ノストセラス科
ノストセラス科(学名:Nostoceratidae)は、後期白亜紀の海に生息していたアンモナイトの科。このグループに属するアンモナイトは全て異常巻きアンモナイトであり、ディプロモセラス科の祖先にあたる系統でもある。
ノストセラス科 | ||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ニッポニテス・ミラビリス(左上)、ニッポニテス・バッカス(下)、エゾセラス・ノドサム(右上)
| ||||||||||||||||||
地質時代 | ||||||||||||||||||
後期白亜紀セノマニアン - マーストリヒチアン[1] 99.7–66.043 Ma | ||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||
| ||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||
Nostoceratidae Hyat, 1894 | ||||||||||||||||||
属 | ||||||||||||||||||
本文参照 |
命名
編集1894年にノストセラス属をタイプ属としてHyattが提唱した。ジュニアシノニムとしては、1952年にWrightが提唱したジョウアニセラス科(Jouaniceratidae)がいる[1]。
特徴
編集かつて異常巻きアンモナイトは単一のグループが衰退し絶滅に近づく時期に見せた異常な進化の行き止まりと考えられていたが、種数や個体数が豊富であることから適応放散の結果と見なされるようになった[2]。ノストセラス科のアンモナイトは一般的に成長初期 - 中期段階では螺環が塔のように円錐形に巻き、後期段階では螺旋から外れてフック状の構造をなす[3]。
岡本隆によるモデルでは、このような殻は通常のアンモナイトのような湾曲成長に"ひねり"が加わることで形成されると説明される。成長初期に底棲生活を送った後に海中を浮遊して生活する生態であった場合、浮力を得て体が傾いてしまうため、常に殻の開口部が同じ向きになるよう重心を調整するべく殻の伸長方向を調整している。その結果として異常巻きとして知られる形状が生み出されており、その細かいバランスは属や種によって大きく異なる[4]。
進化
編集同じく異常巻きアンモナイトであるスカラリテスをはじめとするディプロモセラス科はノストセラス科のユーボストリコセラス属から枝分かれした分類群であることが指摘されている[5][6]。また、真っ直ぐな殻を持つバキュリテスに代表されるバキュリテス科もノストセラス科から進化した可能性が棚部らにより1981年に指摘されている[注 1][6]。
なお、棚部らの論文にはディプロモセラス科とノストセラス科の一部が掲載されたクラドグラムが示されており、ノストセラス科の属のうちユーボストリコセラス属はツリリテス科のツリリトイデス属から、ハイファントセラス属はツリリトイデス属または同じくツリリテス科のシュードヘリコセラス属から派生したとされている。ただし、ディプロモセラス科に分類されているシュードオキシベロセラス、シュルエテレラ、ネオクリオセラスが同クラドグラムではノストセラス科として扱われており、2021年現在の知見とはある程度の齟齬があることに注意されたい[6]。
産地
編集化石は世界各地から産出しており、Fossilworksによると南極大陸、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カメルーン、カナダ、デンマーク、エジプト、フランス、ドイツ、イラク、イタリア、日本、メキシコ、オランダ、ナイジェリア、オマーン、ペルー、ロシア、南アフリカ共和国、スペイン、タジキスタン、トルコ、トルクメニスタン、イギリス、アメリカ合衆国、ウズベキスタン、ベネズエラで報告されている[1]。
属
編集日本では北海道蝦夷層群のユーボストリコセラス、ニッポニテス、エゾセラス、ハイファントセラスが、四国和泉層群のディディモセラス、ボストリコセラス、プラビトセラスが代表的である[2][3]。以下、注釈のないものはFossilworksに基づく[1]。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c d “†family Nostoceratidae Hyatt 1894 (ammonite)”. Fossilworks. マッコーリー大学. 2021年1月24日閲覧。
- ^ a b c 森伸一『北海道羽幌地域のアンモナイト』羽幌古生物研究会(編)(第2版)、北海道新聞社事業局出版センター、2012年、81頁。ISBN 978-4-86368-029-6。
- ^ a b 両角芳郎. “阿讃山地から産出するノストセラス科アンモナイト”. 徳島県立博物館. 2021年1月24日閲覧。
- ^ 近藤滋 (2018年3月30日). “白亜紀からの挑戦状”. Kondo Labo. 大阪大学大学院生命機能研究科近藤研究室. 2021年1月25日閲覧。
- ^ “白亜紀ディプロモセラス科アンモナイトの適応放散に関する進化古生物学的研究”. 科学研究費助成事業データベース (2016年4月21日). 2021年1月19日閲覧。
- ^ a b c 棚部一成; 小畠郁生; 二上政夫 (1981). “後期白亜紀異常巻アンモナイト類の初期殻形態”. 日本古生物学會報告・紀事 新編 (日本地質学会) 1981 (124): 215-234. doi:10.14825/prpsj1951.1981.124_215 .
- ^ Ann D. Pasch & Kevin C. May. (2001). “Taphonomy and paleoenvironment of a hadrosaur (Dinosauria) from the Matanuska Formation (Turonian) in South-Central Alaska”. In Darren H. Tanke & Kenneth Carpenter. Mesozoic Vertebrate Life. Indiana University Press. pp. 219–236. ISBN 978-0-253-33907-2