トランスフェリン(Transferrin)は血漿に含まれるタンパク質の一種で、イオンを結合しその輸送を担っている。類似のタンパク質には、卵白に含まれるオボトランスフェリン英語版と、乳汁など外分泌液に含まれるラクトフェリンがあり、これらと区別するために血漿トランスフェリンまたはセロトランスフェリン(Serotransferrin)と呼ぶこともある。シデロフィリン(Siderophilin)と記述されることもある。

TF
PDBに登録されている構造
PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
PDBのIDコード一覧

4X1D, 1A8E, 1A8F, 1B3E, 1BP5, 1BTJ, 1D3K, 1D4N, 1DTG, 1FQE, 1FQF, 1JQF, 1N7W, 1N7X, 1N84, 1OQG, 1OQH, 1RYO, 1SUV, 2HAU, 2HAV, 2O7U, 2O84, 3FGS, 3QYT, 3S9L, 3S9M, 3S9N, 3SKP, 3V83, 3V89, 3V8X, 3VE1, 4H0W, 4X1B, 5DYH

識別子
記号TF, PRO1557, PRO2086, TFQTL1, HEL-S-71p, transferrin
外部IDOMIM: 190000 MGI: 98821 HomoloGene: 68153 GeneCards: TF
遺伝子の位置 (ヒト)
3番染色体 (ヒト)
染色体3番染色体 (ヒト)[1]
3番染色体 (ヒト)
TF遺伝子の位置
TF遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点133,746,040 bp[1]
終点133,796,641 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
9番染色体 (マウス)
染色体9番染色体 (マウス)[2]
9番染色体 (マウス)
TF遺伝子の位置
TF遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点103,081,200 bp[2]
終点103,107,643 bp[2]
RNA発現パターン


さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 ferric iron binding
金属イオン結合
血漿タンパク結合
ferric iron transmembrane transporter activity
ferrous iron binding
transferrin receptor binding
iron chaperone activity
細胞の構成要素 recycling endosome
小胞
HFE-transferrin receptor complex
late endosome
blood microparticle
basal part of cell
endocytic vesicle
細胞外領域
cell surface
basal plasma membrane
extrinsic component of external side of plasma membrane
early endosome
apical plasma membrane
perinuclear region of cytoplasm
clathrin-coated pit
secretory granule lumen
endosome membrane
エキソソーム
細胞外空間
clathrin-coated vesicle membrane
cytoplasmic vesicle
endoplasmic reticulum lumen
生物学的プロセス positive regulation of receptor-mediated endocytosis
cellular response to iron ion
タンパク質安定性の制御
transferrin transport
iron ion homeostasis
platelet degranulation
イオン輸送
retina homeostasis
iron ion transport
cellular iron ion homeostasis
membrane organization
翻訳後修飾
輸送
iron ion transmembrane transport
regulation of iron ion transport
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_001063
NM_001354704
NM_001354703

NM_133977

RefSeq
(タンパク質)

NP_001054
NP_001341633
NP_001341632

NP_598738

場所
(UCSC)
Chr 3: 133.75 – 133.8 MbChr 3: 103.08 – 103.11 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス

構造

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糖タンパク質で、分子質量は約80kDa。分子は2つの互いに似たドメインからなり、それぞれに3価鉄イオン(Fe(III))結合部位が1個ずつある。いずれも鉄イオンには1個の窒素原子(ヒスチジン残基)と5個の酸素原子(2個のチロシン残基、1個のアスパラギン酸残基、1個の炭酸分子)が配位する。鉄イオンが結合しているものをホロトランスフェリン(holo-transferrin)していないものをアポトランスフェリン(apo-transferrin)と呼ぶ。

性質

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鉄その他の金属イオンを非常に強く結合するが、結合は可逆的である。特にFe(III)に対する親和性は極度に高い(pH 7.4 で1023 M-1)。トランスフェリンは血漿中にある鉄分の約3倍量を結合しうるほど多量に存在し、血漿中の鉄分のほとんどがトランスフェリンに結合している。ただしこれは体内の全鉄分量からするとわずか0.1%に過ぎず、鉄分の貯蔵の意義はない。一方で回転は非常に速く、専ら鉄分の輸送に役立っていると考えられる。

輸送

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細胞の表面にはトランスフェリン受容体があり、特に骨髄にある幼若赤血球ではヘモグロビン合成のために多量の鉄を要するので重要である。鉄を結合したトランスフェリンがこの受容体に結合すると、エンドサイトーシスにより被覆小胞に包まれて細胞内に輸送される。細胞のH+-ATPアーゼによって小胞内の pH は低下し、それによりトランスフェリンの鉄親和性が低下して鉄イオンを放出する。受容体はトランスフェリンを結合したまま細胞表面に再輸送(エクソサイトーシス)され、次の取り込みに備える。

抗菌作用

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トランスフェリンは鉄イオンを非常に強く結合するため、遊離の鉄分を吸収することで細菌に対する抗菌作用を示す。実際、トランスフェリンは粘膜にも多く存在し、細菌を生存しにくくしていると考えられる。

関連する疾病

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先天性の欠損症として無トランスフェリン血症英語版がある。トランスフェリンが欠損または不足すると、鉄分はヘモジデリンとして肝臓に沈着する。

  1. ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000091513 - Ensembl, May 2017
  2. ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000032554 - Ensembl, May 2017
  3. ^ Human PubMed Reference:
  4. ^ Mouse PubMed Reference: