ドラゴニャ川
ドラゴニャ川(スロベニア語・クロアチア語:Dragonja、イタリア語:Dragogna)は、イストリア半島北部に位置する長さ30kmの河川である[1]。ドラゴニャ川は多数の水系に枝分かれした流域を持つ蛇行した川だが、水量は少なく、夏季になるとしばしば涸れることがある[2]。このことが多様な生活環境を生み出し、ドラゴニャ川を多種多様な動植物の生息地としている[3]。
ドラゴニャ川 | |
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ピラン湾に向かって流れるドラゴニャ川 | |
延長 | 30 km |
流域面積 | 95.6 km2 |
水源 | ポレティツィ(コペル) |
河口・合流先 | ピラン湾、セチョウリェ塩田(アドリア海) |
流路 | スロベニア、クロアチア |
流域 | スロベニア、クロアチア |
流路
編集ドラゴニャ川はイストリア半島においてはラシャ川とミルナ川に次いで三番目に長い川である[5]。スロベニア沿岸からアドリア海に流入する川としては最大であり、それと同時に、集落を通過せず、また流路全体がフリッシュ層を流れる唯一のスロベニアの河川である[5]。
ドラゴニャ川はシャブリニ丘の幾つかの源流に端を発し、アドリア海北方のピラン湾に向かって西の方向に流れる[2]。途中、二つの大きな支流(ロカヴァ川、ドルニカ川)が右手から、一つの大きな支流(ポガニャ川)が左手から合流する[2]。
セチョウリェ・サリナ・ランドスケープ・パークとセチョウリェ製塩所は、ドラゴニャ川の河口に位置する。こうした事から、ピランに位置するドラゴニャ川最下流域は1990年から天然記念物として保護されている[2]。
名称
編集ドラゴニャ川は、最初期にArgao(Argaoneの奪格)[6]、次いでArgaone(670年頃)、per Argaonem(1035年頃)、Dragugne(1100年頃)、そしてsuper flumine Dragone(1389年頃)と書かれた記録がある。現代のスロベニア語・クロアチア語、並びにイタリア語の名前(頭文字D-)は、ロマンス語の d- (< ad 'at') + Argaon-(音位転換している) から来たスラブ語の *Dorgon’a が元になっている。更に突き詰めると、この名前は俗ラテン語に起源があり、インド・ヨーロッパ祖語の語根 *h2arg'-(輝く) に由来すると推定されている[7][8]。
言語学的な研究に基づかない説明(民間語源)の中には、蛇行する川の流れがドラゴン(イタリア語:drago)に似ているため、とするものがある[2]。
領土問題
編集ドラゴニャ川の最下流域には、スロベニアとクロアチア間の領土問題が存在する。クロアチア側はドラゴニャ川が国境であると主張しているが、スロベニア側はドラゴニャ川に加えて川の南側の細長い一帯の領有をも主張している[9]。2012年の時点で、ドラゴニャ川流路末端の7kmが事実上の両国の国境となっているが[要出典]、紛争のある一帯には、4つの村落とクロアチアのプロヴァニア村の国境検問所がある[10]。ドラゴニャ川は、第二次世界大戦の後、ユーゴスラビアが管理していたトリエステ自由地域(FTT)のゾーンBがコペル地区とブイェ地区に分割された時から、地区の境界線となった。1954年にFTTが解体されると、ゾーンBはユーゴスラビアが獲得することとなり、コペル地区はスロベニアの一部に、ブイェ地区はクロアチアに属することとなった[11]。
出典
編集- ^ “Reke, dolge nad 25 km, in njihova padavinska območja” [Rivers, longer than 25 km, and their catchment areas] (スロベニア語、英語). Statistical Office of the Republic of Slovenia (2002年). 2013年10月10日閲覧。
- ^ a b c d e Trobec, Tanja. "Dragonja" [The Dragonja]. In Šmid Hribar, Mateja; Golež, Gregor; Podjed, Dan; Kladnik, Drago; Erhartič, Bojan; Pavlin, Primož; Ines, Jerele (eds.). Enciklopedija naravne in kulturne dediščine na Slovenskem – DEDI [Encyclopedia of Natural and Cultural Heritage in Slovenia] (スロベニア語). 2012年5月23日閲覧。
- ^ Vovk Korže, Ana; Vrhovšek, Danijel (2008年). “Možnosti sonaravnega regionalnega razvoja v porečju Dragonje z ekoremediacijami [The Opportunities for a Natural Regional Development in the Dragonja Basin with Ecoremediations]” (スロベニア語). Ekolist: revija o okolju (5): pp. 24–29. ISSN 1854-3758
- ^ Pipan, Primož (2008年). “Border dispute between Croatia and Slovenia Along the Lower Reaches of the Dragonja River” (スロベニア語、英語). Acta geographica Slovenica 48 (2): p. 343[リンク切れ]
- ^ a b Krivograd Klemenčič, Aleksandra; Vrhovšek, Danijel; Smolar-Žvanut, Nataša (31 March 2007). “Microplanktonic and Microbenthic Algal Assemblages in the Coastal Brackish Lake Fiesa and the Dragonja Estuary (Slovenia)”. Natura Croatica (Croatian Natural History Museum) 16 (1) .
- ^ Kos, Milko. 1985. Srednjeveška zgodovina Slovencev. Ljubljana: Slovenska matica Ljubljana, p. 137.
- ^ Snoj, Marko. 2009. Etimološki slovar slovenskih zemljepisnih imen. Ljubljana: Modrijan and Založba ZRC, pp. 121–122.
- ^ Bezlaj, France. 1967. Eseji o slovenskem jeziku. Ljubljana: Mladinska knjiga, p. 81.
- ^ Pipan, Primož (2008). “Border dispute between Croatia and Slovenia along the lower reaches of the Dragonja River”. Acta geographica Slovenica 48 (2): 331–356. doi:10.3986/AGS48205 8 April 2010閲覧。.
- ^ “Drnovšek: Granica na Dragonji ako se uvaži sporazum s Račanom” [Drnovšek: The border is at Dragonja if Račan agreement is respected] (Croatian). Index.hr (27 August 2004). 15 October 2012閲覧。
- ^ Damir Josipovič (June 2012). “Slovenian-Croatian boundary: Backgrounds of boundary-making and boundary-breaking in Istria regarding the contemporary border dispute”. Geoadria (Croatian Geographic Society, University of Zadar) 17 (1): 25–43. ISSN 1331-2294 15 October 2012閲覧。.