ヒトツバタゴ
ヒトツバタゴ(一つ葉タゴ[4]・一つ葉たご[5]、Chionanthus retusus)とはモクセイ科ヒトツバタゴ属の一種。同じモクセイ科のトネリコ(別名「タゴ」)に似ており、トネリコが複葉であるのに対し、本種は小葉を持たない単葉であることから「一つ葉タゴ」の和名がある[6]。
ヒトツバタゴ | ||||||||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Chionanthus retusus Lindl. et Paxton (1852)[1] | ||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||
なお、別名はナンジャモンジャ[1][5]、ナンジャモンジャノキであるが、「ナンジャモンジャ」と名付けられる植物の樹種には、ヒトツバタゴのほかにクスノキ(樟)、ニレ(楡)、イヌザクラ(犬桜)、ボダイジュ(菩提樹)などがあり注意を要する[7]。中国名は、流蘇樹(別名:炭栗樹)[1]。
分布・生育地
編集日本では分布域が限られ、対馬、長野県、岐阜県の東濃地方の木曽川周辺、愛知県に隔離分布する珍しい分布形態をとる[5]。人為的に植えられ、公園などで見ることもある[5]。
形態・生態
編集落葉広葉樹の高木[5]。成木で樹高は20メートル (m) を超える。幹の樹皮は灰褐色で縦に切れ目が入る[5]。一年枝は細く、細かい毛がある[5]。若木の樹皮は、成木とは異なる色合いで、橙色を帯びており薄く剥がれる[5]。葉は長楕円形で4 - 10センチメートル (cm) 程度となり、長い葉柄を持ち対生する。
花期は5月ごろで[5]、新枝の枝先に10 cm程度円錐形に集散花序をつける。花冠は深く4裂する。雌雄異株であるが、雌花のみをつける株は存在せず、雄花をつける株と、両性花をつける株がある雄株・両性花異株である。秋に、直径1 cm程度の楕円形の果実をつけ、黒く熟す。
冬芽は円錐形で、冬芽を包む芽鱗には短毛が多くあり、枝先の頂芽は側芽よりも大きく、側芽は枝に対生する[5]。頂芽、側芽ともに副芽がつくことが多い[5]。葉痕は半円形で、維管束痕が弧状に多数並ぶ[5]。
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花
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幹
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若い果実
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熟した果実
日本における希少種
編集日本において本種は希少種のひとつであり、絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)に指定されている。天然での分布域も狭く、長野県、愛知県の木曽川流域、岐阜県東濃地方および長崎県対馬市に自生しており、それぞれの県のレッドデータブックに掲載されている。長野県および愛知県では絶滅危惧I類、岐阜県および長崎県では絶滅危惧II類に指定されている[8]。
愛知県犬山市池野西洞、岐阜県瑞浪市釜戸町、同県恵那市笠置町、同県中津川市蛭川の自生地は一括して国の天然記念物(「ヒトツバタゴ自生地」)に指定されている。他に瑞浪市大湫町、恵那市大井町、同市中野方町、中津川市苗木、同市落合新茶屋の自生地が岐阜県指定天然記念物、瑞浪市稲津町萩原の自生地が同市指定天然記念物、土岐市泉町白山神社境内のハナノキ・ヒトツバタゴが国の天然記念物となっている。また、長崎県対馬市上対馬町鰐浦地区には、約3000本の本種が自生しており、「鰐浦ヒトツバタゴ自生地」として国の天然記念物に指定されている。
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愛知県犬山市池野西洞の自生地
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岐阜県恵那市笠置町の自生地
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岐阜県土岐市泉町白山神社の自生地
保護上の位置づけ
編集- 絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)
利用
編集公園木、鉢植、花壇などに利用される。
近縁種
編集ヒトツバタゴ属の植物は木本であり、世界で約80種が知られる。多くの種は熱帯、亜熱帯域に分布するが、東アジアの本種、北アメリカのアメリカヒトツバタゴ(Chionanthus virginicus)の2種は主に温帯域に分布する。熱帯域のほとんどの種は常緑性であるが、温帯域の2種は落葉性である。常緑の種はLinociera属に分けられることがある[9]。
ヒトツバタゴ属(Chionanthos)は、Chionが「雪」、-anthosが「花」を意味する[4]。ヒトツバタゴ同様、雪のように白い花をつけることが多い。
- アメリカヒトツバタゴ Chionanthus virginicus
- アメリカヒトツバタゴ(英語名"White fringetree")は、ヒトツバタゴ属の一種。アメリカ東南部に産し、樹高は10m程度となる小高木。ヒトツバタゴと比較して葉はひとまわり大きく、花序は古い枝に腋生する。
自治体の木
編集脚注
編集- ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Chionanthus retusus Lindl. et Paxton ヒトツバタゴ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月17日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Chionanthus retusus Lindl. et Paxton var. serrulatus (Hayata) Koidz. ヒトツバタゴ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月17日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Chionanthus retusus Lindl. et Paxton var. coreanus (H.Lév.) Nakai ヒトツバタゴ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月17日閲覧。
- ^ a b ヒトツバタゴ【Chionanths retusus Lindl.et Paxton】 世界大百科事典第2版
- ^ a b c d e f g h i j k l 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 52
- ^ 記念碑と記念樹(pdf) 農業環境技術研究所・所内トピックス
- ^ 管野浩編 『雑学おもしろ事典』 p.72 日東書院 1991年
- ^ レッドリスト・ヒトツバタゴ 日本のレッドデータ検索システム
- ^ Chionanthus Flora of China
参考文献
編集- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、52頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 鈴木庸夫・菱山忠三郎・西田尚道・畔上能力・鳥居恒夫・新井二郎『春の花』山と溪谷社〈山渓ポケット図鑑 1〉、1995年3月。ISBN 978-4635070119。