ブロードウェイ特急(Broadway Limited)は、ペンシルバニア鉄道(Pennsylvania Railroad、略称PRR)がニューヨーク - シカゴ間で運行した旅客列車である。

1931年頃のブロードウェイ特急

概要

編集

1902年に「ペンシルバニア・スペシャル」(Pennsylvania Special)として運行を開始し、ニューヨークワシントンD.C.シカゴの間を結んだ。1912年に「ブロードウェイ特急」(Broadway Limited)に改称された[1]。「ブロードウェイ」の由来はマンハッタンの通りのブロードウェイではなく、PRRの本線の複々線区間が「broad way(広い道)」と通称されており、その区間を通ることによる命名である[2]

ニューヨークとシカゴの間を結ぶ列車としては、ニューヨーク・セントラル鉄道(NYC)の「20世紀特急」と競合関係にあり、同列車との間でサービス競争が展開されていた[1]。20世紀特急はハドソン川五大湖に沿った平坦な線区を走るが、ブロードウェイ特急はアパラチア山脈を越える山岳線区を走行した[3]

1938年、客車が従来の重鋼製客車から軽量客車に更新された。軽量客車のデザインは、電気機関車GG1形と同じくレイモンド・ローウィによるものである[1]。ローウィのデザインは蒸気機関車でもK4形流線形化改造車やS1形で採用され、ブロードウェイ特急の牽引機に使用された[4]

ニューヨークのペンシルベニア駅からハリスバーグまでは電気機関車のGG1形が、その他の区間では蒸気機関車がそれぞれ牽引した[1]

1971年アムトラック (Amtrak) 発足後も同社が運行を継続したが、旅客需要の減少により1995年に運行停止となった。

年表

編集
  • 1902年: ペンシルバニア・スペシャル(Pennsylvania Special)運行開始。
  • 1912年: ブロードウェイ特急(Broadway Limited)に改称。
  • 1938年: 重鋼製車両を軽量の流線形車両に更新。
  • 1971年: 全米鉄道旅客輸送公社・アムトラック (Amtrak) の発足により、同社が運行を継続。
  • 1995年: 運行停止。

編成例

編集

1953年5月23日の編成(ニューヨーク発シカゴ行き・ハリスバーグ到着時)。

使用車両 車両愛称・形式 車種
PRR4905 GG1電気機関車 電気機関車
PRR6518   ポスタル・カー(郵便車
ATSF NANKOWEAP 寝台車(4ダブルベッドルーム・4コンパートメント・2デュリューイングルーム)
PRR8088 CASCADE HOLLON 寝台車(10ルーメット・5ダブルベッドルーム)
PRR8297 ZANESSVILLE INN 寝台車(21ルーメット)
PRR8363 CENTER CREEK 寝台車(12デュープレックスシングルルーム・4ダブルベッドルーム)
PRR8369 CHIPPEWA CREEK 寝台車(12デュープレックスシングルルーム・4ダブルベッドルーム)
PRR8311 KASKASKIA RAPIDS 寝台車(10ルーメット・6ダブルベッドルーム)
PRR8428 KASKASKIA RAPIDS 寝台(3ダブルベッドルーム)・ビュフェラウンジ車
PRR4618   ダイニング
PRR4619   キッチン・ドミトリー車(従業員車)
PRR8389 IMPERIAL FIELDS 寝台車(4ダブルベッドルーム・4コンパートメント・2デュリューイングルーム)
PRR8310 KANKAKEE RAPIDS 寝台車(10ルーメット・6ダブルベッドルーム)
PRR8300 CATAWISSA RAPIDS 寝台車(10ルーメット・6ダブルベッドルーム)
PRR8389 IMPERIAL BENCH 寝台車(4ダブルベッドルーム・4コンパートメント・2デュリューイングルーム)
PRR8391 IMPERIAL LEA 寝台車(4ダブルベッドルーム・4コンパートメント・2デュリューイングルーム)
PRR8419 MOUTAIN VIEW 寝台(2マスタールーム・1ダブルベッドルーム)・ビュフェ・ラウンジ展望車

その他のPRRの主要列車

編集
  • スピリット・オブ・セントルイス (ニューヨーク - セントルイス) 全車プルマン寝台
  • マンハッタン特急 (ニューヨーク - シカゴ)
  • クリーブランダー (ニューヨーク - クリーブランド
  • シンシナティ特急 (ニューヨーク - シンシナティ
  • ペンシルバニア特急 (ニューヨーク - シカゴ)
  • ジェネラル (ニューヨーク - シカゴ)
  • リバティー特急 (ワシントン - シカゴ)
  • アメリカン (ニューヨーク - セントルイス)
  • レッド・アロー (ニューヨーク - デトロイト)
  • アドミラル (ニューヨーク - シカゴ)
  • トレイル・ブレーザー (ニューヨーク - シカゴ) 全車座席列車
  • ゴールデン・アロー (ニューヨーク - シカゴ)
  • エジソン (ニューヨーク - ワシントン) 全車プルマン寝台
  • スピーカー、レジスレーター、ジュディシャリ、ポトマック、レプリゼンタティブ、エグゼクティブ、リージョン、アーリントン、マウント・ヴァーノン、コンスティテューション、コングレッショナル、アンバシー (ニューヨーク - ワシントン) 昼行座席列車、パーラーカー連結
  • パトリオット、コロニアル、セネター (ボストン - ワシントン) 昼行座席列車、パーラーカー連結
  • フェデラル (ボストン - ワシントン)

脚注

編集
  1. ^ a b c d 近藤喜代太郎『アメリカの鉄道史』128-129頁。
  2. ^ 近藤喜代太郎『アメリカの鉄道史』205頁。
  3. ^ 近藤喜代太郎『アメリカの鉄道史』127頁。
  4. ^ フリーランスプロダクツ「鉄道デザインの100年」『鉄道ファン』2019年8月号(通巻700号)、交友社。17頁。

参考文献

編集
  • 近藤喜代太郎『アメリカの鉄道史 SLがつくった国』成山堂書店、2007年。
  • Robert J, Wayner. Passenger Train Consists 1923-1973 Wayner Publications
  • Joe Welsh. Pennsy Streamamliners The Blue Ribbon Fleet Kalmback Publications 1999年 ISBN 0-89024-293-3 

外部リンク

編集