虫刺症
虫刺症(ちゅうししょう)とは、昆虫類を含む虫に刺された時にできる傷であり、外傷の一つである。この他に刺咬症(しこうしょう)、蜂の場合は蜂刺症(はちししょう)ともよばれる。症状が日常的には「虫刺され」といわれることが多い。便宜上、刺された場合のみではなく咬まれた場合も下記に記す。
一般事項
編集蚊・ブヨ・ダニ・アブなどに刺されたり、毛虫や毒蛾にかぶれた場合、ステロイド外用剤(軟膏、クリーム)を塗ると効果的である。また冷たいタオルなどで患部を冷やすと、かゆみや痛みが和らぐ(局所冷罨法)。ひどい場合は、ステロイドの内服や注射を行うこともある。
蜂刺傷
編集蜂に刺されて恐いのは、全身にアレルギー反応が起こり、アナフィラキシーショックで死亡する場合である。日本では年間20〜40人程度、多い年では70人以上の死者を出している。全身の蕁麻疹、呼吸困難、気分不快、冷や汗、めまいなどの症状が起こった場合は、ショックに準じた治療が必要である。ショック症状は、刺傷から数分で始まることもあり、このような状態になった場合、ためらわず直ちに119番に電話し、救急車を要請すること。
刺された場所が1〜2日後に腫れたり痛んだりすることがある。普通の皮膚炎に準じた治療、すなわちステロイド薬の外用・内服・注射で対処する。これ自体は命に関わるものではない。
- 対処法についてはこちらの項も参照。
ムカデ咬傷 (Centipede bite)
編集ムカデ毒も蜂毒(Bee venom、アピトキシン、Apitoxin)と同じようにアレルギー反応を起こすことがあり、対処法も蜂と同じである。就眠中に咬まれることが多く、咬まれた直後に激しい痛みに襲われ、局所が腫れて痛む。ステープラーの針で穴を空けたような傷が残るのが特徴的。同じくステロイド外用、内服、注射が奏功する。傷部が感染することがあり、抗菌薬の内服も行う。
- ムカデによる虫咬傷では、温熱によりムカデ毒が変性・失活し、症状が軽快する。
- ムカデ毒を失活させた後、氷で冷やすと血液循環が低下し、炎症が鎮静して、痛みが軽減する[2]。
サソリ刺傷
編集メキシコではサソリ刺傷で年間2000人の死亡者が見られ、イスラエル、インドにおいても、サソリ刺傷による高い死亡率が報告されている。ナトリウムチャネルに作用して、筋肉の痙攣や呼吸困難を引き起こす。治療には、抗サソリ毒血清が有効である。
ダニ刺傷
編集ダニに刺されても、局所の症状はないことが多いが、ツツガムシ病、日本紅斑熱、ライム病などに注意が必要である。ダニが皮膚に食い込んだ場合は、自分で抜かず医師の処置が必要である。
ダニアレルギーの場合、全身に発疹が出現する。
蚊刺傷
編集蚊に刺された場合、局所的には軽度の炎症で済むが、日本脳炎に注意が必要である。熱帯へ渡航の際は、マラリア、ウエストナイル熱、デング熱、ジカ熱にも注意が必要となる。
脚注
編集- ^ 日経メディカル:泣かせない小児診療ABC第14回 http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/series/yokoi/201405/536081.html
- ^ メルクマニュアル医学百科 最新 家庭版