ベンジジン: benzidine)は、芳香族アミンの1種。IUPAC名は4,4'-ジアミノビフェニル。別名ベンチジン

ベンジジン
構造式
{{{画像alt1}}}
識別情報
CAS登録番号 92-87-5
KEGG C16444
特性
化学式 C12H12N2
モル質量 184.2
外観 無色結晶
相対蒸気密度 6.36
融点

128 (無水物、急加熱時)

沸点

401

危険性
GHSピクトグラム 可燃性急性毒性(低毒性)経口・吸飲による有害性
GHSシグナルワード 危険(DANGER)
主な危険性 発癌(がん)性 ( carcinogenic )
への危険性 強い眼刺激があります。
出典
ICSC 0224
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

性質

編集

純粋なものは常温で白色の固体であるが、空気および光で容易に酸化され暗赤色を呈する。水にほとんど溶けないが、塩酸塩(CAS 531-85-1)は可溶である。

国際がん研究機関によってヒトに対する発癌性が認められている[1]

合成

編集

ベンジジンはニトロベンゼンから1,2-ジフェニルヒドラジンを合成し、これを酸によって転位反応させると得られる。この反応はベンジジン転位と呼ばれており、置換体も同様の反応で得られる。

 

用途

編集

ベンジジン自体の発がん性が確認された後も、ベンジジンを利用した製品には発癌性はないとして化学染料の原料などに盛んに利用されてきた。しかしベンジジンを利用した製品自体にも特徴的な発癌性(膀胱癌)が確認されるようになり[2]、1970年代以降、産業的利用は大幅に制限を受けることとなった(後述)。

アニリントルイジンと同様に、亜硝酸ナトリウムによってアゾ化合物(テトラゾニウム)としてからカップリング反応させ、不溶性の顔料の合成に利用された[3]。現在でも置換体の3,3'-ジクロロベンジジンはPigment Yellow 83などのジアリライド顔料の骨格として利用されている[4]

ほかにゴムやプラスチックの合成に使われたり、酸化還元指示薬として、血液過酸化水素ニコチンなどの検出に用いられていた[1]

法規制

編集

1960年代以降、ヒトに対する発癌性、特に膀胱癌を引き起こすことが明らかとなったため、各国の政府によって取扱いが厳しく規制されている。日本では1972年労働安全衛生法によって試験研究用途以外での製造・輸入・譲渡・提供・使用が禁止されている。ほかに製造を禁止している国として、EUカナダ韓国がある[1]

関連項目

編集

  ウィキメディア・コモンズには、ベンジジンに関するメディアがあります。

脚注

編集
  1. ^ a b c “Benzidine”. IARC Monographs 100F: 53-63. (2012). http://monographs.iarc.fr/ENG/Monographs/vol100F/mono100F-7.pdf 2014年11月4日閲覧。. 
  2. ^ 「ぼうこうガン、染色工にも 化学染料を扱う三人 研究陣、発ガン性追求」『朝日新聞』昭和45年(1970年)3月27日朝刊、12版、15面
  3. ^ 一例として、Franklin Beech, The Dyeing of Cotton Fabrics, Scott Greenwood & Co., London, 1901. Project Gutenberg
  4. ^ 2004「化学物質と環境」第1章 平成15年度初期環境調査結果: 調査結果の評価”. www.env.go.jp. 2023年11月15日閲覧。