トヨタ・R型エンジン(トヨタ・Rがたエンジン)は、トヨタ自動車水冷直列4気筒ガソリンエンジン系列である。

トヨタ・R型エンジン
22R-E
トヨタ・ハイラックス サーフ)
生産拠点 トヨタ自動車工業トヨタ自動車
製造期間 1953年9月 - 1993年5月
タイプ 直列4気筒
OHV/SOHC/DOHC
ガソリンLPG
排気量 1.5L
1.6L
1.7L
1.8L
1.9L
2.0L
2.4L
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誕生から約40年にも渡り、乗用車ライトバンバストラック四輪駆動車からレーシングカーに至るまで幅広く使われた、トヨタを代表するエンジン。

概要

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R型と一括りにされているが、初期の設計のエンジンと最終期の頃のエンジンとは全く別物で、メーカーのR型への愛着から命名されている。

排気量は1,500cc~2,400ccのバリエーションが有り、弁機構に関してはOHVSOHCDOHCと幅広い。

1970年にT型(1.8L以下の性能強化)、1981年にS型(2代目)(2.4L以下の乗用タイプ用)、1982年にY型と1989年にRZ型(SUV・商用タイプ用)とそれぞれの役割毎の新機種に切り替わっていった。

開発に至る経緯

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トヨタ自動車では1947年に小型自動車用エンジンとして1000cc級・サイドバルブ式4気筒のS型(初代)を開発し、トヨペット・SB型トラックに搭載して発売した。だがこのS型は出力27HPに過ぎず、当初から力不足が指摘されていた。

そこでトヨタ自動車は1948年、水冷4気筒サイドバルブ式のまま排気量を1.5Lクラスに増大したP型エンジン(後に量産されたOHVのP型とはまったく別のもの)を試作、出力向上に取り組み始めた。この試作P型は40.5HP/3,800rpmの性能であったという。しかしサイドバルブ式では性能向上が難しいとの判断から、既に大型車エンジンで経験があり、効率にも勝るOHV方式に移行した。

1951年1月には、第一次試作R型エンジンが完成し、SB型トラックシャーシに搭載しての実車試験が行われた。この時点のR型は、ボア×ストロークを75mm×82mmのややロングストローク気味とした設定で、1,449cc、出力44.6HP/4,000rpmの性能であった。これを改良し、1952年3月に設計が完了、量産の準備が始められていた。

しかし同年5月、トヨタ自動車工業専務で技術面を指揮していた豊田英二は、当時の諸外国の新型エンジンでストロークを短くして高速回転向けとしたスクエア型やオーバースクエア型のレイアウトが広く用いられつつある潮流を踏まえ、エンジンの低重心化なども考慮して、R型のレイアウトをスクエア型に設計変更するよう指示した。これを受けて、ボア×ストロークを77mm×78mmのほぼスクエア型に変更する再設計が1952年8月に完成した。

技術的には、当時のヨーロッパ製小型車エンジンよりも、シボレーのコピーで戦前から生産していた初代B型6気筒エンジンからの影響が大きく、初期の外観は、B型を4気筒にして縮小したような姿であった。アメリカのカーター社の設計をコピーしたダウンドラフトキャブレター、ベローズ式サーモスタット濾紙式エアクリーナーや、オイルポンプによる全圧送潤滑なども、B型同様の流儀である。

生産期間

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系譜

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型式

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R型エンジン
  • 種類:OHV 8バルブ シングルキャブレター
  • 排気量:1.490L
  • 内径×行程:78.0×78.0(mm)
  • 圧縮比:8.0
  • 参考出力:70ps/5,000rpm
  • 参考トルク:11.5kg・m/2,600rpm
  • 搭載車種(車両型式)
 
3R型エンジン
  • 種類:OHV 8バルブ シングルキャブレター
  • 排気量:1.897L
  • 内径×行程:88.0×78.0(mm)
  • 圧縮比:8.0
  • 参考出力:90ps/5,000rpm
  • 参考トルク:14.5kg・m/3,400rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • (初)初代トヨペット・クラウン(RS31)
    • 2代目トヨペット・クラウン(RS40他)
    • 2代目トヨペット・マスターライン(RS37/37V)
    • 2代目トヨペット・マスターライン(RS46/46V)
    • スタウト(RK100)
    • 初代ティアラ(RT30L)
  • 種類:OHV 8バルブ キャブレター
  • 排気量:1.897L
  • 内径×行程:88.0×78.0(mm)
  • 搭載車種(車両型式)
    • ダイナ(RK70、80、90、170系)、ライトバス(RK95B、160B、170B)
  • 種類:OHV 8バルブ ツインキャブレター
  • 排気量:1.587L
  • 内径×行程:80.5×78.0(mm)
  • 圧縮比:9.2
  • 参考出力:90ps/5,800rpm
  • 参考トルク:12.8kg・m/4,200rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • (初)3代目コロナ1600S(RT41)
  • 排気量:1.994L
  • 内径×行程:88.0×82.0(mm)
  • スペック(LPG):86ps(64kW)5,000rpm 15.0kg・m(147N・m)2,400rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • (初)3代目クラウンオーナースペシャル(RS50B)・スタンダード(RS50)
    • スタウト(RK101)
    • トヨエース (RY20)
    • クラウン営業車(LPG仕様)が3~6代目に搭載された。
    • コロナ営業車(LPG仕様)が6代目に搭載された。コロナのみ5Rエンジン唯一のAT車も設定された。
  • 排気量:1.994L
  • 内径×行程:88.0×82.0(mm)
  • 搭載車種(車両型式)
    • スタウト(RK110,1979~1986)
  • 種類:SOHC 8バルブ シングルキャブレター
  • 排気量:1.707L
  • 内径×行程:86.0×73.5(mm)
  • 参考出力:95ps/5,500rpm
  • 参考トルク:14.5kg・m/3,800rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • (初)4代目コロナ2ドアハードトップ(RT94)
    • 4代目コロナ1700DX(RT84)
    • 2代目マークII
  • 種類:SOHC 8バルブ ツインキャブレター
  • 排気量:1.707L
  • 内径×行程:86.0×73.5(mm)
  • 搭載車種(車両型式)
    • (初)4代目コロナ2ドアハードトップ(RT94)
    • 4代目コロナ1700SL(RT84)
  • 種類:SOHC 8バルブ シングルキャブレター
  • 排気量:1.591L
  • 内径×行程:86.0×68.5(mm)
  • 参考出力:85ps/5,500rpm
  • 参考トルク:12.5kg・m/3,800rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • (初)3代目コロナ・ゴールデンシリーズ
    • 初代コロナマークII(RT60)
    • 4代目コロナ
  • 種類:SOHC 8バルブ ツインキャブレター
  • 排気量:1.591L
  • 内径×行程:86.0×68.5(mm)
  • 圧縮比:9.5
  • 参考出力:100ps/6,200rpm
  • 参考トルク:13.6kg・m/4,200rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • (初)3代目コロナ・ゴールデンシリーズ
    • 初代コロナマークII(RT60)
    • 4代目コロナ
 
8R型エンジン
  • 種類:SOHC 8バルブ シングルキャブレター
  • 排気量:1.858L
  • 内径×行程:86.0×80.0(mm)
  • 参考出力:100ps/5,500rpm
  • 参考トルク:15.0kg・m/3,600rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • (初)初代コロナマークII
    • 4代目コロナ
  • 種類:SOHC 8バルブ ツインキャブレター
  • 排気量:1.858L
  • 内径×行程:86.0×80.0(mm)
  • 参考出力:110ps
  • 搭載車種(車両型式)
    • (初)初代コロナマークII
    • 4代目コロナ

10R (8R-G) 」を参照

 
トヨタ・1600GT専用に開発された9R型エンジン

トヨタ初の「4気筒DOHC」エンジン

  • 種類:DOHC 8バルブ ツインキャブレター
  • 排気量:1.587L
  • 内径×行程:80.5×78.0(mm)
  • 圧縮比:9.0
  • 参考出力:110ps/6,200rpm
  • 参考トルク:14.0kg・m/5,000rpm
  • 搭載車種(車両型式)

10R (8R-G)

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  • 種類:DOHC 8バルブ ツインキャブレター
  • 排気量:1.858L
  • 内径×行程:86.0×80.0(mm)
  • 圧縮比:9.7
  • 参考出力:140ps/6,400rpm
  • 参考トルク:17.0kg・m/5,200rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • (初)初代コロナマークII 1900GSS(RT75)
  • 種類:OHV 8バルブ シングルキャブレター
  • 排気量:1.587L
  • 内径×行程:80.5×78.0(mm)
  • 搭載車種(車両型式)
  • 種類:OHV 8バルブ シングルキャブレター 触媒
  • 排気量:1.587L
  • 内径×行程:80.5×78.0(mm)
  • 搭載車種(車両型式)
    • 5代目コロナ(RT100)(LPG仕様)
  • 種類:OHV 8バルブ シングルキャブレター
  • 排気量:1.587L
  • 内径×行程:80.5×78.0(㍉)
  • 圧縮比:8.5
  • 参考出力:80ps/5,200rpm
  • 参考トルク:12.5kg・m/3,000rpm
  • 搭載車種(車両型式)
  • 種類:SOHC 8バルブ シングルキャブレター
  • 排気量:1.808L
  • 内径×行程:88.5×73.5(mm)
  • 圧縮比:8.5
  • 参考出力:105ps/5,600rpm
  • 参考トルク:15.0kg・m/3,800rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • 5代目コロナ(RT102)
    • 2代目マークII
  • 種類:SOHC 8バルブ ツインキャブレター
  • 排気量:1.808L
  • 内径×行程:88.5×73.5(mm)
  • 搭載車種(車両型式)
    • 5代目コロナ(RT102)
  • 種類:SOHC 8バルブ シングルキャブレター 触媒
  • 排気量:1.808L
  • 内径×行程:88.5×73.5(mm)
  • 搭載車種(車両型式)
    • 初代カリーナ(RA10、RA16)
    • 5代目コロナ(RT102)
  • 種類:SOHC 8バルブ シングルキャブレター
  • 排気量:1.808L
  • 内径×行程:88.5×73.5(mm)
  • 搭載車種(車両型式)
    • 5代目コロナバン(RT108V)
  • 種類:SOHC 8バルブ シングルキャブレター
  • 排気量:1.968L
  • 内径×行程:88.5×80.0(mm)
  • 圧縮比:8.5
  • 参考出力:110ps/5,500rpm
  • 参考トルク:16.5kg・m/3,600rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • 2代目マークII(RX10)
    • 初代カリーナ(RA11、RA15)
  • 種類:SOHC 8バルブ ツインキャブレター
  • 排気量:1.968L
  • 内径×行程:88.5×80.0(mm)
  • 搭載車種(車両型式)
    • 2代目マークII
    • 4代目コロナ
 
18R-E

トヨタ初の「EFI(電子制御式燃料噴射装置)」採用エンジン

  • 種類:SOHC 8バルブ EFI
  • 排気量:1.968L
  • 内径×行程:88.5×80.0(mm)
  • 搭載車種(車両型式)
    • (初)マークII 20系 2000GSL・EFI
    • 4代目コロナ2000SL・EFI
    • 5代目コロナ(RT104)
    • 初代カリーナ(RA11、RA15)
  • 種類:SOHC 8バルブ シングルキャブレター 触媒
  • 排気量:1.968L
  • 内径×行程:88.5×80.0(mm)
  • 参考出力:100ps/5,500rpm
  • 参考トルク:15.5kg・m/3,600rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • 5代目コロナ(RT122)
    • 2代目カリーナ、セリカ(RA40)
 
18R-G
  • 種類:DOHC 8バルブ ツインキャブレター
  • 排気量:1.968L
  • 内径×行程:88.5×80.0(mm)
  • 圧縮比:9.4
  • 参考出力:145ps/6,400rpm
  • 参考トルク:18.0kg・m/5,200rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • 2代目マークII 2000GSS (RX22)[2]
    • 初代セリカ リフトバック 2000GT
    • 5代目コロナ2000GT
    • 初代カリーナ(RA11、RA15)

18R-GR

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18R-G」のレギュラーガソリン仕様

  • 種類:DOHC 8バルブ ツインキャブレター レギュラーガソリン仕様
  • 排気量:1.968L
  • 内径×行程:88.5×80.0(mm)
  • 参考出力:140ps
  • 参考トルク:17.2kg・m[3]
  • 搭載車種(車両型式)
    • 2代目マークII 2000GSS (RX22)
    • 初代カリーナ(RA11、RA15)

18R-GU

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  • 種類:DOHC 8バルブ ツインキャブレター 触媒
  • 排気量:1.968L
  • 内径×行程:88.5×80.0(mm)
  • 圧縮比:8.3
  • 参考出力:130ps/6,000rpm
  • 参考トルク:16.5kg・m/4,800rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • 初代カリーナ(RA17)
    • 5代目コロナ2000GT(RT104)(RT122)
    • 2代目カリーナ、セリカ(RA40)

18R-GEU

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  • 種類:DOHC 8バルブ EFI 触媒
  • 排気量:1.968L
  • 内径×行程:88.5×80.0(mm)
  • 圧縮比:8.3
  • 参考出力:135ps/5,800rpm
  • 参考トルク:17.5kg・m/4,800rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • 2代目セリカ、カリーナ2000GT
    • 6代目コロナ2000GT(RT132)
    • 初代セリカカムリ2000GT(RA55)
    • 3代目カリーナ2000GT(RA63)
    • 7代目コロナ2000GT(RT141)
    • 4代目マークII2000GT(RX63)
  • 種類:SOHC 8バルブ シングルキャブレター
  • 排気量:1.968L
  • 内径×行程:88.5×80.0(mm)
  • 搭載車種(車両型式)
    • ハイラックス4WDピックアップ(RN36)

ホンダCVCC(複合渦流調整燃焼方式)」の技術供与により開発されたエンジン

  • 種類:SOHC 8バルブ シングルキャブレター TTC-V(トヨタ複合渦流方式)
  • 排気量:1.968L
  • 内径×行程:88.5×80.0(mm)
  • 参考出力:80ps
  • 搭載車種(車両型式)
    • 初代カリーナ(RA13)
    • 5代目コロナ2000DX(RT103)
    • 5代目コロナ(RT123)
    • 初代カリーナ(RA31)

海外向け

  • 種類:SOHC 8バルブ シングルキャブレター
  • 排気量:2.189L
  • 内径×行程:88.5×89.0(mm)
  • 圧縮比:8.4
  • 参考出力:71kW(96PS)/4,800rpm
  • 参考トルク:163N・m(16.6kg-m)/2,800rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • 3代目スタウト(RK110、海外向け)
    • セリカ (海外向け)
  • 種類:SOHC 8バルブ シングルキャブレター
  • 排気量:1.972L
  • 内径×行程:84.0×89.0(mm)
  • 参考出力:74kW/5,000rpm
  • 参考トルク:154N・m/4,000rpm
  • 搭載車種(車両型式)
  • 種類:SOHC 8バルブ シングルキャブレター 触媒
  • 排気量:1.972L
  • 参考出力:105ps/5,200rpm
  • 参考トルク:16.5kg・m/3,600rpm
  • 搭載車種(車両型式)
    • 2代目セリカ
    • 2代目カリーナ
    • 6代目コロナ(RT133)
    • 初代セリカカムリ2000SE(RA56)
    • 3代目マークII / 初代チェイサー(RX40)※後期のみ
    • 4代目マークII / 2代目チェイサー(RX60)※前期のみ

22R-TE

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  • 種類:SOHC 8バルブ EFI 触媒
  • 排気量:2.366L ターボチャージャー付き
  • 内径×行程:92.0×89.0(mm)
  • 圧縮比:7.5
  • 参考出力:99kW(135PS)/4,800rpm
  • 参考トルク:234Nm(23.8kg-m)/2,800rpm
  • 搭載車種(車両型式)

脚注

編集
  1. ^ トヨタ企業サイト | トヨタ75年史 | 車両系統図 | 車両詳細情報 | RK型トラック - トヨタ自動車(2015年12月9日閲覧)
  2. ^ 三栄書房 ニューモデル速報 歴代シリーズ 歴代トヨタ・マークII のすべて 15ページ
  3. ^ 三栄書房 ニューモデル速報 歴代シリーズ 歴代トヨタ・マークII のすべて 15ページ

関連項目

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