ネズミザメ目
ネズミザメ目 (Lamniformes Garman, 1885) は、軟骨魚綱板鰓亜綱の下位分類群で、サメのグループの一つ。8科10属16種で構成される。世界中の熱帯から温帯の海域に広く分布し、一部は亜寒帯にも進出する。生息域は沿岸から外洋、深海まで幅広いが、汽水域や淡水域には出現しない。ネズミザメ目は単系統でありながら、その構成種は多様な形態、生態をもち、特殊なサメが多い。
ネズミザメ目 | ||||||||||||||||||
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ニシネズミザメ
Lamna nasus | ||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||
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下位分類群 | ||||||||||||||||||
本文参照
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形態
編集口は目の後方まで開く。目には瞬膜がない。鰓裂は5対。背鰭は2基でいずれも背鰭前棘を欠く。臀鰭をもつ。らせん腸は環状型である。
ネズミザメ目のサメは概ね大型で、最小のミズワニを除けば、最大全長3mを超えるものがほとんどである。最大のウバザメは全長12mに達し、大きさではジンベエザメに次ぐ最大級のサメ。ウバザメと同じプランクトン食のメガマウスザメや、肉食性魚類としては最大のホホジロザメなども全長5mを超える巨大なサメである。
生態
編集オナガザメ科、ネズミザメ科は奇網という周囲の海水温よりも体温を高く保つ生理学的機構を備えており、内温性と呼ばれる。これはマグロやカジキなどにも見られ、収斂進化の一例と考えられる。奇網は動脈・静脈が複雑に絡み合ってできる一種の熱交換システムのような構造体がその重要な役割を担っている。これらの内温性サメ類は非常に活動的で高い運動能力をもち、長距離を回遊したり、瞬発的に高速で獲物に襲いかかることができる。空中に勢い良くジャンプするブリーチング行動もその一つである。
繁殖は胎生で、胎仔は未受精卵を食べて成長する卵食型と呼ばれる様式が基本である。同じ胎生でも卵黄のみに依存する様式に比べ、産仔数は少なく、大きな子どもを産むという特徴がある。ミツクリザメ、メガマウス、ウバザメでは確認されていないが、卵食型と予想される。シロワニの胎仔は未受精卵に加え、他の胎仔を共食いする子宮内共食い行動が知られており、ネズミザメ目の中でも高度に特殊化している(卵食・共食い型)。
分類
編集ネズミザメ目 Lamniformes は、8科に分かれる。
ネズミザメ目の原型に相当する高次グループを最初に提唱したのはGarman (1885) である。しかしLamnaeと名付けられたこのグループはカグラザメ類、ネコザメ類、カスザメ類を除くほとんどのサメを含むもので、現在の定義とは異なっている。Jordan (1923) は、Lamnoidei 系 (series)として初めてネズミザメ類のみを含む独立したグループを提唱した。この体系を基盤にして、1970年代に現在のような形のネズミザメ目の体系が出来上がった。
オオワニザメ科
編集オオワニザメ科 Odontaspididaeは、オオワニザメ O. ferox など1属2種。 オオワニザメ科が単系統であるか否かには結論が出ていなかったが、2020年に明確に多系統であることが示され、シロワニ属が科として独立した[1]。
- オオワニザメ属 Odontaspis
シロワニ科
編集シロワニ科 Carchariidaeは、シロワニC.taurusなど1属2種[2][3]。 2020年にオオワニザメ科が多系統であることが示され、その後シロワニ属が独立した科として分類された[1][2]。
- シロワニ属 Carcharias
ミツクリザメ科
編集ミツクリザメ科 Mitsukurinidaeは、1属1種でミツクリザメ M. owstoniのみが含まれる。白亜紀に存在したScapanorhynchusと形態的な共通点が多く、近縁とされる。ミツクリザメは原始的で際立った特徴を有しており、他の全てのネズミザメ目のサメと姉妹群を形成するという考えもある。日本の駿河湾などに生息する、深海性の稀種。
- ミツクリザメ属 Mitsukurina
ミズワニ科
編集ミズワニ科 Pseudocarchariidaeは、1属1種でミズワニ P. kamoharaiのみを含む。初期の頃はオオワニザメ科に含まれていたが、その後独立した科に分類された。ネズミザメ目の最小種で、全長110cmにしかならない。世界中の暖かい海の深海に生息する。
- ミズワニ属 Pseudocarcharias
メガマウスザメ科
編集メガマウスザメ科 Megachasmidaeは、1属1種でメガマウスザメ M. pelagiosのみを含む。3種のプランクトン食のサメの一つ。報告例は少ないが、分布域は全世界の暖海域に広がる。
- メガマウスザメ属 Megachasma
オナガザメ科
編集オナガザメ科 Alopiidaeは、ニタリ・ハチワレ・マオナガの1属3種で構成される。長い尾鰭をもつことで容易に識別できる。全世界の暖海域に広く分布するが、ニタリ A. pelagicus は大西洋からは知られていない。
- オナガザメ属 Alopias
ウバザメ科
編集ウバザメ科 Cetorhinidaeは1属1種で、ウバザメ C. maximusのみを含む。全長12 mに達する。プランクトン食のサメの一つ。
- ウバザメ属 Cetorhinus
ネズミザメ科
編集ネズミザメ科 Lamnidaeは3属5種を含む。体は紡錘形で、三日月型の尾鰭をもち、活発に泳ぐ。ホホジロザメ属、アオザメ属は暖海域の沿岸から外洋に広く分布する。一方、ネズミザメ属は寒冷な環境を好む。
- ホホジロザメ属 Carcharodon
- アオザメ属 Isurus
- ネズミザメ属 Lamna
系統
編集分子系統解析により次のような系統樹が得られている[1]。
ネズミザメ目 |
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脚注
編集- ^ a b c Vella, Noel; Vella, Adriana (2020-07-02). “The complete mitogenome of the Critically Endangered smalltooth sand tiger shark, Odontaspis ferox (Lamniformes: Odontaspididae)”. Mitochondrial DNA Part B 5 (3): 3319–3322. doi:10.1080/23802359.2020.1814886. PMC 7782878. PMID 33458146 .
- ^ a b David A.Ebert,Mare Dando and Sarah Fowler (2021). SHARKS OF THE WORLD A Compleat Guide. WILD NATURE PRESS. pp. 305
- ^ “Annotated checklist of the living sharks, batoids and chimaeras (Chondrichthyes) of the world, with a focus on biogeographical diversity” 2021年12月18日閲覧。
参考文献
編集- Leonard J. V. Compagno (2002) "Sharks of the world: An annotated and illustrated catalogue of shark species known to date" Volume 2, Food and Agriculture Organization of the United States.