ネオフォーク(Neofolk)は、ポスト・インダストリアル・シーンから現れたフォーク・ミュージックインスパイアされた実験音楽のジャンル[1]

ネオフォーク
Neofolk
様式的起源 フォークソングフォークロックポスト・パンク実験音楽インダストリアルダーク・アンビエント
文化的起源 1980年代
イングランド
派生ジャンル マーシャル・インダストリアル
関連項目
アンチ・フォークポストパンク
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概要

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ネオフォークは単なるフォーク・ミュージックなこともあるが、ピアノ弦楽器インダストリアル・ミュージック実験音楽の要素などを取り入れたアコースティック音楽の場合もある[2]。扱うテーマにはいろいろなものがある。代表的なバンドにはスワンズコイルなどがいる。

歴史

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コンサートをするSol Invictus

「ネオフォーク」という言葉は、20世紀末頃にダグラス・ピアース (デス・イン・ジューン)、トニー・ウェイクフォード (ソル・インヴィクタス)や、デヴィッド・チベット (カレント93)などから影響を受けたミュージシャンを表現するため、秘教的音楽界の人たちが使いはじめたのがもともとの語源だという[2]

現在のネオフォークが持つサウンドやテーマと類似した点の多いアングロサクソン系の北米フォーク・ミュージックの存在は、1960年代まで遡ることができる[2]。ヴァルカンズ・ハマー、チェンジス、レナード・コーエンコーマスなどのようなフォーク・ミュージシャン達は、のちにネオフォーク・シーンに影響を与えることとなる先駆者だといえる。ほかには、ルー・リードなどのヴェルヴェット・アンダーグラウンドのメンバーたちがバンドの活動後期に探求した音楽性も、主な影響源としてあげられる[1]

文化

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ネオフォーク・シーンに属するミュージシャンの大半は、古代的、文化的、文学的な引用に重きを置いている。また、秘儀的な内容や歴史的なトピックなどと並んで、その土地特有の伝統や土着的な信仰といったテーマが多用される傾向にある[2]

ネオペイガニズム(復興異教主義)や神秘学も、多くのアーティストが言及するようなテーマにおいて一役買っている。例えば、ネオフォークではルーン文字やヨーロッパの異教徒の遺跡のような、古代の文化に関心を示すような表象がよく現れる。ジャンルの始祖やシーンに属しているアーティストたちの中には、このような図像を頻用する理由について、広域で起きたネオペイガニズムのリヴァイヴァルの一翼を彼らが担ったからだと説明するものもいる[3]

関連する用語や音楽性

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アポカリプティック・フォーク

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「アポカリプティック・フォーク」はネオフォークよりも古い言葉であり、デヴィッド・チベットが自身のバンド、カレント93の1980年代後期から1990年代初期の音楽性を表現するために使った用語である[4]。もともと、チベット自身はフォーク・ミュージックとの関係性を表すことを意図していなかった。むしろ、カレント93は「黙示録的な人々(apocalyptic folk[s])」によって出来ているということを表現したかったのだという[5]。チベットとカレント93は面白半分ではあるが、イングランドの伝統的な民謡のカバーに手を出したこともあり、チベット自身もイングランドのフォークシンガー、シャーリー・コリンズの大ファンである。

フォーク・ノワール

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このジャンルのミュージシャンを表現するのに、ダーク・フォークペイガン・フォークといった言葉が使われることもあるが、その定義は曖昧である。こういったジャンル名は、ネオフォークとは関係のない様々な形式のジャンルを表現する包括的用語とも言える[1]

マーシャル・インダストリアル

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マーシャル・インダストリアル(ミリタリー・ポップと呼ばれることもある)は、ネオフォークと多くの共通点を持っており、ネオフォーク・シーンと密接に関係しながら勃興したジャンルである[6]

主なアーティスト

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日本の新世代フォーク

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日本国内においては、「ネオフォーク」の語はかなり意味合いの違う使われ方をしており、1990年代後半から2000年代前半にデビューしたフォーク系ミュージシャンに「新世代フォーク」の意味合いで使用されることが多い。当時、路上弾き語りからデビューするミュージシャンが多く、OKmusic編集部は音楽ジャンルというよりも、彼らをカテゴライズするためにできた用語と評している[17]

日本の新世代フォークとされる主なアーティスト

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脚注

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  1. ^ a b c Webb, Peter (2007). “Neo-Folk or Postindustrial Music”. Exploring the Networked Worlds of Popular Music. Routledge. ISBN 9780415956581. https://books.google.com/?id=bURqJRy4KsMC&pg=PA60. "One milieu to develop out of Punk was the scene that later became known as either apocalyptic folk, postindustrial, or later neo-folk." 
  2. ^ a b c d e f g Neumann-Braun, Klaus; Schmidt, Axel (2008) (German). Die Welt der Gothics: Spielräume düster konnotierter Transzendenz [The World of the Goths: Scopes of a darkly-connoted Transcendence] (2nd ed.). VS Verlag für Sozialwissenschaften. p. 280. ISBN 3-531-15880-5. https://books.google.com/?id=0ykjKReN-ygC&pg=PA280 
  3. ^ "I'm very happy about that because I see Death In June as part of a European cultural revival. I'm pleased that the Old Gods are being resurrected, for want of a better word. Old symbols. I feel very pleased that I am a part of that process and that I have had influence. At this stage in the game, so to speak, it's not false modesty to say that I am content with my influence." Powell, Erin. Interview with Douglas Pearce, 2005.
  4. ^ Rehill, Anne (2009). The Apocalypse Is Everywhere: A Popular History of America's Favorite Nightmare. Greenwood Publishing. p. 205. ISBN 0-313-35438-3. https://www.google.com/search?hl=de&q=Hall+of+Sermon#q=Neofolk&hl=en&tbm=bks&ei=E5QMT-P4E87tsgb0--3lBA&start=40&sa=N&bav=on.2,or.r_gc.r_pw.,cf.osb&fp=4925f700bfe318b3&biw=1280&bih=649 
  5. ^ "The Apocalyptic Visions of Current 93"
  6. ^ Brill, Dunja. “Transgression ohne Queer – die Inszenierung martialischer Männlichkeit als 'Anti-Drag' in der Industrial- und Extreme Metal-Szene [Transgression without 'Queer' – the Staging of martial Masculinity as being 'Anti-Drag' in the Industrial and Extreme Metal Scene]”. In Nagelschmidt, Ilse; Wojke, Kristin; Borrego, Britta (German). Interdisziplinäres Kolloquium zur Geschlechterforschung: Die Beiträge [Interdisciplinary Colloquium on Gender Research: the Contributions]. Peter Lang. p. 133. https://books.google.com/?id=zhDVUt-UdwoC&pg=PA133 
  7. ^ Ataraxia”. FluxEuropa. 2009年2月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年12月12日閲覧。
  8. ^ Changes”. Discogs. 2016年12月12日閲覧。
  9. ^ Shana Cleveland Neofolk”. Consequence of Sound. 2015年6月6日閲覧。
  10. ^ Powell, Erin (April 9, 2005). “Interview with Douglas Pearce”. Death in June. 2016年12月12日閲覧。
  11. ^ Cataldo, Jesse. “Emily Jane White Dark Undercoat”. Slant Magazine. 4 October 2012閲覧。
  12. ^ a b Schurmann, Martin (2006年4月1日). “Neofolk – mehr als nur eine Musikrichtung” (German). 2010年1月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年12月12日閲覧。
  13. ^ Interviews:Harvest Rain”. 2012年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年12月12日閲覧。
  14. ^ Klamt, Layla (June 10, 2015). “Nic Nassuet Brings Goth Sensibility to Folk [Review]”. Guardian Liberty Voice. March 22, 2016閲覧。
  15. ^ Interview in witches & pagans, Issue 26, April 2013, published by BBI Media, Forest Grove, OR (ISSN 1546-2838)
  16. ^ Sol Invictus - The Devil's Steed”. Heathen Harvest (June 3, 2005). 2006年11月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年12月12日閲覧。
  17. ^ a b 19の1stアルバム『音楽』の歌詞とサウンドは堂々たるロックだ! | OKMusic”. okmusic.jp (2015年6月10日). 2020年2月3日閲覧。
  18. ^ 「臼井孝のヒット曲探検隊〜アーティスト別 ベストヒット20」ネオ・フォーク系のパイオニア、ゆずのヒットを探る | OKMusic”. okmusic.jp (2018年5月18日). 2020年2月3日閲覧。
  19. ^ a b c d e ジャケ歌:2000年代のフォークデュオグループ - 歌ネット”. www.uta-net.com. 2020年2月3日閲覧。
  20. ^ ブリーフ&トランクス、16年ぶり再メジャーデビュー決定。来年春にニューアルバム発売”. rockinon.com (2015年11月13日). 2020年2月3日閲覧。

参考文献

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