ブラジル連邦共和国副大統領

副大統領

ブラジル連邦共和国副大統領(ブラジルれんぽうきょうわこくふくだいとうりょう、: Vice-Presidente da República Federativa do Brasil)は、ブラジルの行政府において大統領に次ぐ第2位の役職である。副大統領の主な役割は、在任中の大統領が死去、辞任あるいは罷免された際に代わりに大統領に就き、大統領が外遊中あるいは一時的に職務執行不能である際に、一時的に大統領の権限と職務を代行することである。大統領とともに選挙で選出される。

ブラジルの旗 ブラジル連邦共和国
副大統領
Vice-Presidente da
República Federativa do Brasil
副大統領旗
現職者
ジェラルド・アルキミン(第26代)
Geraldo Alckmin

就任日 2023年1月1日
呼称Mr. Vice President/副大統領[1] (通常時)
The Most Excellent and His Excellency閣下
(儀礼時)
所属機関内閣
国防評議会英語版
庁舎ジャブル宮殿
指名大統領
ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ
任命ブラジル大統領選挙(直接選挙
任期4年(3選禁止)
根拠法令ブラジル連邦共和国憲法
初代就任フロリアーノ・ペイショト
創設1891年2月26日
継承第1位
ウェブサイトVice Presidency

副大統領職は1889年の共和国宣言の頃から存在していたが、1891年の憲法で正式に設立された。正式に役職が廃止されていたヴァルガス政権時代の15年間を除いて、共和国の歴史全体を通して存在している。

立候補要件

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副大統領への立候補するための要件は大統領と同等である。政治職への立候補要件に加えて、憲法第14条により、ブラジルで出生した市民(あるいは海外在住で両親の少なくとも一方がブラジル市民)で35歳以上でなければならない。

選挙と任期

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大統領と副大統領はともに4年の任期で選ばれ、選挙の翌年1月1日に就任し、最長で2選まで可能となっている。

在任中の大統領の後を継いだ副大統領は再選可能であるが、法律により前大統領の残任期間を務めた場合でも任期制限に含まれるため、2期連続で立候補することはできない。任期制限に関する憲法の規定により、大統領が外遊中あるいは弾劾による職務停止中に代行を務めた場合でも、任期の一部として計算される。

職場と公邸

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副大統領はプラナルト宮殿(大統領府)で執務を行う。公邸は1977年に完成したジャブル宮殿である。

大統領職の継承

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1889年の共和国宣言以来、8人の副大統領が在任中の大統領の後継として大統領に昇格している。4人が在任中の大統領の死去(ニロ・ペカーニャデルフィム・モレイラカフェ・フィーリョジョゼ・サルネイ)、2人が辞任(フロリアーノ・ペイショトジョアン・グラール)、2人が弾劾による罷免[注釈 1]イタマール・フランコミシェル・テメル)による昇格である。

副大統領の一覧

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    直接選挙
    間接選挙

代数 副大統領 在任期間 政党 大統領 備考 選挙
第一共和政
1 フロリアーノ・ペイショト   1891年2月26日 - 1891年11月23日 無し (軍) デオドロ・ダ・フォンセカ 前任者の辞任により大統領に昇格 1891
空席 フロリアーノ・ペイショト
2 マヌエル・ヴィトリーノ   1894年11月5日 - 1898年11月14日 連邦共和党
PR Federal
プルデンテ・デ・モラエス 1894
3 ホーザ・エ・シルヴァ   1898年11月5日 - 1902年11月4日 連邦共和党
PR Federal
カンポス・サーレス 1898
シルヴィアーノ・ブランダーオ   就任前に死去 Mineiro Republican Party
PRM
ロドリゲス・アルヴェス 1902
空席
4 アフォンソ・ペナ   1903年7月17日 - 1906年11月4日 Mineiro Republican Party
PRM
前任者の死去により1903年に副大統領に選出 1903
5 ニロ・ペサニャ   1906年11月5日 - 1909年7月14日 Fluminense Republican Party
PRF
アフォンソ・ペナ 前任者の死去により大統領に昇格 1906
空席 ニロ・ペサニャ
6 ヴェンセズラウ・ブラス   1910年11月5日 - 1914年11月4日 Mineiro Republican Party
PRM
エルメス・ダ・フォンセカ 1910
7 ウルバノ・サントス   1914年11月5日 - 1918年11月4日 Mineiro Republican Party
PRM
ヴェンセズラウ・ブラス 1914
8 デルフィム・モレイラ   1918年11月5日 - 1919年1月16日 Mineiro Republican Party
PRM
ロドリゲス・アルヴェス ロドリゲス・アルヴェスの病気により副大統領のまま大統領代行を務め、1919年1月16日にロドリゲス・アルヴェスが死去すると大統領代行になり、一時的に副大統領が空席になった。 1918
空席 デルフィム・モレイラ
8 デルフィム・モレイラ   1919年7月28日 - 1920年7月1日 Mineiro Republican Party
PRM
エピタシオ・ペソア 在任中に死去 1918
空席
9 ブエノ・デ・パイヴァ   1920年11月10日 - 1922年11月4日 Mineiro Republican Party
PRM
前任者の後継として選出 1920
- ウルバーノ・サントス   就任前に死去 Mineiro Republican Party
PRM
アルトゥール・ベルナルデス 1922
10 エスタシオ・コインブラ   1922年11月5日 - 1926年11月4日 Barreiros Republican Party
PR Barreiros
1922
11 フェルナンド・デ・メロ・ヴィアナ   1926年11月5日 - 1930年10月24日 Mineiro Republican Party
PRM
Washington Luís 1930年の革命で解任 1926
- バイタル・ソアレス   1930年の革命で就任不能 Baiano Republican Party
PRB
Júlio Prestes Vital Soares and Júlio Prestes, elected on 1 March 1930, didn't take office due to the coup d'état that removed Washington Luís and Fernando de Melo Viana. 1930
ヴァルガス政権時代
副大統領職は1934年の憲法で消滅し、1946年の憲法で復活。
第四共和政
12 ネレウ・ラモス   1946年9月19日 - 1951年1月30日 社会民主党
PSD
エウリコ・ガスパル・ドゥトラ 1945
13 カフェ・フィーリョ   1951年1月31日 - 1954年8月24日 進歩社会党
PSP
ジェトゥリオ・ドルネレス・ヴァルガス 前任者の死去により大統領に昇格 1950
空席 カフェ・フィーリョ
カルロス・ルズ
ネレウ・ラモス
14 ジョアン・グラール   1956年1月31日 - 1961年8月25日 ブラジル労働党
PTB
ジュセリーノ・クビチェック 前任者の辞任により大統領に昇格 1955
ジャニオ・クアドロス 1960
空席 パスカル・ラビエリ・マジーリ
ジョアン・グラール
第五共和政
空席 パスカル・ラビエリ・マジーリ
15 ジョゼ・マリア・アルキン   1964年4月15日 - 1967年3月14日 社会民主党
PSD
ウンベルト・デ・アレンカール・カステロ・ブランコ 1964
無し (民間)
国家革新連盟
ARENA
16 ペドロ・アレイショ   1967年3月15日 - 1969年8月31日 国家革新連盟
ARENA
アルトゥール・ダ・コスタ・エ・シルヴァ Prevented from assuming the Presidency due to the holder's vacancy by the Provisory Governative Junta of 1969. 1966
空席 Provisory Governative Junta of 1969
17 アウグスト・グリューネヴァルト   1969年10月30日 - 1974年3月14日 国家革新連盟
ARENA
エミリオ・ガラスタズ・メディシ 1969
18 アダルベルト・ペレイラ・ドス・サントス   1974年3月15日 - 1979年3月14日 国家革新連盟
ARENA
エルネスト・ガイゼル 1974
19 アウレリアーノ・チャベス   1979年3月15日 - 1985年3月14日 国家革新連盟
ARENA
ジョアン・フィゲイレド 1978
民主社会党
PDS
Liberal Front Party
PFL
第六共和政
20 ジョゼ・サルネイ   1985年3月15日 - 1985年3月14日 ブラジル民主運動党
PMDB
タンクレード・ネーヴェス 前任者の死去により大統領に昇格 1985
空席 ジョゼ・サルネイ
21 イタマール・フランコ   1990年3月15日 - 1992年12月29日 National Reconstruction Party
PRN
フェルナンド・コロール・デ・メロ 前任者の辞任により大統領に昇格 1989
ブラジル民主運動党
PMDB
空席 イタマール・フランコ
22 マルコ・マシエル   1995年1月1日 - 2002年12月31日 Liberal Front Party
PFL
フェルナンド・エンリケ・カルドーゾ 1994
1998
23 ジョゼ・アレンカール   2003年1月1日 - 2010年12月31日 Liberal Party
PL
ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ 2002
共和党
PRB
2006
24 ミシェル・テメル   2011年1月1日 - 2016年8月31日 ブラジル民主運動党
PMDB
ジルマ・ルセフ 前任者の罷免により大統領に昇格 2010
ブラジル民主運動党
MDB
2014
空席 ミシェル・テメル
25 ハミルトン・モウラン   2019年1月1日 - 2022年12月31日 Brazilian Labour Renewal Party
PRTB Republicans
ジャイール・ボルソナーロ 2018
26 ジェラルド・アルキミン   2023年1月1日 - ブラジル社会党
PSB
ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ 2022

存命中の元副大統領

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関連項目

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脚注

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注釈

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  1. ^ フェルナンド・コロール・デ・メロは議会により弾劾されたものの上院による有罪判決の前に辞任し、弾劾裁判中にイタマール・フランコが大統領に昇格した(最終的に有罪判決が下り、8年間の公職追放処分を受けた)。

出典

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  1. ^ Decreto nº 9.758, de 11 de abril de 2019 (ポルトガル語), Impressa Nacional, 2019年4月11日, p. 5, ISSN 1677-7042, 2021年2月4日閲覧

外部リンク

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