ピートモス
ピートモス (英: Peat moss)とは、ミズゴケ類などの蘚苔類、ヨシ、スゲ、ヌマガヤ、ヤナギなどの植物が堆積し、腐植化した泥炭(でいたん)を脱水、粉砕、選別したもの。農業、園芸用土、もしくは土壌改良材として用いられる。
概要
編集日本ではミズゴケが主原料となるヨーロッパ産のピートモスが多く流通しているために、ピートモスとはミズゴケの英語名のような誤解をされることがある。実際にはピートモスとは泥炭層から切り出した複数の植物から作られる用土であり、ミズゴケ以外の複数の植物が原料のピートモスも存在している。
通気性、保水性、保肥性が高く、有機酸を含むため、通常酸性を示すが、石灰を加えて中和し、中性にしたものもある。土壌改良剤としては単品で使うほかにパーライトやバーミキュライトと混ぜて使用することも多い。
ピートモスは植物が部分的に泥炭化した物質であり、主成分としてリグニンとセルロースを含んでいる[1]。リグニンは遷移金属のような溶存物質に対して高い特異的吸着性能を示すため、油の吸着保持や生分解が期待される[1]。
流通形態と利用
編集一般的に圧縮して袋詰めされて流通しており、開封後、水分を加えて元の体積に戻す。良くほぐし、適度に湿らせた状態で使用する。
注意点
編集ミズゴケを主成分とするものは、一度完全に乾燥させると撥水するようになり、再び水分を加えても完全には元に戻らないことがあるため、潅水には十分注意する。また、汚泥のようになった細かいピートモスは通気性がなく、根腐れや病害の原因となるため用いない。
産地と特徴
編集主な産地はカナダや北ヨーロッパ、樺太、北海道など。産地により、元となる植物の種類や構成比が異なることから、その物理的性質も多少異なる。下記に示す特徴は一般的なもので、製造業者、原料採取地により異なることがある。
脚注
編集- ^ a b 大坪政美,小西一貴,真玉洋彰,東孝寛,金山素平「ピートモスによる油の保持と生分解」『九州大学大学院農学研究院学芸雑誌』第66巻第2号、九州大学大学院農学研究院、2011年9月、11-20頁、doi:10.15017/20231。