ホットハッチ
ホットハッチ(英語: hot hatch、ホットハッチバックの略称)は、高性能ハッチバック車である。ヨーロッパ、特にフランスおよびイタリアでは比較的人気がある。北米ではスポーツコンパクトと呼ばれる。
特徴
編集実用性が高いハッチバック車に強力なエンジンを載せ、ブレーキとサスペンションにもチューニングも施し、スポーツカーに近い走行性能を与えた自動車のことを指す[1]。安価な大衆車を基にして「普段使いに不自由せず、ひとたびムチを入れると結構速くて楽しめる」[要出典]というものが一般的だが、稀に実用性を削って競技用のベース車両(ホモロゲーション車両)として開発されたものもある[1]。
ハッチバック型はノッチバック型に比べ、積載性や小回りといった実用面においては優秀であるが、全長の短さや開口部の大きさに起因して、空力と車体剛性の面で不利がある。しかし消費者の需要として実用性の重みは大きく、なおかつ、高い走行性能による差別化は魅力として映り、一定の需要が存在する。
ファミリーカーが基盤であるため前輪駆動が主流であるが、スバル・インプレッサWRX STIやランチア・デルタHFインテグラーレなどラリーで戦う事を前提としたモデルは四輪駆動 (4WD) を採用することもある。
トヨタ・AE86(カローラレビン/スプリンタートレノ)やホンダ・インテグラ、日産・シルビア(S110型、S12型)や日産・180SX 、ホンダ・CR-Xなど、ハッチバックを採用したクーペでスポーツグレードが存在する車種もあるが、これらはホットハッチではなく単に「スポーツクーペ」や「スポーティーカー」と呼ばれる[要出典]のが一般的である。
歴史
編集起源
編集一般的には1977年登場のフォルクスワーゲン・ゴルフI GTIがホットハッチの元祖[要出典]とされる。フランスのフォルクスワーゲンディーラー[誰?]が西ドイツの本社に働きかけ、GTIモデルを誕生させたのが起源[要出典]であり、イタリア人と並んで小さな車を飛ばすことが好きなフランスの自動車愛好家[誰?]はこのゴルフGTIに熱狂し、大ヒットとなった。フランスでの成功を受け、ゴルフGTIの販売が全欧州から世界へと広がっていくにつれ、一時代のホットハッチの代名詞となった。
ゴルフ以前にも、ボクスホール・シェヴェットHSのような高性能ハッチバック車は存在したが、シェヴェットHSはラリー向けのモデルであったため一部の愛好家にのみ販売されており、実用性の高いゴルフGTIとは違いファミリーカーではなく、駆動方式も従来通りのFRレイアウトだった。FFレイアウトに高出力エンジンを積んだ例は1962年のミニ・クーパーにまで遡れるが、トランクが独立しておりハッチバック車でないため、ホットハッチには含まれない。
ゴルフI GTIは1,600 - 2,000 ccのエンジンを搭載し、標準モデルの特徴である使い勝手の良さはそのままに、高出力かつ足回り(サスペンションやブレーキ)の強化で非常に高い性能を持っていた。これにより「日常輸送にも使えるスポーティーカー」という新しい市場を開拓した。
日本においてはゴルフI GTIの正規輸入はなかったが、次代のゴルフII GTIは8バルブ仕様が輸入開始されるやいなや大ヒットとなった。続けて16バルブ仕様も投入され、標準車に16バルブ用の赤枠の入ったフロントグリルだけを付けたまがい物[要出典]が現れるほどのブームとなった。その後のゴルフIIIやゴルフIVでは徐々に性能が穏やかとなるが、続くゴルフVでは「GTI is Back.」というキャッチコピーを伴い、ターボチャージャーやDSGを搭載した文字通りのホットハッチとして登場した。
欧州での広がり
編集ゴルフGTIの成功を受けて、欧州の各メーカーも続々とホットハッチを市場に投入した。とりわけ愛好家の多いフランス[要出典]のルノーからはゴルフGTI登場の前年(1976年)に5アルピーヌが発売されていたが、1979年にはゴルフGTIに対抗してターボ仕様が登場。さらに、オペル/ボクスホールからは1980年にアストラGTEが、英国フォードからは1981年にフォード・エスコート XR3iがそれぞれ登場。これにランチア・デルタ(GT/HFシリーズ)、フィアット・ウーノターボ、プジョー・205GTI、アウトビアンキ・A112などが続いた。
日本では1974年に発売されたホンダ・シビックRSが「ボーイズレーサー」とも呼ばれ、日本におけるホットハッチの元祖とする見方[誰によって?]もある。
1980年代末までにはほとんどの日本の自動車メーカーがホットハッチ市場に参入し、1990年代終盤には欧州の全メーカーがハッチバック車にホットハッチを設定していた。ホットハッチは結果的に従来のスポーツカーを生産台数で大きく凌駕し、スポーティーカー最大の市場区分になった。また、世界ラリー選手権(WRC)ではベース車両に小回りの効くハッチバック車を使用することが一般的になっていった[要出典]ため、これもホットハッチの増加に拍車をかけている。