トール (海防戦艦)
トール (Thor) はスウェーデン海軍の海防戦艦。オーディン級。艦名となっているトールは北欧神話の神である[1]。
ストックホルムのベリスンス造船所で建造[2]。1896年3月起工[2]。1898年3月7日進水[2]。1899年6月29日竣工[2]。
基準排水量3328トン、満載排水量3720トン、全長86.3m、水線長84.78m、最大幅14,77m、計画吃水5.5m[2]。1番艦「オーディン」にはなかった舷窓がある[1]。1902年にはビルジキールが装着された[3]。
主砲はカネー42口径25.4cmM/94B型後装施条砲2門を単装砲塔2基に搭載した[2]。射程は最大仰角10度で9950mであった[4]。副砲はボフォース45口径12cmM/94型速射砲6門をケイスメイトに搭載した[5]。材質変更により装甲重量が削減できたことなどで、12cm砲の門数は「オーディン」より2門増やされた[6]。主砲副砲の他には、フィンスポング55口径57mmM/89B型砲10門、マキシム・ノルデンフェルト8mmM/95型機銃2挺を搭載[2]。また、艦首に45.7cmM/93型水中魚雷発射管1門を有する[7]。2隻の艦載艇は25mmM/84型機銃1挺を搭載した[8]。これは1906年に37mmM/98B型砲に換えられている[3]。
主機は直立3気筒3段膨張蒸気往復動機関2基、主缶は円缶6基で出力5350指示馬力[2]。2軸推進で計画速力15ノット[2]。公試では15.5ノットを発揮した[2]。航続距離は10ノットで2500浬[2]。
装甲厚は水線装甲帯が最大240mm、バーベット190mm、主砲前楯190mm、シタデル隔壁240mm、司令塔前面190mm、後面100mm[9]。水線装甲帯と砲塔の装甲はジョン・ブラウン社製のハーヴェイ鋼であった[10]。ケイスメイトは91mmで甲板は12.4mm厚鋼板2枚に25mmの装甲鈑であった[11]。
1899年8月11日、演習中に「オーディン」と衝突[12]。1907年、士官候補生練習艦となる[3]。また同年夏には海防戦艦「オスカル2世」、「タッペレーテン」、水雷巡洋艦「エーネン」とともにイギリスでの観艦式に参加した[13]1908年、海防戦艦「ドリスティゲーテン」とともにグレーヴゼンド、ル・アーヴルを訪問[14]。1913年にはルーアン、キングスタウン、ドーヴァー、エスビェア、サンクト・ペテルブルクを訪れた[3]。1914年から1916年にかけて「オーディン」同様の近代化改装がなされた[3]。1918年、オーランド諸島へ派遣される[15]。
脚注
編集- ^ a b 『海防戦艦』116ページ
- ^ a b c d e f g h i j k l 『海防戦艦』123ページ
- ^ a b c d e 『海防戦艦』122ページ
- ^ 『海防戦艦』118ページ
- ^ 『海防戦艦』118、123ページ
- ^ 『海防戦艦』117-118ページ
- ^ 『海防戦艦』123ページ、"The Swedish Armoured Coastal Defence Ships", p. 16
- ^ 『海防戦艦』118ページ、"The Swedish Armoured Coastal Defence Ships", p. 16
- ^ 『海防戦艦』117、123ページ
- ^ 『海防戦艦』117ページ、同書123ページでは装甲帯、主砲前楯、司令塔がジョン・ブラウン社製となっており、バーベットやシタデル隔壁の記載はない。
- ^ 『海防戦艦』116-117、123ページ
- ^ 『海防戦艦』121-122ページ
- ^ 『海防戦艦』147ページ
- ^ 『海防戦艦』128ページ
- ^ 『海防戦艦』122、175ページ
- ^ 『海防戦艦』123ページ、"The Swedish Armoured Coastal Defence Ships", p. 16、『海防戦艦』では解体が文中では1942年、表では1943年となっているが、"The Swedish Armoured Coastal Defence Ships"の記述と合わせ1942年解体とする
参考文献
編集- 橋本若路『海防戦艦 設計・建造・運用 1872~1938』イカロス出版、2022年、ISBN 978-4-8022-1172-7
- Daniel G Harris, "The Swedish Armoured Coastal Defence Ships", Warship 1996, Conway Maritime Press, 1996, ISBN 0-85177-685-X, pp. 9-24