ペーター・ショルツェ
ペーター・ショルツェ(1987年12月11日 - 、独: Peter Scholze [ˈpeːtɐ ˈʃɔlt͡sə] ( 音声ファイル))は、数論幾何学を専門とするドイツ人数学者。ドイツ人だが日本では英語風にピーター・ショルツと表記されることもある。ボン大学教授[2]。21世紀の数論幾何学の世界を牽引するリーダーの一人と評されている[3][4][5]。2018年、30歳でフィールズ賞を受賞した[6]。
ペーター・ショルツェ | |
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生誕 |
1987年12月11日(37歳) 東ドイツ・ドレスデン |
国籍 | ドイツ |
研究分野 | 数学 |
研究機関 | ボン大学 |
出身校 | ボン大学 |
博士論文 | Perfectoid Spaces (2011) |
博士課程 指導教員 | ミヒャエル・ラポポート[1] |
主な業績 | パーフェクトイド空間の概念の導入 |
主な受賞歴 |
コール賞(2015年) フィールズ賞(2018年) |
子供 | 1 |
プロジェクト:人物伝 |
経歴
編集ドイツのドレスデンで生まれ、ベルリンで育った[7] 。父親は物理学者、母親はコンピューター科学者、妹は化学を学んだ[8] 。学生時代に国際数学オリンピックに参加し、3つの金メダルと1つの銀メダルを獲得した[9]。2012年に指導教官のミヒャエル・ラーボポートの下でボン大学より博士号を授与された[1]。2011年7月から2016年までクレイ数学研究所の研究員であった[10]。2018年、マックス・プランク数学研究所の所長に任命された[11]。2022年王立協会外国人会員選出。
業績
編集ショルツェの研究は、数論幾何学、例えばp進数とその応用に集中している。ゲルト・ファルティングス、ジャン=マルク・フォンテーヌ、そして後にキラン・ケッドラヤによって開発された以前の基本的な理論のいくつかをよりコンパクトな形で提示した。ウェイト・モノドロミー予想を部分的に証明した[12]。パーフェクトイド空間の概念を導入した[13]。
2012年、博士号を取得した直後に24才で当時のドイツ最年少教授となった[3][14][15][16]。
ABC予想について
編集2018年、望月新一が発表していたABC予想の証明に関する論文に対して「望月の不等式(系3.12)」に根本的な欠陥があると主張した[17]。
2020年4月3日、望月の論文が約8年の査読をへて数学専門誌「PRIMS」に掲載されることになったことを受けて、望月の所属研究機関であるRIMSが開いた記者会見では、RIMSの教授であり「PRIMS」の共同編集者の一人である玉川安騎男は、「望月教授自身が反論もしており、(ショルツェ教授からの)再反論もない」などとし、論文の価値判断に影響はないとの認識を示した[17]。一方でショルツェ自身は「今回、論文が受理されたと聞いて驚いている」とコメントした[18]。
2021年7月、 Zentralblatt Math誌に、望月の論文誌PRIMS掲載の論文について、系3.12の論理過程に批判的なレビューを寄稿した[19]。
受賞
編集- 2012年 - Prix et Cours Peccot
- 2013年 - SASTRAラマヌジャン賞
- 2014年 - クレイ研究賞
- 2015年 - コール賞[20]、オストロフスキー賞[21]、トゥールーズ国立工科大学よりフェルマー賞
- 2016年 - ライプニッツ賞[22]、ヨーロッパ数学会賞
- *同時期に受賞した数学ブレイクスルー賞の New Horizons in Mathematics Prize の受賞は辞退している。
- 2018年 - フィールズ賞[6]
- 2019年 - ドイツ連邦共和国功労勲章大十字章[23][24][25]
- 2020年 - ピウス11世メダル[26]
- 2022年 - 王立協会外国人会員(王立協会フェロー)[27]
脚注
編集出典
編集- ^ a b Peter Scholze - Mathematics Genealogy Project
- ^ “HCM: Prof. Dr. Peter Scholze”. Hcm.uni-bonn.de. 2013年5月30日閲覧。
- ^ a b Mathematiker Peter Scholze (24) nimmt Ruf nach Bonn an – als jüngster deutscher W3-Professor. In: idw-online.de. 15 October 2012.
- ^ [1] ドイツ研究振興協会
- ^ Peter Scholze to receive 2013 Sastra Ramanujan Prize
- ^ a b 石倉徹也 (2018年8月3日). “「D加群」理論で代数解析学に貢献 柏原氏にチャーン賞”. 朝日新聞 2022年9月25日閲覧。
- ^ “Zwei Forscher der Uni Bonn erhalten den Leibniz-Preis” (ドイツ語). Rheinische Friedrich-Wilhelms-Universität Bonn (10 December 2015). 1 August 2018閲覧。 “Peter Scholze wurde 1987 in Dresden geboren und wuchs auf in Berlin.”
- ^ Centre International de Rencontres Mathématiques (29 June 2015). “Interview at CIRM: Peter Scholze”. YouTube. 23 December 2018閲覧。
- ^ Scholzes results at the International Mathematical Olympiad
- ^ Peter Scholze, claymath.org
- ^ “Peter Scholze new director at the Max Planck Institute for Mathematics” (英語). Max Planck Institute for Mathematics (2 July 2018). 11 July 2018閲覧。
- ^ Perfectoid spaces: A survey, to appear in Proceedings of the 2012 conference on Current Developments in Mathematics.
- ^ Scholze, Peter (November 2012). “Perfectoid Spaces”. Publications Mathématiques de l'IHÉS 116 (1): 245–313. doi:10.1007/s10240-012-0042-x.
- ^ Der Spiegel
- ^ Bild.de
- ^ Berliner Zeitung
- ^ a b “望月教授「ABC予想」証明 斬新理論で数学界に「革命」 京大数理研「完全な論文」”. 毎日新聞. 毎日新聞社 (2020年4月3日). 2022年9月25日閲覧。
- ^ “独ボン大教授「ABC予想は今も予想のままだ」”. 日刊スポーツ. 日刊スポーツNEWS (2020年4月3日). 2022年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月3日閲覧。
- ^ Mochizuki, Shinichi (2021年). “Inter-universal Teichmuller theory. I: Construction of Hodge theaters. (English) Zbl 07317908 Publ. Res. Inst. Math. Sci. 57, No. 1-2, 3-207 (2021). Reviewer: Peter Scholze (Bonn)” (PDF) (英語). zbMATH Open. 2022年9月25日閲覧。
- ^ AMS - Cole Prize 2015
- ^ Ostrowski Foundation – "The Ostrowski Prize for the year 2015 is confered [sic] to Peter Scholze."
- ^ “Leibniz Prizes 2016: DFG Honours Ten Researchers”. ドイツ研究振興協会 (10 December 2015). 3 January 2016閲覧。
- ^ “Bundesverdienstkreuz (Great Cross of Merit) for Peter Scholze”. Max Planck Institute for Mathematics (15 October 2019). 2 April 2020閲覧。
- ^ “Bekanntgabe vom 1. Oktober 2019” (ドイツ語). Bundespräsidialamt. 2 April 2020閲覧。
- ^ “Peter Scholze erhält das "Große Verdienstkreuz"” (ドイツ語). Hausdorff Center for Mathematics (2 October 2019). 2 April 2020閲覧。
- ^ “Pius XI-Medaille an Peter Scholze verliehen” (ドイツ語). University of Bonn. 2023年5月8日閲覧。
- ^ “Fellow Detail Page” (英語). Royal Society. 2022年9月25日閲覧。