フォークランド英語(フォークランドえいご、英語: Falkland Islands English)は、イギリス英語に近い英語の方言である。しかしながら、フォークランド諸島は立地が孤立しているため、人口が少ない島民は独自のイントネーションや方言を発達させ、保持してきた。近年ではイギリスからの移民が急増しているにもかかわらず、独自のイントネーションは残っている。キャンプとして知られる(スペイン語campoに由来[2])、スタンリー以外の郊外地域においてはフォークランド方言の訛りが強くなる傾向にある。フォークランド諸島英語はオーストラリア英語ニュージーランド英語ウェスト・カントリー英語英語版ノーフォーク方言英語版スコットランド低地語と似ている。

フォークランド英語
話される国 イギリス
地域 フォークランド諸島
民族 1,700人(2012年の国勢調査)[1]
話者数 (住民数とほぼ同じとされる)
言語系統
言語コード
ISO 639-3
Glottolog なし
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キャンプにある小集落。
フォークランド諸島の地図。

フォークランド諸島の語彙で特筆に値するのはkelpersmoko英語版の2つがある。前者は「フォークランド諸島人」という意味であり、諸島を囲むケルプ英語版に由来する(アルゼンチンでは軽蔑的に使われることもある)[3]。後者はオーストラリア英語ニュージーランド英語と同じく、「たばこ休憩」を意味する。

Yomp英語版(重装備で長距離行進をすること)という語彙はフォークランド紛争中のイギリス軍に使われたが、現代では使われなくなった。

近年ではセントヘレナからの出稼ぎが多数フォークランド諸島にやってきており、彼らも独特な形の英語を使用している。

フォークランド諸島への定住の歴史

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アルゼンチン東部沖にある、約780の島嶼で構成されたフォークランド諸島は1690年にイギリスが探検にやってきたとき、先住民族が存在しなかった[4]。定住は1833年にイギリス軍がアルゼンチン兵士26名を諸島から追い出して、諸島の領有を主張したことで始まった[4]。1845年、東フォークランド島で首都のスタンリーが設立された[5]。アルゼンチンも諸島の領有を主張しており、1982年に諸島に侵攻した。当時のイギリス首相マーガレット・サッチャーは諸島の住民が「イギリスの伝統と家系である」と述べ、イギリス支配を守った[6]。3か月に満たないこの戦争で1,000人近くが殺害され、2,000人以上が負傷した[7]。イギリスとアルゼンチンの間の領土問題は残っていたが、2013年の選挙でも住民の98%以上がイギリス領に残ることを選択していたため、諸島の住民は一般的にイギリスに帰属すると自認している[8]。この歴史はフォークランド諸島英語の言語学上の特徴にも影響した。その特徴とは、イギリス英語と似ているが、一部の発音と語彙が異なることである。

発音と音韻

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フォークランド諸島英語では/r/を発音しない英語版[9]。これは南半球における他の英語の方言でも同様である[9]。フォークランド諸島英語と南半球における他の英語の方言の差には/ai/の中舌化(centralization)がある。例えば、niceは/nəɪs/と発音される[9]

語彙

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フォークランド諸島英語の話し言葉は一部でスペイン語からの借用語がある。例えば、アルゼンチンのリオプラテンセ・スペイン語でもみられるチェ英語版wow[10]またはdamn[11]と同義のプーチャ(poocha)といった口語体がある(スペイン語のputaと英語のwhoreの婉曲表現であるpuchaに由来する)[12]

フォークランド諸島英語では特に馬に関する語彙が多い。例えば、alizancoloraonegroblancogotiaopicassosarcorabincanaは馬の色や見た目を指す語彙で、bosalcabrestabastoscinchconjinillameletastientasmanaresは様々な馬具を指している[13]

海員がつけた、より古い英語フランス語スペイン語由来の地名は島、岩、湾、小湾、岬を指すことが多いが、1833年以降のスペイン語からつけられた地名は内陸の場所は特徴を指すことが多い。このことは内陸で方向定位、境界画定英語版、牛と羊の牧畜業を行う必要が出てきたことによる。例としてはRincon GrandeCeritosCampitoCanteraTerra MotasMalo RiverBrasse MarDos LomasTorcida PointPioja PointEstanciaOroquetaPiedra SolaLaguna SecoManadaなどがある[13]

脚注

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  1. ^ Falkland Islands Government - Census 2012: Statistics & Data Tables
  2. ^ Stay with us » Camping: Falkland Islands Tourist Board
  3. ^ ‘Second Class Citizens: The Argentine View of the Falkland Islanders’, P.J. Pepper, Falkland Islands Newsletter, November 1992.
  4. ^ a b Pereltsvang, Asya. “Falkland Islands English”. Languages of the World. 24 March 2018閲覧。
  5. ^ Our History”. Falkland Islands Government. 24 March 2018閲覧。
  6. ^ Key facts: The Falklands War” (英語). BBC News. 24 March 2018閲覧。
  7. ^ Taylor, Alan (2012年5月30日). “30 Years Since the Falklands War” (英語). The Atlantic. 24 March 2018閲覧。
  8. ^ Tweedie, Neil (12 March 2013). “Falkland islands referendum: who were the three 'No' votes?” (英語). https://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/southamerica/falklandislands/9925693/Falkland-islands-referendum-who-were-the-three-No-votes.html 24 March 2018閲覧。 
  9. ^ a b c Hickey, Raymond (2014). A Dictionary of Varieties of English (1 ed.). p. 119. https://onlinelibrary-wiley-com.ezproxy3.library.arizona.edu/doi/pdf/10.1002/9781118602607 24 March 2018閲覧。 
  10. ^ Are there places more British than the UK?, BBC News, 8 March 2013
  11. ^ Concise Oxford Spanish Dictionary: Spanish-English/English-Spanish
  12. ^ El gaucho Martín Fierro, José Hernández. Editorial Pampa, 1963, p. 247.
  13. ^ a b Spruce, Joan. Corrals and Gauchos: Some of the people and places involved in the cattle industry. Falklands Conservation Publication. Bangor: Peregrine Publishing, 1992. 48 pp.