ビートに抱かれて
「ビートに抱かれて」(When Doves Cry)はプリンスの楽曲。1984年の6枚目のスタジオ・アルバム『パープル・レイン』からの先行シングルとして1984年5月16日に発売された[1]。
「ビートに抱かれて」 | ||||
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プリンス の シングル | ||||
初出アルバム『パープル・レイン』 | ||||
B面 | セヴンティーン・デイズ (17 Days) | |||
リリース | ||||
規格 | 7インチ・レコード、12インチ・レコード、CDシングル | |||
録音 |
サンセット・サウンド・レコーダーズ[1] 1984年5月1日(ベーシック・トラック) 1984年5月2日(ベーシック・トラック、オーバーダブ) 1984年5月3日(ミックス) | |||
ジャンル | エクスペリメンタル・ポップ[2]、ネオ・サイケデリア[3]、シンセポップ、ソウル、アヴァン・ポップ、ファンク、ミネアポリス・サウンド、ミニマル[4][5] | |||
時間 | ||||
レーベル | ワーナー・ブラザース・レコード | |||
作詞・作曲 | プリンス | |||
プロデュース | プリンス | |||
ゴールドディスク | ||||
チャート最高順位 | ||||
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プリンス シングル 年表 | ||||
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「ビートに抱かれて」は世界的な大ヒットとなり、アメリカでは5週間にわたって全米ホット・チャートの頂点に立つなど彼の最初のナンバーワンシングルである。ビルボード誌によると、この曲は1984年のベストセラーシングルだった。米国だけでも200万枚を売り上げ、アメリカレコード協会からプラチナ認定を受けた[6][12]。1989年にその認定要件は引き下げられることになるが、その引き下げ前にソロアーティストが認定を勝ちとった最後のシングル曲である。
この曲は、『ローリング・ストーン』誌による「ローリング・ストーンの選ぶ歴代最高の500曲」(2021年発表)で37位を記録し[13][14][15]、ロックの殿堂にも登録されている[16]。
プリンスの死後、この曲はビルボード・ホット100で8位に再チャートインしたが、1984年9月1日以来この曲がトップ10に入るのは初めてのことだ。 2016年4月30日の時点で、米国で1,385,448枚を売り上げている[17]。
背景と構成
編集映画『プリンス/パープル・レイン』のDVDによると、プリンスは監督のアルバート・マグノーリから映画の特定の部分のテーマ(両親の不仲などの複雑な問題と恋愛について)に合う歌を書くように依頼された[1]。翌朝、プリンスは2曲を完成させたが。そのうちの1曲がこの曲だった。 プリンスの伝記作家であるペル・ニルセンによると、この歌はヴァニティ6(リード・シンガーのヴァニティ脱退後は「アポロニア6」と改名)のメンバーであり当時のガールフレンドでもあったスーザン・ムーンシーとの関係からインスピレーションを受けている[1]。
プリンスは、アルバム『パープル・レイン』に収録予定だった他のすべてのトラックが完成した後、この曲を作った。 彼自身が、ボーカルとすべての楽器を演奏した。 この曲で特徴的なのは、通常の黒人音楽のファンクや80年代のダンスソングでは必要不可欠であうベースギターの存在の欠落である[1][18][19]。プリンスは後年、もともとベースラインはあったが、歌手のジル・ジョーンズと相談し、あまりにもありきたりだからベースを収録しないことにした、と言っている[20]。それは結果的に、叙情的なテーマに合う緊張感と「何かが足りない」感覚を生み出すことに繋がった[1]。
この曲は、印象的なギターソロとLinn LM-1ドラムマシン、プリンスの呻き声のようなループされた喉声によって始まる。歌メロの後には、さらに長い、ギターとシンセサイザーのソロがあり、最後はクラシック音楽に触発されたキーボードのフレーズで終わる。キーボード奏者のDoctor Fink ことマット・フィンクは2014年、バロックシンセサイザーのソロは半分の速さにしたバッキングトラックに合わせて、1オクターブ下・半分の速さでプリンス自身が演奏し、その録音をスピードアップして完成させたということを明かした。その後、フィンクはソロを学び、アルバムの速度で演奏するように課された[21]。
ラジオ用に編集されたバージョンでは、長いギターとシンセサイザーのソロが始まると曲がフェードアウトするか、完全に削除され、エンディングまでスキップされる。
パープル・レイン・ツアー (Purple Rain Tour)のパフォーマンス中は、プリンス&ザ・レヴォリューションのベースプレーヤーであるブラウンマークは、ベースラインを含まない他の曲と同じく、その曲にもベースラインを追加した [22]。
キーはAマイナーである。
評価
編集この曲は、1984年7月7日から1984年8月4日の5週間にわたって米国で第1位をとり、ブルース・スプリングスティーンの「ダンシング・イン・ザ・ダーク」(Dancing in the Dark)をトップの座から遠ざけた。作表体系が違ったため、「ビートに抱かれて」はアメリカン・トップ40の年末カウントダウンでは年間2位シングルとして発表された(1位はポール・マッカートニー&マイケル・ジャクソンの「セイ・セイ・セイ」)[23]。『ヴィレッジ・ヴォイス』編集のパズ&ジョップの評論家投票では年間最優秀シングルに選ばれた。ビルボード誌は、「1984年度ホット・シングル100」(Billboard Year-End Hot 100 singles of 1984)に位置づけた。2016年、プリンスの死後、同曲はビルボード・ホット100に20位で再チャートインし、ピーク時には8位に達した。
Bサイドは、元々はアポロニア6のセルフタイトルアルバムに収録するべく作られた、カルトファンのお気に入り「セヴンティーン・デイズ」(17 Days)だった。 英国で発行された12インチシングルには、「セヴンティーン・デイズ」のほか、前の5thアルバム『1999』のタイトルトラック「1999」(1999)と「D.M.S.R.」の2つのトラックが含まれた。「セヴンティーン・デイズ」の正式なオリジナル・タイトル「17 Days (the rain will come down, then U will have 2 choose, if U believe, look 2 the dawn and U shall never lose) 」は、ホット100で1位を獲得した楽曲のB面収録曲としては最も長いタイトルである(85文字)。
「ビートに抱かれて」はプリンスの代表曲の1つになった。『スピン』誌は史上6位に、2021年発表の『ローリング・ストーン』誌では史上37位に位置づけられた。2006年、VH1の「80年代最高の100曲」では5位にランクインした。2008年10月13日には、オーストラリアVH1のトップ10ナンバーワンポップソング・カウントダウンで第2位に選ばれた。「80年代の80曲」ポッドキャストは、59位にランク付けしている[24]。
なお「ビートに抱かれて」は、1990年にM.C.ハマーのヒット曲「プレイ」(Pray)でサンプリングされたが、これはプリンスによって法的に許可された僅かな例の一つである。
ミュージック・ビデオ
編集プリンス自身が監督したミュージック・ビデオは、1984年6月にMTVで公開された。このビデオは、1985年のMTVビデオ・ミュージック・アワード (1985 MTV Video Music Awards)において「最優秀振り付け賞」(Best Choreography)にノミネートされた[25]。このビデオは、表現の過激さから、ネットワークの幹部の間で論争を巻き起こした。
トラック・リスト
編集7インチ・シングル(米国)
編集# | タイトル | 時間 |
---|---|---|
1. | 「ホエン・ドブス・クライ (When Doves Cry)」 | |
2. | 「セヴンティーン・デイズ (17 Days (The rain will come down, then U will have 2 choose. If U believe, look 2 the dawn and U shall never lose.))」 |
※日本盤も同じトラックである[27]。
12インチ・シングル(英国)
編集# | タイトル | 時間 |
---|---|---|
1. | 「ホエン・ドブス・クライ (When Doves Cry)」 | |
2. | 「セヴンティーン・デイズ (17 Days (The rain will come down, then U will have 2 choose. If U believe, look 2 the dawn and U shall never lose.))」 |
# | タイトル | 時間 |
---|---|---|
1. | 「1999 (1999)」 | |
2. | 「D.M.S.R. (D.M.S.R.)」 |
CDシングル(1989)
編集# | タイトル |
---|---|
1. | 「ホエン・ドブス・クライ (When Doves Cry)」 |
2. | 「パープル・レイン (Purple Rain)」(アルバム・ヴァージョン Album Version) |
チャート記録
編集週間
編集Chart (1984) | Peak position |
---|---|
Australia (Kent Music Report)[29] | 1 |
オーストリア (Ö3 Austria Top 40)[30] | 19 |
ベルギー (Ultratop 50 Flanders)[31] | 6 |
Belgium (VRT Top 30 Flanders)[32] | 7 |
Canada (CHUM)[33] | 1 |
Canada Top Singles (RPM)[34] | 1 |
Canada (The Record)[35] | 1 |
フランス (SNEP)[36] | 32 |
ドイツ (GfK Entertainment charts)[37] | 16 |
ARTIST OR SONG MANDATORY FIELDS FOR IRISH CHARTS | 2 |
オランダ (Dutch Top 40) | 5 |
オランダ (Single Top 100)[38] | 6 |
ニュージーランド (Recorded Music NZ)[39] | 2 |
ノルウェー (VG-lista)[40] | 10 |
スウェーデン (Sverigetopplistan)[41] | 18 |
スイス (Schweizer Hitparade)[42] | 17 |
UK シングルス (OCC)[43] | 4 |
US Billboard Hot 100[44] | 1 |
US Black Singles (Billboard)[44] | 1 |
US Dance/Disco Top 80 (Billboard)[44] | 1 |
US Cash Box[45] | 1 |
Chart (2016) | Peak position |
---|---|
オーストラリア (ARIA)[46] | 11 |
オーストリア (Ö3 Austria Top 40)[30] | 59 |
Belgium (Back Catalogue Singles Flanders)[47] | 2 |
カナダ (Canadian Hot 100)[48] | 29 |
フランス (SNEP)[36] | 11 |
ドイツ (GfK Entertainment charts)[37] | 49 |
YEAR AND WEEK MANDATORY FIELDS FOR IRISH CHARTS | 69 |
ニュージーランド (Recorded Music NZ)[39] | 35 |
ERROR: YOU MUST PROVIDE DATE FOR SCOTTISH CHART[49] | 10 |
スペイン (PROMUSICAE)[50] | 35 |
スイス (Schweizer Hitparade)[42] | 34 |
ERROR: MUST PROVIDE DATE FOR UK CHART[51] | 26 |
US Billboard Hot 100[52] | 8 |
US Hot R&B/Hip-Hop Songs (Billboard)[53] | 5 |
US Hot Rock & Alternative Songs (Billboard)[54] | 2 |
年間
編集Chart (1984) | Position |
---|---|
Australia (Kent Music Report)[55] | 14 |
New Zealand (Recorded Music NZ)[56] | 15 |
US Billboard Hot 100[57] | 1 |
オールタイム・ランキング
編集出版媒体(国) | ランキング名称 | 位 | 発表年度 |
---|---|---|---|
ブレンダー誌(米) (Blender) |
あなたが生れてからの最も偉大な500曲(1980–2005) (The 500 Greatest Songs Since You Were Born) |
169[58] | 2005 |
ビルボード(米) (Billboard) |
ホット100・60周年記念オールタイム(1958–2018) (Hot 100 60th Anniversary) |
123[59] | 2018 |
ローリング・ストーン誌(米) (Rolling Stone) |
歴代最高の500曲 (The 500 Greatest Songs of All Time) |
37[13][14] | 2021 |
ペースト(米) (Paste) |
ベスト・プリンス・ソングス50曲 (The 50 Best Prince Songs) |
3[60] | 2016 |
アメリカン・ソングライター(米) (American Songwriter) |
プリンス・ソングス・トップ10 (The Top 10 Prince Songs) |
2[61] | 2022 |
受賞・ノミネート
編集- 第12回アメリカン・ミュージック・アワード (American Music Awards of 1985)
- 最人気ソウル/R&B楽曲賞(Favorite Soul/R&B Song)受賞
- 最人気ポップ・ロック楽曲賞(Favorite Pop/Rock Song)ノミネート
- 最人気ポップ・ロックビデオ賞(Favorite Pop/Rock Video)ノミネート
- 最人気ソウル/R&Bビデオ賞(Favorite Soul/R&B Video)ノミネート
- 1984年ビルボード・イヤー・エンド賞 (Billboard Year-End)
- 最優秀ホップ・シングル賞 (Billboard Year-End number-one singles and albums)受賞
- 最優秀R&B/ソウル/ヒップホップ・シングル賞 (Billboard Year-End number-one singles and albums)受賞
- 1985年MTV ビデオ・ミュージック・アワード (1985 MTV Video Music Awards)
- 最優秀振付賞 (Best Choreography)ノミネート
- パズ&ジョップ評論家の投票
- 1984年のベストシングル受賞
カバー・アーティスト
編集- 子供の頃、アメリカの俳優兼歌手のクインドン・ターヴァ―が1996年の映画『ロミオ+ジュリエット』でこの曲をカバーした。 これは、サウンドトラックアルバム『ウィリアム・シェイクスピアのロミオ+ジュリエット』に収録され、そして1997年7月にオーストラリアで3位のヒットとなった[62]。
- ジニュワイン(1997年) - アルバム『Ginuwine... the Bachelor』に収録。
- 2016年のプリンスの死後、Choir!_Choir!_Choir!が 『1999』へのオマージュとして、1999人の人々と「ビートに抱かれて」をカバーした。それはトロントのマッセイホールで撮影された[63] [64]。
- 2018年、サム・ペリーがオーストラリアのテレビドラマ・シリーズ『The Voice』でこの曲をカバーし、「第7シーズン」の勝者となった[65]。
脚注
編集- ^ a b c d e f Prince and the Revolution「When Doves Cry」(Genius)
- ^ “25 Essential Prince Songs”. Rolling Stone. 24 April 2016閲覧。
- ^ “Purple Rain - Review”. AllMusic. 24 April 2016閲覧。
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- ^ “Otherworldly Creature, Benign Visitor: Prince Remembered, By Simon Price”. The Quietus (22 April 2016). 29 July 2017閲覧。
- ^ a b PRINCE-WHEN DOVES CRY(RIAA)
- ^ Prince & The Revolution When Doves Cry(BPI)
- ^ Prince-When Doves Cry(RMNZ)
- ^ Prince「Billboard Hot 100」(Billboard)
- ^ Prince「Hot R&B/Hip-Hop Songs」(Billboard)
- ^ Prince「Singles」(UK Official Charts)
- ^ "American single certifications – Prince – When Doves Cry". Recording Industry Association of America.
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引数が必須です。 (説明) - ^ a b 「The 500 Greatest Songs of All Time」 (Rolling Stone)
- ^ a b 「歴代最高の500曲」 (ローリング・ストーン・ジャパン)
- ^ “The 500 Greatest Songs of All Time” (英語). Rolling Stone (2021年9月15日). 2021年12月21日閲覧。
- ^ “Archived copy”. 2010年3月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年1月12日閲覧。
- ^ “Hip Hop Single Sales: Prince, Desiigner & Drake”. HipHopDX (April 30, 2016). April 30, 2016閲覧。
- ^ 「プロローグ――プリンスの魔法」(西寺 2015, pp. 16–19)
- ^ 「第2章 紫の革命――ビートに抱かれて(When Doves Cry)、パープル・レイン(Purple Rain)」(西寺 2015, pp. 78–84)
- ^ “Prince In Print”. Princetext.tripod.com. 2012年1月8日閲覧。
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- ^ ERROR: Billboard chart was invoked without providing an artist. Artist is a mandatory field for this call."{{{artist}}} Chart History (Hot R&B/Hip-Hop Songs)". Billboard.
- ^ ERROR: Billboard chart was invoked without providing an artist. Artist is a mandatory field for this call."{{{artist}}} Chart History (Hot Rock Songs)". Billboard.
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- ^ Sam Perry (looping artist)
参照資料
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- 西寺郷太『プリンス論』新潮新書、2015年9月。ISBN 978-4106106347。
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