ナンヨウクイナ(南洋水鶏、学名:Rallus philippensis) は、ツル目クイナ科に分類される鳥類の一種である。本種をニュージーランドクイナ属Gallirallus)に分類する説もある。その場合学名は、Gallirallus philippensisとなる。

ナンヨウクイナ
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: ツル目 Gruiformes
: クイナ科 Rallidae
: クイナ属
Rallus
: ナンヨウクイナ
R. philippensis
学名
Rallus philippensis
(Linnaeus, 1766)
シノニム

Gallirallus philippensis

和名
ナンヨウクイナ
英名
Buff-banded Rail
Gallirallus philippensis

フィリピンではTiklingとも呼ばれ、Tiniklingバンブーダンス)の名称の由来となっているという[1]

分布

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フィリピンからパプア・ニューギニアにかけてのインド洋東部と南西太平洋の島嶼と、オーストラリアニュージーランドに分布する。

形態

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体長30-38cm。頭頂部は褐色で、眉斑は灰色、通眼線は褐色、頬と喉から前頸は灰色である。後頸は褐色で、背中と雨覆は黒と緑色がかった褐色の縞状になっており、白い斑点が入る。体の下面は白色と黒色の縞模様になっていて、胸に薄い赤褐色の帯が入る。虹彩は赤色、嘴は赤色か赤みがかった茶色で、脚は淡い灰褐色である。

生態

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マングローブ林、低地の湿地や沼地に生息するほか、標高3400mの高地の岩場や草地に生息する亜種もいる。あまり飛翔することはなく、危険を察知すると素早く走って逃げる。完全に飛翔力を失った亜種もいる。

植物の葉や種子、昆虫類、小型の無脊椎動物などを食べる。

オーストラリアでの繁殖期は9-3月で、期間内に2回繁殖することも多い。アシ原や茂みの中に営巣し、1腹5-9個の卵を産む。抱卵日数は19-22日で、雌雄共同で抱卵する。

亜種

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以下の27亜種に分類される。島嶼毎の固有亜種に分化している。

  • Rallus philippensis philippensis

基亜種。フィリピン、スラウェシ島に分布する。

  • Rallus philippensis wilkinsoni
  • Rallus philippensis xerophilus
  • Rallus philippensis andrewsi
  • Rallus philippensis randi
  • Rallus philippensis lecustris
  • Rallus philippensis wahgiensis
  • Rallus philippensis reductus
  • Rallus philippensis admiralitatis
  • Rallus philippensis praedo
  • Rallus philippensis anachoretae
  • Rallus philippensis lesouefi
  • Rallus philippensis meyeri
  • Rallus philippensis pelewensis
  • Rallus philippensis christophori
  • Rallus philippensis yorki
  • Rallus philippensis australis

オーストラリア東南部とタスマニア島に分布する。

  • Rallus philippensis mellori
  • Rallus philippensis assimilis

ニュージーランドに分布する。

  • Rallus philippensis norfolkensis
  • Rallus philippensis macquariensis

マッコリー島に分布していたが絶滅した。

  • Rallus philippensis dieffenbachii

チャタム諸島に分布していたが絶滅した。

  • Rallus philippensis swindellsi
  • Rallus philippensis goodsoni
  • Rallus philippensis ecaudatus
  • Rallus philippensis sethsmithi

人間との関係

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生息地の一部では、開発による生息環境の破壊や人間が持ち込んだネコネズミブタによる食害により生息数が減少している。絶滅した亜種もいる。

参考文献

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  • 黒田長久、森岡弘之監修 『世界の動物 分類と飼育10-II (ツル目)』、東京動物園協会、1989年、54-55、161頁。

脚注

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