄は長さ3 - 13 cmあまりで[4]、白色、下部がとっくり状に膨らむ[3]。肉は白色で、緻密で美味[3]。菌株により異なるが、菌糸の成長温度は5 - 32℃で、最適温度は25 - 26℃。子実体の発生温度は15℃前後[9]

分類

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従来ホンシメジの属しているシメジ属はキシメジ科に属していたが[4]、分子系統解析の発達によって現在では独立したシメジ科に属するとされている。シャカシメジハタケシメジは本種の近縁種で、どちらも優れた食用菌として知られる。

名称の混乱

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かつて「ホンシメジ」という名で日本全国に流通していたキノコの多くは、本種ではなくブナシメジの栽培品であった[3]20世紀末ごろからは消費者を誤解させるおそれがあるとして、ブナシメジをホンシメジと称して販売するこの慣習は改められている。

食用

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「香りマツタケ、味シメジ」と言われるように、キノコのなかでも有数の強いうまみを持つ優れた食用菌として知られる[3]。野生ものの採取時期は、初秋から晩秋にかけて[4]。クセがなく、味、風味とも群を抜き、緻密な肉質で歯切れや舌触りも高いと評されている[3][5]。稀少な高級キノコでどんな料理にも合うが[5]、多量に含まれるグルタミン酸などの旨み成分を生かして、鍋物汁物などの和風料理には最適で[3]、薄味で仕上げたほうがホンシメジの味のよさが生きてくる[4][2]。湯がいて下処理をし、澄まし汁味噌汁、生で土瓶蒸し天ぷら卵とじ、鶏肉の煮物、炊き込みご飯などに向く[4]

人工栽培

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菌根菌であるため、マツタケ同様に人工栽培は困難とされてきたキノコであるが、子実体をつくりやすい系統を使って菌床人工栽培が可能になっている[3]。これにより菌床栽培品が2004年から市場に流通しはじめている。ホンシメジの栽培品は、柄が下ぶくれとなる典型的な大黒型をしている[8]

菌床栽培

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1999年タカラバイオなどにより、一部の菌株が菌根菌としては例外的にデンプンを分解できる性質を利用し、赤玉土大麦などの穀物粒を主成分とした菌糸瓶法などによる人工栽培が成功している[9]。菌糸は窒素と鉄の要求性が高く、炭素源は単糖類の他にデンプンも利用できる。至適成長 pH は 5.4前後とされる[9]。本菌は、デンプン分解酵素であるアミラーゼ活性を持つことを利用したデンプン添加培地で、商業栽培が可能となっている[8]。2010年時点で、外生菌根菌が商業栽培されているのは、このホンシメジだけである[8]

また、栽培経費の低減を目的としてトウモロコシ粉とブナオガクズを用いた培地での試験栽培において、子実体を発生させることに成功している[10]が、米ぬかを培地とした場合は栽培に失敗している。

林間栽培

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樹齢15 - 25年程度の若いコナラやアカマツなどの林で、低木や草、落葉の除去を行う。更に発生率を高めるために、苗木に培養菌糸を感染させて未発生林に定植し、菌根を形成させて子実体を発生させる。

鉢栽培

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取り木(幹に傷を付け樹皮を剥き、ミズゴケなどで包み発根させる方法)により育成したアカマツの苗木を、純粋培養した菌糸塊とともに植木鉢に植え子実体を発生させる。

似ているキノコ

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有毒のクサウラベニタケEntoloma sp.)はキノコ狩りで間違えやすいキノコのひとつであるが、クサウラベニタケは傘裏のヒダが成熟すると肉色(ピンク色)になるが、ホンシメジはほぼ白色のままである[5]

脚注

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  1. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  2. ^ a b c d e f 牛島秀爾 2021, p. 108.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m 吹春俊光 2010, p. 18.
  4. ^ a b c d e f g h i j k 瀬畑雄三 監修 2006, p. 128.
  5. ^ a b c d e 大作晃一 2005, p. 82.
  6. ^ 愛媛県レッドデータブック | 高等菌類 | ホンシメジ”. www.pref.ehime.jp. 2023年7月27日閲覧。
  7. ^ 小項目事典,世界大百科事典内言及, 日本大百科全書(ニッポニカ),栄養・生化学辞典,ブリタニカ国際大百科事典. “ホンシメジ(ほんしめじ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年7月27日閲覧。
  8. ^ a b c d 吹春俊光 2010, p. 19.
  9. ^ a b c きのこ栽培方法 2-2-1-1 ホンシメジ(Lyophyllum shimeji) Archived 2011年3月23日, at the Wayback Machine.特許庁
  10. ^ 衛藤慎也、「トウモロコシ粉を用いた培地でのホンシメジの子実体形成」 『日本応用きのこ学会誌』 2001年 9巻 4号 p.171-174, doi:10.24465/apmsb.9.4_171, 日本きのこ学会

参考文献

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  • 牛島秀爾『道端から奥山まで。採って食べて楽しむ菌活 きのこ図鑑』つり人社、2021年11月1日。ISBN 978-4-86447-382-8 
  • 大作晃一『山菜&きのこ採り入門 : 見分け方とおいしく食べるコツを解説』山と渓谷社〈Outdoor Books 5〉、2005年9月20日。ISBN 4-635-00755-3 
  • 瀬畑雄三 監修、家の光協会 編『名人が教える きのこの採り方・食べ方』家の光協会、2006年9月1日。ISBN 4-259-56162-6 
  • 吹春俊光『おいしいきのこ 毒きのこ』大作晃一(写真)、主婦の友社、2010年9月30日。ISBN 978-4-07-273560-2 

関連項目

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外部リンク

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