ベリト
ベリト(Berith)は、ヨーロッパの伝承あるいは悪魔学における悪魔の一人。ベアル(Beal)[1][2]、ボフリ(Bofry)[2]、ボルフリ(Bolfri[1]、Bolfry[2])とも呼ばれる。
由来
編集ベリトは、旧約聖書にも登場するシケム(シェヘム、現在のナーブルス)の人々が偶像として崇めた神バアル・ベリト(Baal Berith)に由来すると考えられている[3]。同じくバアル・ベリト神に由来すると考えられている悪魔であるバルベリト(Balberith)と同一視、あるいは別名とされる[4]。
特徴
編集容姿
編集イギリスで発見されたグリモワール『ゴエティア』およびネーデルラント出身の医師・文筆家であるヨーハン・ヴァイヤーが記した『悪魔の偽王国』によると、ベリトは赤い衣服と王冠を身につけ、赤い馬にまたがった兵士の姿で現れる[5][2][1]。
地位・権能
編集『ゴエティア』によると、ベリトは26の軍団を率いる序列28番の地獄の公爵である[5][2]。『悪魔の偽王国』にも同様の記述が見られる[1]。召喚者が頼めば、ベリトは過去・現在・未来の質問に真摯に回答してくれる。また、金属を黄金に変える力、および人を尊厳をもって飾る力を持つ。しかし、ベリトはしばしば嘘をつくため信用してはならないという[5][2]。ベリトと話す際には、指輪を用意し、『ゴエティア』に記されている別の悪魔ベレトと同じように相対しなければならないとされる[5][2]。
バルベリト
編集一方、セバスチャン・ミカエリスによれば、バルベリトは第一階級の悪魔の一人として殺人と冒涜を司り、聖バルナバの敵対者である[7]。堕天して悪魔となる前は智天使の君主であったという[4]。また、コラン・ド・プランシー著『地獄の辞典』の「地獄の宮廷」の項によれば、バールベリトは皇帝ベルゼビュートの王族および大高官の一人であり、諸同盟の指導者とされる[8]。ヴァイヤーによればバルベリトは地獄の記録保管所の看守である[7]。1634年に行われたルーダンの憑依事件の裁判では、男根に似た悪魔バアルベリトが作成し副署した悪魔との契約書が証拠として提出され、ユルバン・グランディエ神父が悪魔と契約を行ったと主張された[9][6]。
脚注
編集- ^ a b c d Pseudomonarchia Daemonum
- ^ a b c d e f g The Lesser Key of Solomon, p.30
- ^ 『地獄の辞典』、249頁。
- ^ a b 『天使辞典』、224-225頁。
- ^ a b c d Goetia
- ^ a b ロッセル・ホープ・ロビンズ 著、松田和也 訳『悪魔学大全』青土社、2021年5月10日、198-199頁。ISBN 978-4-7917-7382-4。
- ^ a b 『悪魔の事典』、318頁。
- ^ 『地獄の辞典』、156-157頁。
- ^ エド・サイモン 著、加藤輝美、野村真依子 訳『アートからたどる悪魔学歴史大全』原書房、2022年4月28日、170頁。ISBN 978-4-562-07152-4。
参考文献
編集- グスタフ・ディヴィッドスン『天使辞典』吉永進一訳、創元社、2004年。ISBN 4-422-20229-4。
- フレッド・ゲティングズ 著、大瀧啓裕 訳『悪魔の事典』青土社、1992年。ISBN 4-7917-5185-X。
- コラン・ド・プランシー『地獄の辞典』床鍋剛彦訳、講談社、1990年。ISBN 4-06-201297-9。
- Mathers, S.L.MacGregor, and Crowley, Aleister, The Lesser Key of Solomon(1904), The Internet Sacred Text Archive 内の文書(英文)
- Weyer, Johann, Pseudomonarchia Daemonum, Twilit Grotto: Archives of Western Esoterica 内の文書(ジョゼフ・H・ピーターソン編集・解題・注釈、ラテン語原文、レジナルド・スコットの英訳)
- Waite, A.E., The Book of Ceremonial Magic(1913), The Internet Sacred Text Archive 内の文書(英文)
- Goetia, Twilit Grotto: Archives of Western Esoterica 内の文書(ジョゼフ・H・ピーターソン編集、英文)