フィリドール・ディフェンス
フィリドール・ディフェンス (Philidor Defence) は、チェスのオープニングの1つ。非公式の世界チャンピオンだったフランソワ=アンドレ・ダニカン・フィリドールが考案し研究したことから「フィリドール・ディフェンス」と名づけられた[1]。書籍等によっては、「フィルドール・ディフェンス」と表記されている場合もある。
a | b | c | d | e | f | g | h | ||
8 | 8 | ||||||||
7 | 7 | ||||||||
6 | 6 | ||||||||
5 | 5 | ||||||||
4 | 4 | ||||||||
3 | 3 | ||||||||
2 | 2 | ||||||||
1 | 1 | ||||||||
a | b | c | d | e | f | g | h |
右図は、その基本形となっている。基本形までの手順は1. e4 e5 2.Nf3 d6である[2]。黒の2手目の2.… d6で黒のキング側のビショップがe7にしか動けなくなるので、自ら攻撃せず白からの攻撃に対して反撃するオープニングであるといえる[1]。フィリドール自身は「自分が研究したオープニングを用いなくても勝てる」と豪語し、1度もこのオープニングを指したことはなかった[1]。第二次世界大戦後のグランドマスターたちには殆ど指されなかったが[1]、1970年代半ばにリバイバルしたことがある[3]。
主な変化
編集3.d4 Nd7 4.Bc4 c6 5.0-0 Be7 6.a4 Ngf6 7.Nc3 Qc7 8.Qe2 0-0 9.h3 h6[4]
この変化は形勢互角[5]。
白の3手目では3.Bc4が他にあるくらいで、大抵3.d4と指す[6]。なおレガルのメイトは3.Bc4の変化である[7]。3.Bb5+?とチェックをかけるのは悪手[8]。3.… c6とポーンをビショップに当てられ白は1手損する[8]。
黒の3手目では他に3.… Nf6がある[6]。3.… Nf6に対しては4.dxe5と4.Nc3の2つの応手があり[6]、4.dxe5なら4.… Nxe4 5.Nbd2 Nc5 6.Nc4 d5 7.Bg5 Qd7 8.Ne3 c6と進行する[6]。4.Nc3なら4.… Nbd7 5.Bc4 Be7 6.0-0 0-0 7.Qe2 c6と進行する[6]。
4.… Be7?は5.dxe5 Nxe5 6.Nxe5 dxe5 7.Qh5で黒が不利[6]。この変化の途中で5.… dxe5??は6.Qd5で白の勝ち(黒はチェックメイトから逃げることが出来ない)[6]。
4.… Ngf6は5.dxe5 Nxe5 6.Nxe5 dxe5 7.Bxf7+ Kxf7 8.Qxd8 Bb4+ 9.Qd2でポーンを1つ損する[6]。この変化の途中で5.… dxe5?とするのは6.Ng5!が好手[6]。
4.… h6は5.dxe5 dxe5 6.Bxf7+! Kxf7 7.Nxe5+ Kf6 8.Qd4 c5 9.Nxd7+ Ke7 10.Qxc5+ Kxd7 11.Qb5+となり白はビショップを犠牲にした代償としてポーンを3つ取り、攻撃が続くので白有利[9]。
5.Ng5とf7を狙っても5.… Nh6で失敗[5]。
6.a4は6.… b5を防いだ手[5]。
8.… Nb6は9.dxe5 dxe5 10.Bxf7+ Kxf7 11.a5 Nbd7 12.Qc4+ Ke8 13.Ng5で黒の形が悪くなる[5]。
参考文献
編集脚注・出典
編集- ^ a b c d 『定跡と戦い方』、36頁。
- ^ 『定跡と戦い方』、35頁。
- ^ 『図解 早わかりチェス』、180頁。
- ^ 『定跡と戦い方』、36-38頁。
- ^ a b c d 『定跡と戦い方』、38頁。
- ^ a b c d e f g h i 『定跡と戦い方』、37頁。
- ^ 1.e4 e5 2.Nf3 d6 3.Bc4 Bg4?! 4.Nc3 g6 5.Nxe5! Bxd1?? 6.Bxf7+ Ke7 7.Nd5#や1.e4 e5 2.Nf3 d6 3.Bc4 Nc6 4.Nc3 Bg4?! 5.h3 Bh5? 6.Nxe5! Bxd1?? 7.Bxf7+ Ke7 8.Nd5#或いは1.e4 e5 2.Nf3 d6 3.Bc4 Nc6 4.Nc3 Bg4?! 5.0-0 Nd4? 6.Nxe5! Bxd1?? 7.Bxf7+ Ke7 8.Nd5#等の手順があるがいずれも「レガルのメイト」と呼ばれる。
- ^ a b 『やさしい実戦集』、198頁。
- ^ 『定跡と戦い方』、37-38頁。
- ^ ISBNコードは新装版のもの。