ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア
「ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア」(Here, There and Everywhere)は、ビートルズの楽曲である。1966年に発売された7作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『リボルバー』に収録された。レノン=マッカートニー名義となっているが、ポール・マッカートニーによって書かれたラヴ・バラード[4][5]。作者であるマッカートニー自身のお気に入りの楽曲の1つとなっており、2000年に『モジョ』誌が発表した「100 Greatest Songs Of All Time」では第4位にランクインした[6]。
「ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア」 | ||||||||||
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ビートルズの楽曲 | ||||||||||
収録アルバム | 『リボルバー』 | |||||||||
英語名 | Here, There and Everywhere | |||||||||
リリース | 1966年8月5日 | |||||||||
録音 |
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ジャンル | ||||||||||
時間 | 2分25秒 | |||||||||
レーベル | パーロフォン | |||||||||
作詞者 | レノン=マッカートニー | |||||||||
作曲者 | レノン=マッカートニー | |||||||||
プロデュース | ジョージ・マーティン | |||||||||
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「ヒア・ゼア・アンド・エブリホエア」は、アルバム『リボルバー』のためのセッションの終盤にレコーディングが行われた楽曲で、直近に行なわれたザ・ビーチ・ボーイズのアルバム『ペット・サウンズ』のリスニングパーティーに参加したマッカートニーは、ブライアン・ウィルソン作の「神のみぞ知る」からインスピレーションを得て作曲した。
背景
編集ポール・マッカートニーは、本作のインスピレーションの源として、ブライアン・ウィルソン作の「神のみぞ知る」を挙げている[7]。この楽曲は、ザ・ビーチ・ボーイズが1966年に発売したアルバム『ペット・サウンズ』に収録された楽曲[8][9]で、同作が収録された『ペット・サウンズ』はビートルズが1965年に発売したアルバム『ラバー・ソウル』に影響を受けて制作されたアルバムだった[10]。マッカートニーとジョン・レノンは、1966年5月18日にザ・ウォルドーフ・ヒルトン・ロンドンで行なわれたビーチ・ボーイズのアルバム『ペット・サウンズ』のプライベート・リスニング・パーティに出席した[11]。
1990年にマッカートニーは、ザ・ビーチ・ボーイズの伝記作家であるデヴィッド・リーフとの対談で、本作の冒頭におけるマッカートニーとレノンが考えたハーモニーについて、「ザ・ビーチ・ボーイズから影響を受けたのは、ちょうどこの冒頭の部分だ」と語っている[12]。
マッカートニーは、1966年6月初旬にウェイブリッジにあるレノンの自宅で、眠っているレノンが目を覚ますのを待っている間に「ヒア・ゼア・アンド・エブリホエア」を書き始めた[12]。マッカートニーは「僕はギターを持ってプールの側に置いてあったサンチェアに座って、Eコードをかき鳴らし始めた。そしてすぐにいくつかのコードが浮かんで、ジョンが目を覚ますまでにある程度書き上げていたから、部屋に持ち込んで仕上げにかかったよ」と振り返っている[13]。
レコーディング
編集「ヒア・ゼア・アンド・エブリホエア」は、EMIレコーディング・スタジオで行なわれたアルバム『リボルバー』のレコーディング・セッションの終盤に録音された楽曲[14]で、6月14日、16日、17日の3回のセッションで取り組まれた[15]。ベーシック・トラックを13テイク録音した後、オーバー・ダビングが施された[16]。
本作はマッカートニー、レノン、ジョージ・ハリスンが3回のセッションの大半を費やして仕上げたハーモニーが特徴となっていて[1]、前述のザ・ビーチ・ボーイズからの影響だけでなく、マリアンヌ・フェイスフルの歌唱法も取り入れられている[4]。本作におけるマッカートニーのリード・ボーカルは、マルチトラック録音したもの[17]。曲の最後には管楽器を思わせる音色が含まれているが、このほかにレスリースピーカーを通してマンドリンのような音色に変えたリードギターのパートも試された[15]。
リリース・評価
編集1966年8月に『リボルバー』が発売され、「ヒア・ゼア・アンド・エブリホエア」はハリスン作のインド音楽の様式が取り入れられた「ラヴ・ユー・トゥ」と、童歌の「イエロー・サブマリン」の間の5曲目に収録された[19]。音楽評論家のティム・ライリーは、アルバムにおける曲順について、「『ヒア・ゼア・アンド・エブリホエア』が、『ラヴ・ユー・トゥ』の持つエロティシズムを“飼い慣し”ている」とし、「マッカートニーがこれまでに作曲した中で最も完璧な曲」として称賛している[20]。『オールミュージック』のリッチー・アンターバーガーは、本作について「『ラブ・バラード』というジャンルへの傑出した貢献」とし、「演奏の繊細さが雅で、官能的なイメージがより明確で、欲望と充実感が具体的に表現されている」と評している[21]。
音楽評論家のイアン・マクドナルドは、本作における「音楽の創意工夫」を称賛する一方で、「ソフトフォーカスの魅力のために、曲全体が安っぽくてかなり陰気」と評している[15]。ジェームス・ペローネは「シニア・プロムのバンドのセットリストに入っていそうな、1960年代半ばのラブ・バラード」とし、「リスナーにとっては『甘ったるく、感傷的すぎる』ように思える」と評している[22]。『コンシークエンス・オブ・サウンド』のクリス・コプランは、アルバム『リボルバー』における「一見場違いな曲」として本作と「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」の2曲を挙げている[23]。
作者であるマッカートニー自身は、お気に入りの楽曲として本作を「最高傑作のひとつ」として挙げており[4]、プロデューサーのジョージ・マーティンも本作をお気に入りの楽曲として挙げている。また、レノンは曲が完成した際にマッカートニーに対して「本当に素晴らしい曲だ。大好きな曲だよ」と伝えており[24]、1980年の『プレイボーイ』誌のインタビューでも「ビートルズの曲の中で僕のお気に入りの1つ」と語っている[5]。
2000年に『モジョ』誌が発表した「100 Greatest Songs Of All Time」では第4位[6]、2004年に『ローリング・ストーン』誌が発表した「100 Greatest Beatles Songs」の第25位にランクインした[13]。
マッカートニーは、1984年に公開された映画『ヤァ!ブロード・ストリート』のサウンドトラックとして再録音した。この時に録音された演奏は、同作のサウンドトラック・アルバムに収録されている[25]。その後、1991年の「Unplugged Tour」、1993年の「New World Tour」、2002年の「Driving World Tour」、2003年の「Back in the World Tour」などのコンサート・ツアーで演奏されており、『公式海賊盤』(1991年)、『ポール・イズ・ライブ』(1993年)、『バック・イン・ザ・U.S. -ライブ2002』(2002年)、『バック・イン・ザ・ワールド』(2003年)などのライブ・アルバムにライブ音源が収録されている[25]。
クレジット
編集※出典[17]
カバー、文化的影響など
編集オールミュージックのリッチー・アンターバーガーは、「最も有名なカバー・バージョン」としてエミルー・ハリスによるカバー・バージョンを挙げている[21]。エミルー・ハリスによるカバー・バージョンは、1975年に発売されたアルバム『エリート・ホテル』に収録された[27]後にシングル・カットされ、翌年のBillboard Hot 100では最高位65位[28]、アダルト・コンテンポラリー・チャートで最高位13位を記録した[29]。この他にも、ビージー・アデール[30]、クレイ・エイケン、デイヴィッド・ベノワ、ジョージ・ベンソン[30]、ジーナ・ジェフィリーズ、ピーター・ブラインホルト、ペトゥラ・クラーク、ペリー・コモ、カウント・ベイシー楽団[30]、ダレン・デイ、ジョン・デンバー、ロミナ・パワー、セリーヌ・ディオン[30]、アリク・アインシュタイン、マット・モンロー、ホセ・フェリシアーノ(インストゥルメンタル)[30]、ザ・フォーモスト、ジェリー・ガルシア&マール・サンダース(インストゥルメンタル)[31]、ボビー・ジェントリー、ステファン・グラッペリー[30]、オーフラ・ハーノイ[30]、フライング・ピケッツ、ジェイ・アンド・ジ・アメリカンズ、レターメン、ロックスリー、ケニー・ロギンス[30]、クロディーヌ・ロンジェ、ジョン・マクダーモット、カーメン・マクレエ[30]、オリビア・オン、ジョージ・シアリング[30]、シンガーズ・アンリミテッド、シセル、イェラン・セルシェル[30]、マリーナ・ヴェレニキナ、ホセ・マリ・チャン、カミロ・セスト、ジョン・ウィリアムズ(インストゥルメンタル)、アンディ・ウィリアムス、デヴィッド・ギルモア、ウンベルト・トッツィ、ブールー&エリオス・フェレ(インストゥルメンタル)らによってカバーされた[32]。日本でも坂本真綾[33]、深町純[34]、山下和仁、キャンディーズ、Mi-Ke、KAN(弦楽四重奏版)らによってカバーされた。
シャドウズのブルース・ウェルチは自伝の中で、マッカートニーがビートルズの楽曲としてレコーディングする前に、シャドウズのリードギタリストであるハンク・マーヴィンに本作を提供したことを明かした[35]。その後、マーヴィンは2007年に発売したアルバム『Guitar Man』でインストゥルメンタルとしてカバーした[36]。
アメリカのテレビ局NBCで放送されたシチュエーション・コメディ『フレンズ』の結婚式のシーンで、本作がスティールパンで演奏された。日本では日産・サニー(B12型)のCMソングとして使用された[37]。
フランク・オーシャンのWhite Ferrariでは、本曲がサンプリングされている。
脚注
編集出典
編集- ^ a b Pollack 1994.
- ^ Moorefield 2005, p. 35.
- ^ Williams, Stereo (2016年8月5日). “The Beatles' 'Revolver' Turns 50: A Psychedelic Masterpiece That Rewrote the Rules of Rock”. The Daily Beast 2021年6月27日閲覧。
- ^ a b c Miles 1997, pp. 285–286.
- ^ a b Sheff 2000, p. 179.
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- ^ Rodriguez 2012, p. 78.
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- ^ Rodriguez 2012, pp. 77–78.
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- ^ a b “100 Greatest Beatles Songs: 25 - 'Here, There and Everywhere'”. Rolling Stone (2011年9月19日). 2020年11月15日閲覧。
- ^ Everett 1999, pp. 59–60.
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参考文献
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- Miles, Barry (2001). The Beatles Diary Volume 1: The Beatles Years. London: Omnibus Press. ISBN 0-7119-8308-9
- Moorefield, Virgil (2005). The producer as composer: shaping the sounds of popular music. MIT Press. ISBN 0-262-13457-8
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- Pollack, Alan W. (1994年). “Notes on 'Here, There, And Everywhere'”. 2020年11月15日閲覧。
- Riley, Tim (1988). Tell Me Why: The Beatles: Album By Album, Song By Song, The Sixties And After. Alfred A. Knopf. ISBN 978-0-394-55061-9
- Rodriguez, Robert (2012). Revolver: How the Beatles Reimagined Rock 'n' Roll. Milwaukee, WI: Backbeat Books. ISBN 978-1-61713-009-0
- Sheff, David (2000). All We Are Saying: The Last Major Interview with John Lennon and Yoko Ono. New York: St. Martin's Press. ISBN 0-312-25464-4
- Turner, Steve (2016). Beatles '66: The Revolutionary Year. New York, NY: HarperLuxe. ISBN 978-0-06-249713-0
- Welch, Bruce (1989). A Life In The Shadows. Viking Books
- Womack, Kenneth (2007). Long and Winding Roads: The Evolving Artistry of the Beatles. Continuum. ISBN 978-0-8264-1746-6
- Womack, Kenneth (2014). The Beatles Encyclopedia: Everything Fab Four. Santa Barbara, California: ABC-CLIO. ISBN 1-440-84427-5
外部リンク
編集- Here, There and Everywhere - The Beatles