ネタバレ
ネタバレ(あるいはネタバラシ[1])とは、作品(小説、劇、テレビ番組、映画、漫画、ゲームなど)の内容のうちの、物語上の仕掛けや結末といった重要な部分を暴露してしまうこと、またはその情報自体を指す[2]。物語性のある作品以外でも、生中継ではないスポーツの勝敗[3]、プレゼントやサプライズ演出の内容などが、知らない者に対して露見することに対しても用いられる[4][5]。
概要
編集「ネタ」は、「種(たね)」の倒語で[6][7]、この場合は物語の仕掛けを意味し[2]、特に詳細な設定や物語の核心といった[7][信頼性要検証]、作品の内容や結末のことを指す[2][注 1] 。「バレ」とは隠しごとの露見を意味する「バレる」に由来する[7][2]。つまり、ネタがバレてしまうことをいう[2]。英語では、害するを意味するスポイル(spoil)から、楽しみを害するという意味合いで「スポイラー(spoiler)」と呼ばれる[要出典]。
「ネタバレ」という言葉自体は、日本では平成期に入ってからインターネットで使われ始めた俗語で、BBS、ブログ、SNSなどのウェブサイトで「このサイト(BBS)はネタバレ禁止」というように使用するインターネットユーザが使いはじめた[7][信頼性要検証]。
感想、評論、解題などにおいては、その作品を読んだり、観たりした者が、作品の内容に触れる必要があることがある。しかし、読者(視聴者)に驚愕を与える目的でどんでん返しが用意されている場合や、推理小説の犯人やゲームのシナリオなど真相を明らかにすると、未読(未視聴)者の楽しみを奪うことになると信じられている[8][9]。通常、人間は自分の記憶を自由に消すことはできないため、作品を期待している者は大きなショックを受けると考えられている[9]。
そこで、対象となる作品を明示した「ネタバレ注意」を掲示し、あらかじめ警告を与えることで、未読者の楽しみを守ろうとする考え方が広まった[7]。
インターネット上では掲示板やブログといった情報の発信や、検索エンジンなどを用いた情報の収集が容易であるため、意図せずネタバレを広めてしまったり読んでしまったりする状況も多く起こっており、ネタバレを防ぐための手段も模索されている[4]。
公開前のネタバレ
編集この節には独自研究が含まれているおそれがあります。 |
主として発売日前にフライングゲットした漫画やゲームソフトなどを原因とする、正規公開前のネタバレが特別に問題とされる場合もある。民放の地上波で放送されるテレビドラマ・テレビアニメなども、地域によって放送されなかったり放送日が遅れたりする場合には、同様の問題が生じる。また、漫画・アニメ・ゲームなどの制作スタッフが守秘義務を犯して暴露するか、あるいは過失で必要以上に情報を公開し、結果としてネタバレになってしまうこともある。場合によってはスタッフが意図的に微少なネタバレと成り得る情報を漏洩し、それを黙認するケースもある。
これらは早バレなどと呼ばれ、制作者側でないものが行った場合には主に「著作者人格権#公表権」について罪を問われることがある。
テレビ番組の収録では出演者・スタッフ・番組の観覧者が放送前の番組内容と放送上、自主規制音で伏せられた内容などをSNSなどで口外することは禁止されている[10]。
インターネットコミュニティとネタバレ
編集ネット掲示板の、該当する作品に関連するスレッド、あるいは多くの人が見る可能性の高い雑談系スレッドなどに、未鑑賞の人に嫌がらせする目的で故意にネタバレを書き込むケースもある。
ネットコミュニティによっては、
- 正規の公開日までネタバレ禁止
- 正規の公開日から2日 - 3日以上[要出典]経過するまで禁止(地域差などによる公開日の違いを考慮)
- 単行本の発売日までネタバレ禁止(連載漫画などの場合)
などのルールが敷かれることもある。
ネタバレに関する社会的事例
編集- 厳重に保護されたケース
- 2007年7月21日に販売された『ハリー・ポッターシリーズ』完結編となる『ハリー・ポッターと死の秘宝』では、日本円で約26億円をかけて発売日前の情報漏洩が発生しないよう厳重な管理がおこなわれたが、一部で情報が流出しネタバレしてしまった[注 2]。
- スパイク・チュンソフト(旧・スパイク)のコンピュータゲーム「ダンガンロンパシリーズ」は、「発売後も含めてネット上でのネタバレの拡散を禁止」する旨を発売前に告知している[要出典][11]。アトラスのゲーム『ペルソナ5』は同様のネタバレ自粛依頼に加え、ネタバレを拡散した者に対して法的措置も検討する旨を警告している[12][13]。
- 警告を受けたケース
- 2014年(平成26年)、まとめサイト「ナルトちゃんねる」の記事に対し大手出版社が警告をおこない、同サイトはネタバレに該当する記事をすべて削除した[14]。出版社は今後、ネタバレ・まとめサイトについては事前の警告なく法的手段をとる可能性があると伝えてきたという[14][15]。
- 訴訟に発展したケース
- 1987年(昭和62年)、ゲーム雑誌『ハイスコア』に掲載されたゲーム『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』のネタバレ記事に対し、発売元のエニックス(現スクウェア・エニックス)から裁判所に仮処分申請が出され、出版元のハイスコアメディアワークに対して発行停止命令が下された。類似の事件については攻略本の項も参照のこと。
- 逮捕されたケース
- 2017年(平成29年)9月6日、広告収入目的で人気漫画『ONE PIECE(ワンピース)』を始めとする漫画の画像を発売前にウェブ掲載していたとして、早売りネタバレまとめサイトの管理人5人が逮捕された[16]。逮捕理由は無断転載による著作権法違反(公衆送信権侵害、出版権侵害)だが、これを機に同種のネタバレサイトの閉鎖が相次ぐようになったとされる[17]。
- 情報開示命令
ネタバレは作品の楽しみを奪うのか否か
編集一般的に、ネタバレはこれから作品を鑑賞しようとしている人の楽しみを奪い、作品の魅力を台無しにしてしまうものであると考えられている[8][20]。
ところがこの考えに反する研究結果もある。2011年にカリフォルニア州立大学心理学部が学生30人を対象に行った実験では、これから読む推理小説の結末を知らされずに読んだ読者よりも、結末に関するネタバレを知らされていた読者の方が、作品を楽しめたという評価が高くなるという結果が得られた[8][9][21][22]。研究者はこの実験結果を、あらかじめ結末を知ることによって作品のプロットや散りばめられた伏線に対する理解が深まり、その結果として自分が理解しやすい内容を好ましく感じる脳の作用が反映された結果だと推測している[9][21]。
脚注
編集注釈
編集- ^ その他の用法については「ネタ」項、またウィクショナリー「ネタ」を参照。
- ^ 詳細は「ハリー・ポッターと死の秘宝#公表禁止」項を参照。
出典
編集- ^ 松永 2018.
- ^ a b c d e “ねたばれ”, デジタル大辞泉(goo辞書), 小学館 2012年2月12日閲覧。
- ^ 白鳥, ほか 2018.
- ^ a b 池谷勇人 (2012年3月16日). “もう「犯人はヤス」を見なくて済む? 「ネタバレ防止」をマジメに研究する”. ねとらぼ. ITmedia. 2012年3月19日閲覧。
- ^ 牧島夢加 (2021年6月16日). “Z世代に流行する「ネタバレ消費」とは? “失敗したくない”若者のホンネ”. Business Insider Japan. 株式会社メディアジーン. 2024年1月18日閲覧。
- ^ “ねた”, デジタル大辞泉(goo辞書), 小学館 2012年6月23日閲覧。
- ^ a b c d e “ネタバレ”, 日本語俗語辞書, ジャストレ 2012年2月12日閲覧。
- ^ a b c “ネタバレにマイナスの効果はなし 研究で明らかに”. 映画.com. エイガ・ドット・コム (2011年8月14日). 2011年8月25日閲覧。
- ^ a b c d 池谷勇人 (2011年8月16日). “ネタバレがあった方が物語は楽しめる? カリフォルニア大学の調査で明らかに”. ITmediaガジェット. ITmedia. 2011年8月25日閲覧。
- ^ “人気番組の観覧者がネットで暴露! 相次ぐ実名公開に業界の反応は?”. サイゾーウーマン. 株式会社サイゾー (2011年12月10日). 2024年1月18日閲覧。
- ^ Keiichi Yokoyama (2022年12月15日). “『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』12月24日に配信規制が解禁へ。エンディングまでのプレイ動画公開が可能になる”. AUTOMATON. 株式会社アクティブゲーミングメディア. 2024年1月18日閲覧。
- ^ 今藤祐馬 (2016年9月13日). “「ペルソナ5」公式がネタバレ自粛のお願い 動画投稿だけでなくツイートも”. ねとらぼ. ITmedia. 2024年1月18日閲覧。 “ジュスティーヌからは「ネタバレ動画を投稿された方は、我らベルベットルームの住人が厳しい刑罰を与えることも辞さない構えです」とのコメントも。”
- ^ “アトラスから『ペルソナ5』ネタバレ自粛のお願い”. 株式会社アトラス (2016年9月12日). 2024年1月18日閲覧。
- ^ a b 牧島夢加 (2014年3月6日). “ネットの「全文ネタバレ」に出版社が“断固たる措置”? サイト運営者が過去記事を削除する動き”. ITmedia NEWS. ITmedia. 2024年1月18日閲覧。
- ^ 今藤祐馬 (2014年3月6日). “「ネタバレ・まとめサイト」に出版社動く 警告なく法的手段とる可能性も”. ねとらぼ. ITmedia. 2014年3月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年9月6日閲覧。
- ^ “人気マンガをネットに掲載容疑で逮捕 多額の広告収入か”. NHKニュース (日本放送協会). (2017年9月6日). オリジナルの2017年9月6日時点におけるアーカイブ。 2023年12月21日閲覧。
- ^ “ネタバレサイト:摘発影響? 閉鎖相次ぐ”. 毎日新聞. 毎日新聞社 (2017年11月17日). 2018年3月12日閲覧。
- ^ ““ネタバレサイト” セリフ無断掲載は著作権侵害 東京地裁”. NHKニュース (日本放送協会). (2021年3月31日). オリジナルの2021年4月2日時点におけるアーカイブ。 2023年12月21日閲覧。
- ^ 東京地方裁判所判決 2021年3月26日 、令和2(ワ)26867、『発信者情報開示請求事件』。
- ^ “[関心アリ!]ネタバレ 不快か参考か…続きへの興味喪失4割・内容見た上で選別”. 読売新聞. 読売新聞社 (2022年4月5日). 2024年1月18日閲覧。
- ^ a b Leavitt, Christenfeld 2011.
- ^ Krockow 2021.
参考文献
編集- 松永伸司「ネタバレは悪くて悪くない : ネタバレ論争折衷派」『reserchmap』2018年11月23日 。 ※ワークショップ「ネタバレの美学」2018年11月23日(現代美学研究会主催、大妻女子大学千代田キャンパス)口頭発表原稿。のち『フィルカル』Vol. 4 No. 2に収録。
- 白鳥裕士、牧良樹、中村聡史、小松孝徳「スポーツにおけるネタバレの特性調査と判定手法の検討」『情報処理学会論文誌』第59巻第3号、情報処理学会、2018年3月、882-893頁、CRID 1050564287863022336、ISSN 0387-5806。
- Leavitt, Jonathan D.; Christenfeld, Nicholas J. S. (2011-08-12). “Story Spoilers Don’t Spoil Stories” (英語). Psychological Science (Association for Psychological Science) 22 (9). doi:10.1177/0956797611417007. ISSN 1467-9280.
- Krockow, Eva M. (2021年7月2日). “Spoiler Alert: Why Some People Need to Know How It Ends” (英語). Psychology Today. Sussex Publishers. 2024年1月18日閲覧。
関連文献
編集- 森功次、高田敦史、渡辺一樹、松永伸司、竹内未生「特集 ネタバレの美学」『フィルカル : 分析哲学と文化をつなぐ』第4巻第2号、株式会社ミュー、2019年7月、5-146頁、ISBN 978-4943995227、NCID AA12749897、国立国会図書館書誌ID:027224770。
- 宮田健 (2017年03月28日). “サプライズが台無し! そんな“ネタバレSNS”から身を守る方法:半径300メートルのIT” - ITmedia エンタープライズ
- 牧良樹 (2017年12月29日). “ACIS2017で「Do Manga Spoilers Spoil Manga?」というタイトルで発表してきました!” - 中村聡史研究室
- 森奏恵・佐藤詩音 (2022年). “【佳作】ネタバレが若者の映画視聴の決定に与える影響の分析”(pdf) . “Text Mining Studio 学生研究奨励賞(2020年代前半)” - 株式会社NTTデータ数理システム
- 牧島夢加 (2021年6月16日). “Z世代に流行する「ネタバレ消費」とは? “失敗したくない”若者のホンネ” - Business Insider Japan
- ニュースで学ぶ現代英語 - NHKゴガク
関連項目
編集外部リンク
編集- ネタバレ - 日本語俗語辞書